6.けんごは突然に
翌日の朝。例の部屋で目を覚ます。ぼくはこの部屋で寝るよう言われたので、そのまま睡眠をとっていた。
布団のようなものはないのかと聞いたが、どうやらこの世界ではそういう文化はないらしい。改めて自分が異世界にいることを実感する。
床は硬く冷たかったが、不思議と寝心地は悪くなかった。
首を回しながら周囲を見回す。特に昨日と変わったところはないが、どこか違和感を覚えた。
ぼーっとしていても始まらないので、立ち上がり部屋を出る。
今日はアーナさん来ないんだな。
部屋の外は廊下らしく、先が見えないほど長く左右に伸びている。そして壁には例の模様。
初めて見たときは思わず吐き気を催すほどだったが、ずっと見ていたからかだいぶ慣れた。
「うっ」
調子に乗ってじっと見つめていると、ズキリと頭が痛み眩暈までした。
慌てて目をそらすと頭痛はすぐに治ったが、同時におかしな感覚に陥る。
「この模様…?」
しかし少し考えても思い当たる節はなかった。もともと考えるのが得意ではない。
とりあえず部屋を出てすぐ右の方向に進んでいると、さっきの部屋から10mくらい先のところに一枚の扉を見つけた。扉には丸い窓が付いていて、中の様子がうかがえる。
顔を近づけて覗いてみるが、明かりがついてないのか暗くてよく見えない。
ふとその時、殺気を感じた。
パリンッ
窓の割れる音。紙一重のところでかがんで避けることができたが、1秒でも遅れれば顔面は大変なことになっていたかもしれない。
後ろに下がって扉を注視する。窓を割ったなにかは既に内側に引っ込んだようだ。避ける直前に一瞬だけ見えたあれはなにか刃物のように見えたがまさか…。
ドオォン!
「!」
唐突に扉が破られる。そして、
「おっす。三度まみえたな、トウヤ」
「けんご…!」
中から現れたのは、やはりすどうけんごだった。