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 ──眩しい。そう思って目を開ければ、いつの間にか俺の顔には光が差し込んでいた。しばらくぼぅっとしていたものの、窓から差し込む眩しいくらいの光でようやく朝なのだと認識する。背中には柔らかいマットの感触、後頭部には枕の感触、視界の端に写る青色にコートがベッドに脱ぎ捨てられているのがわかった。そこまでわかった上で昨日の夜のことをぼんやりと思い出す。


 そういえば、昨日の夜はひよこに秘密の作戦会議だって言って…その後は色々俺とひよこで準備をした。幸いにも早めに終わったのだが、その後は…ひよことベッドに倒れ込んで…あぁ駄目だ。その後の記憶がない。ひよこも俺も、多分連続した疲労に体が限界だったことを考えるに準備をした後はベッドに倒れ込んだ瞬間に寝てしまったんだろう。

 あぁひよこ…そうだ、ひよこ!!!

 

「呑気に寝てる場合じゃないだろ!?」


 寝ぼけた頭が一瞬で覚醒した。がばりと上半身を起き上がらせてすぐさま周りを見渡せば、昨日の真っ暗だった部屋とはうって違った朝の太陽に照らされた部屋が視界に入る。昨日はベッドくらいしか見えなかったが、明かりをつけるのに使うであろう燭台が部屋の中央の机の上にあり、ドアのすぐ横には上着をかけるコート掛けもある。昨日は端をひたすら通っていたからベッド以外に何かがあるのは全くわからないだけだったのかと納得する。殺風景な部屋だが、それでも広さを考えればそう不思議なものでもない。

ぐるりと大雑把に周りを見回してもあの黄色い塊は見つからない。ひやりと冷や汗が流れてそのままベッドを飛び降りてコートを着込もうとばさりと持ち上げた。


「ピルルルルル…ピィルルル…」


 …いた。剥ぎ取ったコートの下に埋もれるように黄色の塊は変な音を出しながらそれはもう健やかに寝ていたのだ。変に不安になった気持ちは一変して安心からホッと一安心し、無意識に息をするのすら忘れていたらしく貯めこんでいた息を吐きだした。

 こっちが不安になっていたのも馬鹿馬鹿しくなるほどの間抜けな声はイビキ…みたいなものなんだろうか。ひよこでもイビキかくんだな。

 このまま寝かせてやりたいのも山々だが、そうも言ってられない。飯も食わなくてはいけないし、なにより昨日の夜の作戦会議の続きもある。そもそも俺が起きなくても誰かしらが起こしに来たんだろうが…。


 ひよこをどうしようかと頭を悩ませていれば、コンコンと控えめなノックの音が聞こえてそのままガチャリと扉が開けられる。


「あの、朝ごはんができたので呼びに…って、もう起きていらしたんですか」


 扉から顔を出した黒髪の少女は、目を丸くしてこっちを見ていた。白いエプロンをつけ、その足元には双子が少女を挟むように立っている。双子もこちらをじっと見ていた。それにおう、おはよう!と笑顔で出迎えれば少女はおはようございます、と笑顔で応対する。


「お兄ちゃん、いるの?」


「え?あ、ひよこのことか?あぁ、いるぞ。お前らもこれから飯か?」


 赤髪はジッとベッドの方向をみつめると、こくりと小さく頷く。紫髪も同じく頷くと俺の足元まで小走りで近づくとぺとりとくっついてくる。黒髪は「こ、こらっ!」と慌てた様子で俺の様子を見てくるので、俺は苦笑いしつつ手を小さくひらひらと振った。


「ちょうど行くところだったんだ。一緒に行くのが増えたくらいだったら構わないさ。よっしゃ、お前らの兄ちゃんがまだ寝てんだ。起こすの手伝ってくれ」


 ベッドで未だにスピスピ寝ているひよこを指差す。ほれ、と双子の背中を軽く押せばそのまま双子は吸い込まれるようにひよこの元へ走って行った。


「あ…」


 双子の背中を見送る少女は、それだけ言うと申し訳なさそうに俺を見て、ごめんなさい…と頭をさげる。そんなに謝ることでもないんだがな。

 後ろでは双子がわいわいとベッドに群がっている。未だにひよこの鳴き声が聞こえないあたり未だに寝ているんだろう。


「うぅ…本当にありがとうございます。すみません、まだ準備があって…後おねがいしてもいいですか?道はあの子たちに聞けばわかりますので」


「おう、いってらっしゃい」


 ぺこぺこ頭を下げながら小走りで部屋を出る少女を見送り、さぁ双子だと振り向けばそこにはベッドにひよこと一緒になって横になる双子…っておい、待て。

 ベッドに近づいていけば一層のこと状況がわからない。双子はひよこを起こしにベッドに行ったはずだった、それがなんで俺のコートを掛け布団代わりにして寝てるんだ。仲のいい様子はいいことだがこれじゃあせっかく作ってもらった朝食が台無しになる。


「起きろ、なんでお前らまで一緒になって寝てんだ。ほらひよこもさっさと起きろ」


 コートをひったくって着ると、双子とひよこを揺り起こす。ひよこに至ってはデコピンのおまけつきだ。いつまで寝てんだ。

 俺の揺り起こしで双子が眠たそうな目をしながら起きる。ひよこもようやくのろのろと起き上がると俺の手を啄ばんできた。やめろ。意外と痛いからそれ。


「朝飯行くぞ。その前に顔洗うから洗面台教えてくれ」


 ほれほれ、と双子の背中を押す俺の肩にいつもの定位置のようにひよこが乗ってくる。うん、騒がしいが一日の始まりだ。


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