1.初めてのけんご
いつも通り修行に向かう主人公の三船だったが、道中謎の光に包まれ異世界に飛ばされてしまう。そこで出会ったのは…
そんなわけで異世界に転生してしまったわけだが、ここはどこだろう。
目の前が暗い。と思ったらなにか大きな建物の陰にいるようだ。
その建物の全様を見ようと、頭を反らして頭上を見上げる。
…ドスッ。
反りすぎて思わず尻餅をついてしまった。
「え、でか…」
その建物(?)は、とにかくめちゃくちゃでかかった。
そうして尻餅をついた状態でしばらく放心していたら、後ろから足音が聞こえてきた。
振り返るとそこには上半身裸の少年がいた。
「おっす。おれはけんご。すどうけんご。よろしくな」
けんごと名乗った少年はそう言って座り込んだぼくに右手を差し出してきた。
不信感を抱きながらもその手を取って立ち上がる。すると、
「しねぇぇえええええええ!!!!!!!」
立ち上がる寸前、急にすどうけんごは雄叫びを上げ、彼の剥き出しの胸部がみぞおちのあたりから左右に裂けたかと思うと、その中から銀色に光り輝く鋭利な…これは包丁!?
「っ!!」
反射的に身をかがめて突き出された包丁をかわす。頭の上を何かが通過する感覚。しかし腕は掴まれたままだ。このままではすぐに…!
「くそっ!」
なんとか抜け出そうと掴まれた右手の拳を握りしめる。すると、その拳が眩いばかりに光り輝き始めた。あまりの眩しさに思わず目を閉じる。
「な、なんだこの光は!?う、うわあああああああ!!!!!」
けんごの叫び声が聞こえる。
そっと目を開けると、そこにけんごの姿はなかった。
「逃げた、のか?」
危機が去ったとわかると、途端にこわ張っていた体から力が抜け、ふたたび尻餅をついてしまう。
暑くもないのに背中にはびっしょりと汗をかいている。
今の少年は一体…。
その後なんども拳を交えることになるその少年、すどうけんごとの、これが初めての邂逅だった。