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 どれだけ笑いあっていたのかもわからない。俺は血の流し過ぎで、双子はおそらく魔力の枯渇で疲れ果ててぶっ倒れたのはほぼ同時だった。

 時間が経って固まった血の上に寝ころべば独特の濃い鉄錆のような匂いが鼻につく。いい匂いではないのは聞くまでもないことだ。だが目の前がクラクラして、あるわけもないのに地面が1回転するような感覚が襲った。

 あぁ、気持ち悪い。気分としては最悪な気分なはずなのに、今じゃ箸が転がったくらいで笑える自信がある。気持ち悪さと爽快さが、自分の中でごちゃごちゃになっていた。


 そうだ。先に双子を回復させなくちゃいけない。魔力の枯渇というのは厄介なものだ。本来なら自然回復ができるまで安静にし、普段の何倍も栄養を体に与えてできるだけ長く睡眠を取らなくてはいけない。

 それが、無くなった魔力を回復させる方法の1つ。他にもいくつか方法はあるらしいが、俺ができるのは他の1つの方法だ。



「あぁぁぁぁ…」



 情けない声だと自分でも思うような声を出しながら怠い体をなんとか起こして立ち上がると、背中合わせにへたり込む双子が目に入った。力も入らないのか、ぐったりと互いの身体を背中で支え合っている。その前に俺が膝をつけば、双子は不思議そうに俺を見て首を傾げた。

 両の手の手袋を外しつつ双子に近づいていけば、何か用?とでも言いたげな視線に、両手で双子小さな頭をほんの少し押さえつける。双子の頭は俺の手より少し大きいくらいで俺からすればかなり小さな頭だ。こんな小さな体で俺の怪我を治すのに無理をしていたのでは、と思うと自分が情けなく思えた。

 確かに俺は弱いが、幼子にもこんな無理をさせていたんじゃ男が廃る。そもそもこんなにしてもらってばかりで自分は何も返せてはいないのだ。



「…ちょっと違和感あるかもしれないけど、すぐに収まるから気にするなよ」



 笑顔で双子に言えば、双子は不思議そうな顔をしつつも、双子同士で顔を見合わせると大人しく座り込む。今、自分が何かこいつらにできるとしてこれくらいしか思いつかない。これしか、俺にできることがなかった。

 ふぅ、と一旦息を吐く。俺にできることは少ない、それは確かに俺だって認める他ない。けれど、できることが少ない中でどうやって俺が10年前にここを救ったのかは知ってる奴の方が少ないだろう。



 俺のやれることはあまり他の奴がやれない、もしくは率先してやりたがらないようなものだと師から聞いた。やりたがらないのにはそれなりの理由はもちろんある。

 そのやりたくない理由を丸々無視できる体質なのだから、俺がやりたくない理由もない。むしろ率先してまでやるべき理由があるのだからやるのだ。



「『移し』」



 呟くように言えば、俺の手から小さな光が出る。オレンジ色のその光は、淡く、細く、俺の手から双子に移動していくのが見て分かる。瞬間、双子は信じられないような目で俺を見た。目を丸くして自分の手を開いたり閉じたりを繰り返し、互いに目を見合わせて手を繋いだり離したりを繰り返す。


「召喚士様…これ」

「これ、なに?」


 未だに自分たちを取り巻く光を指差し、双子は驚くように言う。それを見て、成功したのが分かった俺は思わず笑顔が綻んだ。もういいだろう、と双子の頭を離せば光は俺の手にしばらく留まっていたものの、やがて糸が突然千切れたようにプツンと消えてしまう。



「気分は?」


「大丈夫…」

「なんともない」


 相変わらず無表情の双子に俺は苦笑いしつつも手袋を両手に嵌めると、いつものぴったりなサイズの黒い手に変わる。俺自身も何度か手を閉じたり開いたりして何も異常がないことを確認した。


「そうか、なんともないならよかった。治療のお礼だ」


 うん、まぁ1回くらいなら大丈夫なのは分かっていたが、それでも絶対な安心にはならない。今回は杞憂で終わったのは幸いだ。今から俺がダウンしていちゃ元も子もないからな。

 双子は、俺に駆け足で近づいてくるとそのまま俺をジッと見上げてくる。それが、あまりにも無表情すぎて何を考えているのかわからないはずなのに、嫌な予感がした俺は「どうした?」と聞こうとした瞬間だった。



 双子の、赤髪の方が足を俺の足めがけて思い切り足を振りかざしたのだ。

 突然のことに反応なんて凡人の俺ができるはずもない。「は?」と変な声が出たことくらいが唯一の反応らしい反応か。だが、声を出すことくらいが精いっぱいの反応で、体としてはなんの反応もできちゃいない。


 赤髪の足が、俺の脛に当たるのは当然と言えば当然のことだった。

 ベシッ!と鈍い音がした。鈍い音がしたと同時に俺に泣きそうなくらい痛い衝撃が伝わってくる。


「~~~~っ!!!??」


 脛といえば弁慶の泣き所としても有名だ。俺よりめちゃくちゃ強そうな偉人である弁慶でさえ、脛を蹴られれば泣きそうなくらい痛いのだから、俺が同じところを蹴られて泣きそうになっているのも許してもらいたい。

 いや、もう正直泣きそうになるくらい痛い。シャレにならない。声もでない。涙は少し出た。


 俺の反応に、赤髪は心底不思議そうに俺を見る。あれ?なに、俺いじめられてる?真面目にそう思ったが、どうやら双子の様子からして違うらしい。



「弱い…?」



 双子は、どうやら俺の弱さに疑問を持っているようだった。


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