2.けんご再び
あれ、ここはどこだろう。気づいたらぼくは冷たい床の上に横たわっていた。
そうだ、たしかぼくは『すどうけんご』とかいうやつに襲われて、そのあと…。
ぼくが寝ていたのはどこかはわからないが部屋の中のようだった。目の前に見える天井は見たこともない模様をしていて、ずっと眺めていると頭がおかしくなってしまいそうだ。
首を動かして周りを見渡すと、せいぜい4、5m四方の小部屋であることが分かる。壁には天井同様、奇妙な模様が描かれている。
「よいしょ」
いつまでも横になっているわけにはいかない。身体をひねって起き上がる。
あのけんごとかいう男がまた襲ってくるかもしれないし、とにかくここを出よう。
ガチャ。
「っ!」
立ち上がろうとしたとき、寝ていた頭上側にあった扉が開いた。反射的に拳を握り込み、扉の方をにらむ。
「目が覚めましたか?」
開いた扉から出てきたのは若い女性だった。無意識に拳が緩む。
「安心してください。ここならけんごもそう簡単には入ってこれません」
後ろ手に扉を閉めながら女性は静かに告げる。
「! けんごを知っているんですか?」
「ええ。あなたが彼に命を狙われていることも」
やはりけんごはぼくを殺す気だったようだ。いったいどうして…。
「けんごは何者なんですか? どうしてぼくは狙われているんでしょう?」
そもそもなぜこの女性はそんなことを知っているのだろう。
「…あなたは自分が異世界から来たことを承知していますか?」
静かに問いかけてくる。
「はい。知っています」
そう、知っている。ぼくは別の世界からこの世界にやってきた。その事実は、その事実だけは知っている。
「それでは、」
ひとつ頷いて女性が何かを語り始めようとしたそのとき、
ドンッ!
扉の奥の方から、何かが倒れるような音が聞こえた。
「!」
女性の顔が一気に緊張する。
「あなたはここにいてください」
言いながら女性はすっと扉に背中を当て、耳を澄ませて外側の様子を確認する。
そしてすばやく扉を開けた。
「きゃっ!」
「っと」
扉の向こうにいた何かに強くはじかれた彼女をなんとか受け止める。
「そんな、まさかあのバリケードを突破してきたというの…!?」
扉の先にいたのは、そう、
「おっす。また会ったな、人間」
「すどう、けんご…!」