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青春物語、あるいはラブコメ。

冷たい味

作者: 燈夜

つたない文章ですが宜しくお願いします。出来れば後学の為に至らぬ点をご指摘ください。

 頭の上で、花火がぽんぽん鳴っていった。

 夜空にたくさんの花が咲いている。

 今日は年に一度のお祭りだ。気付けば一人、かき氷を食べていた。


 そんな中、わたしはパクっと一口。

 

 冷たくってキーンときた。急いで口に頬張るとキーンと来るらしい。

 ブルーハワイ。舌が真っ青になる冷たい味だ。でも甘い。


 幼馴染の一人、わたしの大好きな男の子が奢ってくれたブルーハワイ。とても美味しかった。キーンと冷たかったことを除いては。


 一緒に遊びに来たはずの幼馴染達はどうしているのだろう。男の子ともう一人。ポニーテイルのかわいい女の子。この子はすっごく美人な子。そしてこの子は男の子と一緒に居るはずだ。派手だし目立つしすぐ見つかる!


 わたしは探す。……甘かった。


 見つからない。すっごい人ごみ。

 キョロキョロ。やっぱりいない。二人とも、どこに行っちゃったのかなぁ。もしかして、二人でデート? ……冷たいなぁ。


 冷たいんだよぅ。

 思わずこぼれるしょっぱい水。これっていったいなんだろね?


 そしてわたしが下を向いたときだった。スマホが鳴った。わたしは飛びつく。


「何しているんだよバカ! 今どこだよ!」


 もう一人の幼馴染、そのポニ子ちゃんの声だった。そしてなぜかわたしは怒られた。おかしいな。わたし、悪い事でもしたのかな?


「金魚すくい屋さんの前だよぅ」


 わたしは涙目で訴えた。もちろん、スマホ越しには見えないのだろうけど。


「ああもう! そこから動くなよ!?」


 また怒られた。どうやらわたしはうっかり屋さんらしかった。この前お父さんからもそう言われたばかりなのに。わたし、しっかりしなきゃだめだよね。


「えへへ」


 とりあえず笑って誤魔化す。日本育ちのの特権だ。だけど、電話はとっくに切れていた。


 ◇


「全く。目を離すとすぐこれだ」


 幼馴染。特徴的なポニーテイルが揺れていた。ぷんぷん。プンプン丸って感じだよ。怒ってる。だけどその目はどこか優しい。男の子ほうは慣れっこって感じで無反応。わたしはちょっと、面白くない。


「今度は、もう知らないからな!?」


 ポニ子ちゃんは相変わらず冷たい。でも、その目はやっぱり優しい。照れ隠しだと言う事をわたしは知っている。わたし、ずるい子かな? ……そして男の子はやっぱり無反応。なんだかとっても面白くない。むかむかぷーだ。どうしてかな?


 もうすっかり融けたブルーハワイをごくごくと飲む。とっても冷たい。でも甘い。

 わたしは甘いものが好き。優しいものが好き。かわいいものが好き。冷たいものは、ちょっと嫌い。


 二人はわたしの大事な幼馴染。

 わたしは何でも知っている。ポニ子ちゃん。彼女はもう一人の幼馴染、隣の男の子のことが好き。だけど男の子にいつも冷たく当たってる。ツンツン丸。だけどそんなの、嘘なんだって、わたしはちゃっかり知っている。

 そして実は男の子もポニ子ちゃんの事が好き。悔しいけどわたしより。こっちも決して素直じゃないけれど。


 ……わたし、そんなのとっくの昔に気付いてた。


 でも、わたしはずるいから。そしてさっきのお返しに。


「むー……たこ焼きが食べたいんだよぅ」

「あーはいはい。畜生、オレのバイト代……」


 気付けば上目ずかいに男の子を見つめてた。ポニ子ちゃんは呆れてた。


「食べたいんだよぅ!」


 わたしは叫ぶ。駄々っ子パンチ、猫パンチ。


「わかったよ」

 

 男の子は力なく頷いた。

 大成功。わたしの大事な男の子は今日もわたしに甘かった。

 男の子が買いに行く。ポニ子ちゃんが呆れてる。だけど、すぐにニヤニヤに変わってた。


「ホント、アイツって単純だよな」

「うんうん!」


 ポニ子ちゃんと二人で笑う。ポニ子ちゃんは純粋だ。たぶんわたしの複雑な想いに気付いていない。

 だからわたしの青い瞳は冷たくて。そしてポニ子ちゃんの瞳はあったかい。

 やがて男の子がやって来た。

 そして一番にわたしの元に届けてくれた。


「ありがとうなんだよぅ!」


 わたしは叫ぶ。もちろん、にっこにこ。


「あーはいはい」


 冷たいようで冷たくない。

 だけどわたしは流された。ちょっとだけ面白くないんだな。


 ……でも、今日はまぁいいや。男の子はわたしの我侭を聞いてくれている。それはそれで嬉しいよ。

 もう今日はこれ以上いじめないから安心してね?

 たとえ男の子がわたしのほうを見なくても。たとえポニ子ちゃんばかりを気にしても。


 たこ焼きソースは甘いようで甘くない。


 だから今度はあったかいたこ焼きだ。出来ればわたしに一番あったかいのが回って来ていないかな?


「うん、結構いける」


 とポニ子ちゃん。男の子がすかさず目をやった。やっぱりちょっと、複雑だ。


「まぁ、悪くない味だな」


 とわたしの大好きな男の子。全言撤回。……面白くない。


 甘いようで甘くない。

 だけど、わたしはそんな二人とのあったかい関係が大好きだ。


 冷たいようで冷たくない。

 でも、それもたまには良いんだよ。

 甘いようで甘くない。ううん、きっとわたしも甘いんだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  いいことばかりではないのかもしれません。 [一言]  つながりは大切にしたいです。
2016/08/16 15:08 退会済み
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