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第二話  ニヴァル視点

王国の王太子でもあるニヴァルには生まれた頃より婚約者がいた。

幼い頃より頻繁に王城へとやってくる婚約者とは、まるで兄妹のように仲が良く父である王や母の王妃も、彼女を娘のように可愛がっていた。

 ニヴァルはそんな優しい日々が終わるなど考えた事すらなかった。


 …ニヴァルは成人を間近に控えたある日王に呼び出された。

「ニヴァル実はな、其方の魔力を扱う腕と知識を生かして新しく設立する研究塔の責任者として動いてはもらえぬか?」

その言葉を聞いたニヴァルは、喜びに胸を震わせながら

「拝命いたしました! 必ず成果を上げて見せます」

と、使命を受けたニヴァルはその日からがむしゃらに仕事にうちこんだ。

王が自分に期待してくれていることがなにより嬉しかったから。

 そして、同時に強烈なプレッシャーを感じた、『かならず成果をあげねばならない』と…。

それからの日々はニヴァルにとって予想以上に精神を削られる毎日だった。


 仮説を立ててそれを元に研究を重ねていく、それだけではない。

新設したばかりの組織に、中々王城から人員を割くことができない為、自らの研究チームだけでなく研究塔すべての人員や研究、予算の申請や管理など多岐にわたる項目にまで目を通し、神経を使う毎日。

ろくに休息や睡眠すらも取れず、父である王に呼び出しを受けたときに会う程度で母の王妃やまして婚約者のケニーエに会う時間すら満足に取れない。

そんな日々にニヴァルの精神は摩耗していくばかりであった。

そんな姿を一番間近で見ていたのはニヴァルのチームの研究助手のエーサである。


「殿下…少しでもお体を休めてください…」

毎日いつ休んでいるのかもわからず、青白い顔で研究に没頭するニヴァルをみてエーサは心を痛めていた。

「エーサ…心配かけてしまったか…大丈夫私は元気だよ…」

力なくそうエーサに返すが

「そんな顔色で言われても信じられるわけがないでしょう!」

思わず、ニヴァルに怒鳴ってしまいエーサは顔を蒼白にする

「もっ…申し訳ありません殿下…」

「いいんだ…心配してくれたんだね…ありがとう」

「殿下…少しでいいんですどうかお体を休めてください…」

「そうしたいのは山々だけど先にこの経過観察を…」

「そのくらいなら私にもできます! 殿下はその間にそこのソファでおやすみくださいっ!」

とソファを指さす。

「そんなわけにはいかないよ…」

「いえ!ここで殿下に倒れられた方が迷惑ですっ!」

「エーサ…分かった、少しだけ横になるから観察たのめるかい?」

「はい!お任せください!」

強引にエーサにソファへ押しやられたニヴァルは渋々ソファに横になり目を閉じる。


 …いったいどのくらい時間がたったのかふと目を開いたニヴァルは自らの頭の下に柔らかな感触を感じてその正体を確かめる。

「えっ!?」

ニヴァルの頭の下にはエーサの柔らかい太腿があるではないか、慌ててニヴァルは飛び起きエーサを見る。

「エッ! エーサ?」

話しかけるもエーサは眠っているようで起きる気配はない、辺りもすっかり暗くなり魔法で作られた明かりだけが部屋を照らしている。

「まいったな…。」

顔を赤くしながらニヴァルは起きる気配のないエーサに自らが着ていた上着をかけて、そっと研究室を出た。


 その日を境にニヴァルとエーサの距離はどんどん縮まっていった、エーサに事情を話し『それならば周りに助けを求めればいい』と助言を受け、プレッシャーに飲まれてすべてを一人で背負おうとしていた自分に気づき反省し、どうか皆力を貸してほしいと頼めば断るものなどいるはずもない。

そこから少しづつニヴァルは心身ともに余裕ができ、忙しい合間にエーサと二人で昼食をとったり息抜きに塔の庭を散策したりする姿が見られるようになった。

彼は生まれて初めて恋をしたのだ。

 

エーサもニヴァルのことは憎からず思ってくれていたようで、ニヴァルが愛を告げたときには涙を流して喜んでくれた。

 

だから結婚を申し込んだときも喜んで受けてくれるとおもっていたのだ。

だがエーサは喜ばなかった『身分が違う』『自分に王妃など無理だ』と。

この申し込みを受けてくれたら両親とケニーエに事情を話し婚約を解消してもらうつもりだったのだが、エーサは受け入れてくれない。

説得しているうちにズルズルと時間だけが過ぎていく…。何も変わらないまま時間だけが過ぎてゆく焦りからニヴァルは食事すら手につかなくなっていきどんどんやせ細っていった。

「ニヴァル様…お加減が宜しくないんですか?」

エーサも恋人が憔悴していく姿をみていられなくなっていった。


「もう…終わりにしませんか…私に王妃なんて無理ですしこれ以上迷惑はかけたくないんです。」

とエーサは涙をこぼす。

「ダメだっ! 絶対君を手放さない!君が王妃にならないというならこの国を捨ててでも君を妻にする!」

抱きしめるその手にエーサは身をゆだね

「そんな…ニヴァル様に王太子の座を捨てさせるなんてできるわけないじゃないですかっ!」

とすがりつく

「エーサ…この国の王妃についてキチンと調べてみたんだ、実は王妃は公務や外交に一切参加する義務はないのだそうだ。だからもしこの仕事がしたいなら続けてもいい…身分なんて私は気にしたことはないし、きっと父上も母上も分かってくれるはずだ。だから王妃という名前だけは許してもらいたいけど、君が実際することは私の妻としてそばで暮らすことだけだ」

「そう…なんですか…私ニヴァル様の妻として生きてもいいんですかっ!」

「ああ…だからどうか私の妻として生きてくれエーサ…」

「はい…」


…その日二人は結ばれた。 

その結果がどうなろうとも確かに二人は愛し合い、幸せだったのだ。



それから立て続けに仕事が忙しくなり、王へ結婚の許しを得るために二人で面会に行くことができたのは

一月近く後の事になってしまった。


・エーサちゃんの行動はマンガのヒロインみたいな

「良く寝てる…起こすの可哀想…」→「なんだか寝苦しそうだわ…少しだけ…」→膝枕してたら一緒に寝ちゃった! 的なやつです。 描写すると長くなるしな…と割愛しました。

ニヴァル君は温室育ちのボンボンなのでコロっといってしまいましたね。


 ちなみに王子が生まれてすぐに婚約は発表されてますが、結構時間がたっているのであえて話題にのぼることもなく、同年代の庶民だとなおさら婚約してると知らない人がほとんどです。

なので、婚約者がいると知らなかったエーサちゃんに、正直に話して逃げられたくない一心で都合よく黙っています。


最低ですね!

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