6.疑問
開かれた扉の先に居たのは、今ぼくが、一番会って話をしたい人物だった。
「トウヤさんっ!」
椅子から立ったぼくを見つけるなり、駆け寄ってくるアーナさん。
その様子をぼくは冷静に見つめる。
「早く逃げましょう!」
ぼくの元へたどり着いたアーナさんが腕を引いてくる。
しかしぼくはその手を振り払った。状況が理解できないのか、呆然とした顔をするアーナさん。
「アーナさん、教えてください」
そんな彼女の目を正面から見据えてぼくは問いかける。
「あなたは、何者なんですか」
アーナさんの表情が一気に硬くなる。そして彼女は、さきほどからカウンター席に座ったままこちらを見もしないけんごの方に顔を向けた。
「……すどうけんご。あなた、トウヤさんに何を吹き込んだのですか」
今までに見たことのないほど険しい彼女の表情。気づけば握りしめていた拳にじんわりと汗が滲む。
しかしけんごは何も言わず、いつの間にか元通りになっていたグラスを傾けてただ水を飲む。
痺れを切らした様子で、アーナさんがけんごの近くへ歩み寄る。
そしてけんごの肩を掴もうとしたところで、
「っ!?」
アーナさんは声にならない悲鳴を上げた。
「トウヤ! 行くぞっ!」
倒れかかるアーナさんを突き飛ばし、扉に向かうけんご。
「……ああ」
ぼくはアーナさんの首に突き立った包丁から目を逸らし、けんごの後に続く。
明らかに致命傷だ。けれど彼女は死んではいない。それは確信だった。
「待っ、トウ……ん……」
店を出て、勢いよく扉を閉める。
もう、何を信じればいいのか分からなかった。




