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「と、とりあえず話し合おうか…!」
脛を押さえながら言ったのが効いたのか、ちょこんと座る双子に俺は安堵の息を漏らした。脛はすぐに痛みも収まり、ごほんと1つ咳ばらいをして気持ちを整えれば無表情の双子の顔が俺の視界に入る。
ちょこん、と体育座りをしている双子の前に習う様に俺は双子の前で胡坐をかくとなにから話そうか、と少し悩んだ。全部を話すには俺もわからないことがあるのでややこしいことになる。かといって分かる部分だけかいつまんで話しても意味がわからないことが多い。
「ねぇ、召喚士様」
双子も何か考えていたらしい。俯いて考え込む赤髪を横目に紫髪は問いかけてきた。それでも、言いたいことが上手くまとまらないのかそっぽを向いて「あ~」と、考える素振りをする。
まとまらなくても別に構わないんだが…、俺自身上手に話をまとめられる自信もなければ説明ができるわけでもない。俺自身が俺のことをわかっていないことが多すぎたのだ。
チラリと自分の治りかけの右手を見る。
自分の手が、体が、全て呪われていると気付いたのはかなり昔のことだ。何故自分が呪われているのか?誰がやったのか?わからないのか、ただ自分が思い出せないだけなのか…。自分以外の誰かに聞こうと思っても1000年も時が経ってしまっているのだ。
聞きたくたって聞けやしない。
紫髪は、ようやく言いたいことが固まったのか怖くもない睨みで俺を見上げる。それを笑顔で返してやれば、紫髪は恐る恐る口を開く。
「召喚士様、今のってなに…?」
「さっきのやつか?」
思いつくものを言えば、紫髪はコクッと小さく頷く。
「さっきのは…俺のできることの1つだよ。力出てきたろ?
俺は魔力を分けられるんだ」
紫髪は自分の小さな手を見てニギニギと閉じたり開いたりするが、それ何回やるんだ…。そんなに信じられないか俺の希少な技。
流石にちょっと傷つくからな。
「どうして、自分に使わないの?」
いきなり横から声がした。
「…ん?」
赤髪が考えるのが終わったのか俺の方を見てくる。紫髪は今度は自分の番だと言わんばかりに考え込むのを見て、俺はタラリと冷や汗を流した。
双子は見た目に幼子だ。それは変わりない。けれど、中身はどうだかわからないのだ。外見というのは人になるときに出す魔力の量によってそれぞれ違ってくるのだから、こいつらが俺より年を取っていたとしても別段驚くことはない。
例え、本当に幼子だとしても交代されて考えられると俺が答え切れるかが問題だ。俺だってわからないことは多い、それをわからないで通していいものなのか。
実際、今された『何故、自分に使わないのか』の質問も俺が聞きたいくらいだ。
「何でだかなぁ…俺は自分の魔力を使えないんだよ」
困り顔で答えれば、赤髪は意味が分からなかったらしく真顔で首を傾げる。うん、そういう反応になるよな、知ってたよ。誰だってそういう反応するからな。俺だって自分の変な境遇が他人だったら同じ反応するよ。自分のことだって同じような反応してるのにな。
「召喚士様、すごく弱い」
真顔で言う赤髪に思わず心がえぐられる感覚がしたが、事実であり、俺に弁解できる材料は何もないので反論もできない。はいそうです、俺は自分の魔力も使えないくそ雑魚ナメクジです。
「弱いぞ、お前らにだって俺は勝てない。
だから俺には一緒に付いてきてくれる仲間が必要なんだ。そのために力は分ける、できるだけ被害が少なくなるよう指示も出す。それでも敵わない相手がいたら…」
「いたら?」
召喚獣と、俺の策をもってしても勝てない相手はいるだろう。そうなったらどうする?そんなん決まってる。
「俺が巻き込んだんだ。責任は持つさ」
答えた俺に赤髪はジッと黙りこむ。次は紫の方かな、とチラリと横目で見れば見事に俺と目が合った。その目を逸らそうともせずに紫髪は俺を見つめてきた。
「召喚士様…魔力ない。私たちに分けるもの、ない」
あぁ、そうきたか、と頭を抱え込みそうになった。魔力なんていうものを人間側は感知することができない、それこそ勘のいいほぼ野生児に近いような第六感を持ってる超人にしかできないことだ。召喚獣側はといえば、ある程度の目安はわかる。こいつは強い、こいつは弱いと判断をすることができるのだ。
だが、俺の魔力は紫髪が言う様に『ない』と判断されてしまう。
何故かって?俺が知ったことじゃない。気になったこともあるが、基本は感知されなくて便利だな程度にしか考えたこともなかったのだ。強いて言うなら、この感知されない体質は異世界で俺だけだった。他の奴ら、同じ召喚士ですら魔力の感知は多少されていたようだからよっぽど珍しいからなのか、俺だからかのどっちかだろう。
まぁ、感知しにくいだけで見る方法はある。ちょっとしたコツはあるがな。
「見にくいだけだ。ちゃんと俺の中にある」
コツを教えてやろう、と俺はにんまり笑って見せた。




