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第1講 レーヴァテインの本当の名前はスルタロギ?

1 レーヴァテインとは


 いきなり来ましたよレーヴァテイン。のっけから真打ち登場、みたいな。

 レーヴァテインはここ数年とみに聞くようになった言葉です。国内では「レヴァンティン」と表記されることもあるようですね。今や、北欧神話に登場する(とされる)武器では、グングニル、ミョルニル、グラムに次いで知られている気が致します。


 国内の「定説」によれば、レーヴァテインは炎の巨人スルトの剣です。


 北欧神話では、世界は異なる種類の生き物が住む9つの国に分かれているとされています。人間の国ミズガルズ、神々の国アースガルズ、霜の巨人の国ヨーツンヘイムなどです。

 ミズガルズの中央に城壁で囲まれたアースガルズがあり、ミズガルズとヨーツンヘイムの間にも巨人が侵入できぬよう城壁が……、と、某超有名コミックを連想させる(というより元ネタでしょう)構造です。


 9つの世界でひときわ異彩を放つのが、炎の巨人の国ムスペルスヘイムです。そこは灼熱の世界で、最高神オーディンが誕生する以前からこの世界に存在し、そこで生まれた者以外は立ち入ることも叶わないとされています。

 スルトはその王とも、門番とも言われています。ラグナレク、すなわち神々と巨人・亡者・魔物の最終戦争の際、火花を散らす炎の剣を手に参戦し、豊穣神フレイを倒したのち世界を焼き尽くすとされています。


「定説」によれば、このスルトの剣の名こそがレーヴァテインである、と。



2 典拠?


 インターネット上では、次のように言われています。


――『古エッダ』(注1)の1編「フョルスヴィーズルの歌」によれば、レーヴァテインはロプト(ロキの異称)が鍛えたもので、ヴィゾーヴニルという鶏を殺せる唯一のものである。シンモラがこれを、9つの閂が掛かった櫃に保管している。

 レーヴァテインがスルトの炎ないし剣であると明言する文献は存在しない。だが、シンモラがスルトの妻であることから、レーヴァテインもスルトのものだと考えられる――


 さて、当方は『古エッダ』について、訳者の異なる完訳と抄訳を1冊ずつ所有しております。が、そのいずれにも「フョルスヴィーズルの歌」は収録されていませんでした。更に言えば、レーヴァテインやシンモラといった固有名詞は、紙媒体の本ですと『虚空の神々』(注2)でしか見た記憶がございません。

 個人的には、仮に「フョルスヴィーズルの歌」の記述を全面的に受け入れるとしても、スルトの妻が保管する殺傷力を持つ物であるという理由だけでレーヴァテインをスルトの剣と断言するのは、ちと勇み足である気が致します。


 もちろん、今後全く新しい写本でも発見されれば話は別ですが。



3 対抗馬:スルタロギ


 1つ、確実に申せることがあります。曰く、「スルトの炎をスルタロギと呼ぶのは、少なくとも誤りではない」。あくまで炎です。剣とまでは断定しません。

 専門的な言語の本(注3)に書いてあったんですから、間違いありません。


 また、何を根拠にかは存じませんが、独語版ウィキペディアのSurtalogiのページには、次のような記述があります(2017年3月12日現在)。


――Surtalogi ist in der nordischen Mythologie das Schwert des Feuerriesen Surtr.――


 ま、まじっすか!?

 これ、日本語に訳すと「スルタロギとは北欧神話における炎の巨人スルトの剣である」でいいでんしょうかね。


 いかがでしょう、スルタロギ。

 当方の『SSS』(このページの最下部にリンクを貼ってあります)にも名前だけは出て来ますが、実質的に未登場です。恐らく、レーヴァテインをこの名で呼ぶ作品は、同日現在、国内皆無です。スルトの持ち物である蓋然性はあちらよりも高いと思うのですが、どなたか、「定説」に挑戦する気概のあるかた、いませんか? 今なら多分、第1号になれますよ。



  ――脚注――


1 北欧神話の主要なテキストがエッダです。新旧2つあり、古いほうを『古エッダ』ないし『韻文エッダ』といいます。約40編の歌から構成されますが、どの歌を『古エッダ』に含むかについては、研究者の間でも意見が分かれています。


2 健部伸明と怪兵隊、新紀元社、1990・4・26。Truth In Fantasyの1冊。


3 古アイスランド語入門(下宮忠雄・金子貞雄、大学書林、平成18・1・30)

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