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異世界けんご  作者: 佐藤 刀弥
2章 異世界
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6.疑問

開かれた扉の先に居たのは、今ぼくが、一番会って話をしたい人物だった。

「トウヤさんっ!」

椅子から立ったぼくを見つけるなり、駆け寄ってくるアーナさん。

その様子をぼくは冷静に見つめる。

「早く逃げましょう!」

ぼくの元へたどり着いたアーナさんが腕を引いてくる。

しかしぼくはその手を振り払った。状況が理解できないのか、呆然とした顔をするアーナさん。

「アーナさん、教えてください」

そんな彼女の目を正面から見据えてぼくは問いかける。

「あなたは、何者なんですか」

アーナさんの表情が一気に硬くなる。そして彼女は、さきほどからカウンター席に座ったままこちらを見もしないけんごの方に顔を向けた。

「……すどうけんご。あなた、トウヤさんに何を吹き込んだのですか」

今までに見たことのないほど険しい彼女の表情。気づけば握りしめていた拳にじんわりと汗が滲む。

しかしけんごは何も言わず、いつの間にか元通りになっていたグラスを傾けてただ水を飲む。

痺れを切らした様子で、アーナさんがけんごの近くへ歩み寄る。

そしてけんごの肩を掴もうとしたところで、

「っ!?」

アーナさんは声にならない悲鳴を上げた。

「トウヤ! 行くぞっ!」

倒れかかるアーナさんを突き飛ばし、扉に向かうけんご。

「……ああ」

ぼくはアーナさんの首に突き立った包丁から目を逸らし、けんごの後に続く。

明らかに致命傷だ。けれど彼女は死んではいない。それは確信だった。

「待っ、トウ……ん……」

店を出て、勢いよく扉を閉める。


もう、何を信じればいいのか分からなかった。


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