バスを待つ人
そのバスに、私は乗れないのだった。
ぶっしゅー
がたがたがた
始発のドアが開いて
長蛇の人を腹におさめ
ぶしゅー
ぶるるん ぶるるん
バスはあっという間に走り去った
列に並んだはずだった
だれもが入っていき
いつか自分も入るのだと
受動的に夢想したまま
いつまでもそこに立っていた
何にもならないでいるうちに
からだは少しずつ透明になって、
今は
腹を覗くと他人の顔がみえる
ごめんね、と
からだに話しかける
私はバスには乗れないの。
男は女
女は男
性は性
人は人
異性同性ジェンダーフリー
皆パートナーを求め
それぞれの箱に闊歩する
そのバスに、私は乗れない。
何にもない箱を空に用意して、
一日のうち何度か出入りして、
時折 バス停に立つ
私のバスは来やしないか、と。