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第三話

 ……トントンと軽い音とともに部屋の扉がノックされ、開けられる。

「陛下のご到着でございます」

先ぶれの侍従のあとからゆっくりと国王とエスコートをうけたケニーエは入ってくる。


それをみたニヴァルはソファから立ちあがり、バツの悪そうな顔で礼を取る

「陛下…お呼びと伺いましてお待ちいたしておりました」

王はニヴァルの向いへとケニーエを座らせ自らも共に座る。

「ああ…そうだな…ここからは王と王子としてでなく、一人の父と息子として率直に話そう」

と王子と傍らに寄り添っていた女性を座らせた。

「承知いたしました父上。  ……それにケニーエ…久しぶりだね」

会わせる顔もないのか、ニヴァルは王とケニーエのほうを見ずに俯く。


「ニヴァル様…お久しぶりでございます。 少しお痩せになったのではありませんか?」

ケニーエは心配そうにニヴァルの顔を見つめている。

「ああ…ここしばらく色々な研究実験が立て込んでいて、中々休みも取れずこうしてズルズルと問題を先延ばしにしてしまった…君には本当に申し訳ないと思ってるよ…」

はっ、としてケニーエはニヴァルに問いただす。

「いえ! そのようなことはどうでも良いのです! もしや最近食事そのものを受け付けなくなっていらっしゃるのではありませんか?」

「あぁ…疲れているせいか、なにを食べても味がしないし美味しいと思えないんだ。」

ニヴァルは青白い顔でひどく億劫そうに答える。

なにかを悟ったようにケニーエは王の顔を見ると王がうなづく。


「恐らく間違いない」

「えっ…なにが間違いないのです父上?」

困惑したニヴァルが二人を見つめている。

そのやり取りをずっと、言葉を発することもなく不安そうに座っていた女性が、ニヴァルを見上げおずおずと話しかける。

「ニ…ニヴァル様…」

「あ…すまないキチンと紹介するのが先だね…。 父上、ケニーエ、紹介します。彼女はエーサ、平民ではありますが高い魔力を持ちスカウトされた研究塔の職員で、今は私の研究の助手をしてくれています。 エーサ、この方が私の父にしてこの国の王であるハーン陛下だ、そしてその横にいるのが私の婚約者であるイーツ公爵令嬢のケニーエだ」

とニヴァルがお互いをひきあわせる。

こんやくしゃ…と茫然と呟いたが ハッと気を取り直し

「は…はじめまして、エーサと申します。 私は、平民の生まれなので貴族様のマナーとか礼儀が分からないのでご不快に思われるかもしれませんがご容赦ください」

と、事前に教えられたのかぎこちない調子で礼をとった。

「よい。 この場は非公式ゆえ、なにも咎めだてはしないから楽にしなさい」

と、王は制止しそれを受けたニヴァル王子がうなづくとホッとしたようにエーサは席に着き話だした。


「…あの…私研究ばかりしていたせいで世間に疎くて殿下に、こんなお美しい婚約者様がいらっしゃるとは知らなかったんですっ…ごめんなさい……殿下は私を妻にと言ってくださいましたが、やっぱり私みたいな者では身分不相応ですし、婚約者様を差し置いて図々しい真似なんてできません!

皆さんの迷惑にならないようにこの国から出ていきます…それともなにか罰を受け牢につながれたりするんでしょうか?」

とエーサは話していくうちに感情が高ぶったように泣き出した。


それを見たニヴァルはエーサを抱きしめながら王とケニーエに懇願する。

「違う…エーサはなにも悪くない! 悪いのは婚約者がありながらエーサに惹かれてしまった私だっ!

婚約者がいると告げたら逃げられてしまうのではと怖くて言えなかったんだ…。

エーサはずっと『身分がちがうから身を引くと』言っていたのを無理やりそばに置いてた。この責任はすべて私にあります! エーサが傍にいてくれないと気が狂いそうなんですっ!? 処罰ならいくらでも受けます…どうか…エーサを私の妻とさせてください…」

とうとうニヴァルも涙を流し始め、それを見ながら困ったように顔を見合わせる王とケニーエ。


「陛下…」

「すまぬケニーエ。私も知らなかったのだ、まさかニヴァルになにも教えてなかったとは…」

「「えっ?」」

とエーサとニヴァルは、なんだか飽きれたような様子のケニーエと困った顔の王を見比べる。

ため息をつきながらケニーエは

「まったく…こんな大事なことを本人に説明してないとはニヴァル様がお気の毒ではありませんか」

と可哀想なものを見る目で見つめる。

王はションボリと

「すまぬ… ならば今きっちりと二人に説明しよう。 この国の()()についてな」

ふぅ…とため息をつきながら王は話し出す。


「少し長くなるから楽にして聞いてくれ。 そもそもの話はこの国を興した王族の始祖までさかのぼる、初代にあたる先祖は元々この周辺に住まうものではなくはるか遠い北にあると噂されている『魔族が住まう地』と言われる場所から来たのだそうだ。

当然そんな場所からきたご先祖も、人間ではなく魔族であったらしくてな。

…そういえば其方たち魔族という存在がどういうものか知っておるか?」


話を聞いていたニヴァルとエーサは、内容の荒唐無稽さに困惑したように首を振る。

「いえ…物語なんかに出てくるのは知っていましたが実在するなんて…」

「だろうなぁ…私だって魔族そのものなんて見たことはないぞ。 まぁ王族の特徴はそこから来ているのだという事だけとりあえず理解してくれ」

「はい」

と二人はうなづく。

「それでだな…その先祖から受け継いだのはまず『普通の人間より優れた身体能力と非常に高い魔力』だこれはニヴァルも自覚があるだろう?」

「はい。幼いころからその制御に大変苦労いたしました」

少し遠い目になってニヴァルはうなづく。


「まぁそれだけだったら王族としてふさわしい力として受け入れられるんだが、もう一つ厄介なものを受け継いでしまってな…」

と王は目をそらしつつ言いよどんだ。




ニヴァル君は、ケニーエなら婚約解消しようといえばすぐ了承してくれるだろうし、エーサに言わなくても大丈夫だろうと軽く考えていました。

最低ですねぇ



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