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新生活

「はぁ~ぁ、誓いの儀やっただけなのに今日はほんとに疲れたなー。」


「ははっ、フレデリクはやる前からずっと緊張しっぱなしだったもんな。」


「フレデリクの緊張がうつってわたしまで緊張しっぱなしだったわ。」



それぞれがそれぞれの感想を好き勝手言いながら歩く。

唐突に、フレデリクが二人の一歩前に出て振り向く。



「でさ、早速だけど行ってみないか?俺らがこれからしばらくお世話になる場所。」


フレデリクが子どものようにニッと笑う。


「ふふ、フレデリクはしゃぎすぎて子供みたいだわ。」


と言いつつ自分が一番わくわくしている自覚がエミーリエにはあった。

なんせエミーリエは城での生活が初めてだった。



(今まで早起きして城まで仕事に来ていたけど、これからはもう少しゆっくり寝ていられるかもしれないわ!)



ほんとは今すぐ駆け出して西の一角を見に行きたいけど、子どものようだと馬鹿にされそうだから平静を装ってみる。



「なに大人ぶってんだよ。エミリが一番そわそわしてるくせに。」


「なんなら廊下駆け足で行こうか?」


左右からにやにやしたフレデリクとカイに顔を覗き込まれる。



(っもう、これだから幼なじみは...)

どれだけエミーリエが平静を装っても二人にはすぐに見抜かれる。


「廊下を駆け足だなんて、そんな子供みたいなことしないわ。」


「ぶはっ」

「くくっ」


こらえきれず笑い出すフレデリクと、気を使って抑えているつもりだろうが笑いが隠しきれてないカイ

ふたりが笑い出すのと同時にエミーリエは耳まで真っ赤にして西の一角まで駆けだした。






長い廊下を抜けて西の一角へ入ると、入ってすぐのエントランスホールの中央に階段があった。

階段は真ん中のあたりから二手に分かれていて、正面から見るとYの字型だった。



「ひろーい!すてき、お城みたい!」


後ろから追いついた二人がまたくすくす笑う。


「お城みたいってか、お城だしなー。」



フレデリクの茶化すような声も今は聞こえないふりをして、1階の部屋を見て回ることにする。

誰かと感動を共有しながら回りたいので、カイの手を引く。



「カイ兄ぃ、一緒に行きましょ!まずは右側の部屋からね。」


「おっと、あんまり慌てるなよ。」


と言いながらも付いてきてくれるカイのことがエミーリエは大好きだった。

 



「おい、どうして毎度毎度カイなんだ...誰のおかげでここに住めると思って....」


フレデリクのつぶやきはすでに部屋に入ってしまったエミーリエたちには届いていなかった。




「へぇ、キッチンを挟んで手前がリビングで奥がダイニングかぁ。キッチンも広くて使いやすそうだな。」


「......リビングだけですでに私の家よりも広いわ...。わたしこんなところに住めるかしら?」


「ふは、どういう心配の仕方だよ。」


「だって、ほんとに心配なんだもん...。あ!わたし先に自分の部屋を見てみたい、1番重要だったわ!」

と言ってまたカイの手を引っ張る。



「はいはい、付いていきますよお嬢様。」

呆れながらも付いてきてくれるカイはやはり優しくて、ついつい甘えてしまう。




「自分の部屋は2階かしら?」



エントランスホールに出て、見回すとすでにフレデリクが2階にいるのが見えた。



「あ、フレデリク!そっちは何の部屋があるの?」


「2階は空き部屋が7部屋。正面の3部屋を自室に使おうぜ。」


「あれ、フレデリク拗ねてる?一緒に見て回りたかったなら言ってくれればよかったのに。」

エミーリエには長年の勘でわかってしまうので、つい口に出して聞いてしまう。



「な、拗ねてねーよ。いいから早く上がって来いよ。」


「はーい」



カイの手を引いたまま中央の階段を上る。

途中で二手に分かれているところの右側を上ってみる。



「エミリ、お前どこの部屋がいい?って言っても正面の3部屋はほとんど同じ造りだけどな。なんなら真ん中でも...」


「真ん中はフレデリクでしょ!」

「真ん中はフレデリクだろ!」


「お、おぉ、そっか」



階段を上がりきった2人が同時に言う。

フレデリクは2人の勢いに気圧された。



「一応フレデリクが俺らの主人なんだから、そこは主人らしくしててくれよ。」


「そうよ!だからフレデリクは真ん中の部屋ね。カイ兄ぃは左右どっちの部屋がいい?」


「え?あぁ、どっちでもいいよ、エミリが好きなほうどうぞ。」


「うーん、部屋の中を見て回ってから決めてもいい?」


「いいよ、じゃあ見に行こうか。」


「うん!」



すっかり兄と妹のようになってる二人を見てフレデリクは少し嫉妬する。



「相変わらずカイはエミリに甘いなー。」


「??フレデリクにだって甘いつもりだけど?」


「...おまえがモテる理由が分かった気がする。」




カイの万人受けする笑顔で言われて、フレデリクはそれ以上何も言えなくなった。

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