表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/82

68

 ハクは状況を思い出しているのか、「そうですね…」とだけ言うと黙り込む。少しの間を置いて何かを思いついたようにあっと声を出した。


「その時は、確かお昼頃だったと思います。俺と兄貴はすぐに爆発音に気付いて…すぐにみんなを逃がしました。兄貴はみんなを逃がすその時に1人犠牲になると言って…」


 段々と声が小さくなり、暗くなる表情に何も声をかけられずにいればすぐにハクはハッとした顔をして咳ばらいをゴホンと1つすると顔を引き締めた。最後まで言わずともわかる。その時に兄貴とやらは向こうに利用されてしまったんだろう。

 1人でどうにかしようとするあたり、この辺りでは敵などいなかったのか…。それとも勇気ある行動をするだけだったのか。まぁ、そのあたりはまた後で聞けばいい。


「ここも、元は立派な建物だったんですがその時の爆発やらでここまで瓦解しました。住処も何度か変えて逃げて…あとは昼に話した通りです。テレポートで助けを呼ぼうとした」


「…そしたら、俺が来た?」


 はい、と答えるハクに謝る代わりにありがとう、と感謝を述べる。さて、この時点で怪しい部分と思える場所はない。色々と考える部分はあるだろうが、それでも今は一旦それを真実だと思うことにした。そうしないと話が進まないからな。


「そんじゃ、お前らの言う兄貴のことを教えてくれ」


 笑顔で言って俺にハクはポカンと口を開けた。すっかり間抜けな顔を晒すハクに俺は笑ったまま「どうした?」と口を開いた。


「え、あ、いや…あの、兄貴のことを聞いてどうするんですか…?もっと作戦に必要なものが…」


 慌てたように手ぶりを加えながら言うハクはそう言うと、ほら!どうやって2人組を倒すか!とか、あるじゃないですか!と提案してくる。

 だが、

 

「おかしな2人組を倒す算段はある。どういう魔法を使ってくるかも、どういう人間なのかもわかってる。

 兄貴を救うのに必要なことだ」


 それをバッサリ切り捨てた。まぁ、倒す算段云々は真っ赤な嘘である。どういう魔法を使うかはいくつか候補はあるものの、それに対抗するべき算段がまだ完全についていないのだ。敵を騙すために味方に嘘をつく、というのは気分のいいものじゃないがそれでも信用し切っている奴がいないのだから仕方ない。


「そ、そうですか。そうですよね!作戦も立てているようですし…。

 ええと、兄貴はとても仲間想いの人でした。強くて、種族の違うみんなを家族にしてくれたんです。不愛想だったけど、それでもすごく頼りになって優しかった…仲間のためなら自分の身体を張って守ってくれる、そんな人です」


 思い出すように微笑んで話すハクに「そうか」とだけ返すと、ひよこをチラリと見る。ひよこは未だに俺の頭の上でジッとしており、ただその目はどこか眠そうに落ちる瞼を必死に抑えているようだった。流石にここ最近の連続したものに疲れたんだろう。

 もし、俺が勇者側だったとしよう。ひよこがこの状況を打開できると知っているとしよう。魔法ができなくても例え人を殺す術を知っていなくても、<弱っている>ひよこなら寝ているところを刺して殺すくらいのことはできる。ただでさえ体が小さいのだ、どこに刺さっても致命傷は避けられない。俺が行った回復に2度目はなく、双子も回復をお願いするには致命傷だと恐らく魔力が足らない。

 ひよこが殺される可能性は低くない。いや、絶対にこいつをこのまま1人にしたら殺されてしまうだろう。


 兄貴とやらのことを聞いたのは彼を助けられるかどうか…と、あともう1つ目的があったが、それはもう言われる前に果たしてしまったので別段深く考えることもない。だが、また新しく考えるべきことは増えた。



「聞きたいことはそれだけだ、ありがとうな」


 笑顔を浮かべればハクは、え、と声を漏らすともういいんですか?と驚いたように目を丸くした。その様子はそわそわと少し落ち着かない。

 もう夜になり、コートを着ている俺はいいが頭の上に乗っているひよこが不安だ。早めに寝ておいたほうがいいだろう。


「俺も早めに寝るとしよう。それじゃあな」


「あ、え、えぇ…」


 曖昧な返事と共に軽く手を振られる。背を向けてさっさと去ろうとすれば「待った!」の声で腕を強く掴まれて阻止された。うん、そう来ると思ったわ。腕を掴んだ奴は見なくたってわかる、たった今俺が背を向けたハクだ。大人の俺が少し痛いと思うほど強く握った手を離そうともせず、その力は段々と増していく。


「あ、その、頭の上のそいつは…一緒に寝るんですか?」


 その時の顔はどうだっただろうか、見ていない俺にはハクがどういう顔をしているのかはわからない。知るすべも、理由もない。


「あぁ、色々あるから今日は一緒に寝ようと思う」


 だから何か?とでも言いたげな自分の言葉は少し冷たかったかもしれない。それでも、腕を掴んだ力が緩んでいくのを感じてすぐさま軽くその手を振り払った。俺の顔は何の表情も浮かばない真顔で、実際感じるものは何もない。

 …ハクと話してわかったことがある。難しいことではない、単純なことだった。足を寝る場所だと途中教えられた場所に動かしながらギリッと歯を食いしばる。






 兄貴とやらは、もう助けることなど不可能だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ