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足を動かして、懸命に頭も動かす。俺としても考えは1つにまとまりきっていないのだ。それをどうにかまとめ切ることが難しい。未だにわからないこと、不明なこともある。それを除いて話せば…、なんとか伝えることくらいはできるだろう。そのくらいの不明瞭さが残っている。
「何から話せばいいのかわからんから最初から話すぞ。
まずは根本的な問題からだ。人と召喚獣の違いは体の構造とあくまで魂であって見た目的には何の違いもない。だが、来た人間か召喚獣かわからない奴を片っ端から実験するように体を開いたんじゃ埒があかないだろ?召喚獣は何を見て区別してるかっていうと、お前らにも教えた“目”で判断してる。
種族でもそうだが、召喚獣の奴らにはそれぞれ特徴があるが大まかなところは変わらん。それを奴らはよく知ってるから見分けをつけることは簡単だ」
キュキュっと同時に鳴き声が聞こえる。言ってることは分からないが、疑問に思ってることは確かだろう。だが、ややこしくなるから喋れ。
話しているうちに廊下の突き当りに左右に分かれた場所に出るが、すぐに頭の右側に軽く叩かれたような衝撃が走り、それに従って右に曲がった。ひよこの羽じゃ気を付けないと気付かない時があるから注意しないといけないかもしれない。
「本来なら“目”があるから人は召喚獣に紛れることもない。けど、たまにいるんだ。見えにくいやつが。本当なら見えにくい奴でも“目”があれば見抜けるようにできていてるんだが…使い方を知らなけりゃ誤魔化すのは人間側からしたら簡単なことだ。特に、1人も見方を知らないお前らなら余計にな」
黙り込む双子とひよこに構わず口を動かし続ける。
「ひよこが俺をここへ連れてくるときに俺の傍には召喚獣がいた。ひよこなら同族だとすぐにわかったはずだ。なのにどうして解決できるであろう召喚獣を無視してまで俺をここへ連れてきたのか、よく考えればおかしいことだった。
こいつは、別に召喚獣に手助けに来てほしかったわけじゃない。召喚獣に限らず気付ける誰かが欲しかっただけだったんだ。こいつだけしか知ることのできなかった事実を、主観ではなく客観的に受け止められる誰かが」
ひよこが俺をここへ連れてきたのに理由があることに気付いたのは、昨日の夜にひよこと話していたときだ。それまでひよこも他の奴らと同じだと考えていた俺の頭は話し合いですっかり考えを改めた。
それに気づくことができたのは偶然にして幸運と言ってもいい。話し合いをしていた時にたまたまひよこが文字を書けることを知って、そこで初めてひよこの目的を知ったのだ。
「お前らに聞くぞ、俺がお前らに見方を教えた後に白髪のリーダーのやつに会ったか?」
「キュ…」
「キュキュッ」
フルフルと小さな顔を左右に振るリス2匹に「だろうな」とうんざりしつつも返した。こちらが慎重に動いたからか、向こうも向こうで慎重に動いている。痺れを切らしたのか、それとも動くタイミングがちょうど今日だったのかはわからないが、動いたのならば好都合だ。
心配事は、ひよこの燃費と明確に分かっている敵は1人しかわかっていないことだろうか。だが、それも今考えていても仕方がない。
「ひよこが俺をここへ連れてくる時、ひよこが俺に日記を見せたんだ。そこにはこう書かれてた。
『残った奴らをどうにか避難させないといけない。兄貴やあの人間達がどこかへ目を移して来れば皆が安全に移動ができると思う。…俺が行動せねば、全滅だ』
これは、あの白髪が書いた日記だとひよこが教えてくれた。そんで、昨日のうちに白髪の野郎に聞いたんだ。一番最初の襲撃があったときの状況をな、この日記が本当ならこいつは襲撃のその夜のうちにでも目を逸らすために敵の本陣にでも乗り込んだはずだ。それなのに奴は兄貴とやらが1人でどうにかしようとした、と言ったんだ」
「ピ」
突き当りが見えたところで、鳴き声と共に叩かれる頭の左側に反応して左側へ走る。もう少しだろうか、結構走った気がするが、まだ話は終わっていない。
「ここまで言えばわかるだろ。お前らの中に裏切者がいた。そいつらはお前らに紛れていつか全員殺す算段でも立ててたんだろうよ。けど、何の間違いか俺がきた。
しかもあいつらもよくわかってない召喚士とかいうおかしな肩書きも持っている。よくわかってない未知のものが来るのはとんだ恐怖だった。今日敵側が動いた理由はこれにつきるだろう。よく知ってる人間ならともかく召喚士なんて今の時代、召喚獣だってよくわかってない奴が多いんだ。人間側が知ってるなんて思えない。そもそも、俺のことは敵側に知られていないはずだからこっち側に裏切者でもいないと、ひよこが魔法を使わないと察知できない。
今日襲撃があった。しかも、ピンポイントで俺達のいる場所を狙ってきた。俺としてはこれ以上ないほど確実性を得られたわけだ」
これで全部とはいかないが大体のことは話しただろうか。黙り込むリス2匹は小さく「キュ」と鳴くと、俺の首の服の襟を握りしめる。それ、俺の首もちょっと締まってるからな。
目の前には狭い廊下から広い空間が見える。頭ではひよこが「ピ!ピィ!ピィ!」と俺の頭をべしべしと翼で叩いてくるのも伝わってきた。もう少し、あの広場に出れば階段があるのだろうか。
そのまま足を進め、広場に足を踏み入れた。




