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 どれくらい遊んでいたのかもわからないが、かなりの時間を遊びに費やしていたと思う。高く上っていた太陽は傾き始め、遠くに見える白い山に沈んでいくのが見えた。疲れて休憩をする俺を気にせず、覚えたばかりの遊びで半日は遊び通したそいつらはハクの「そろそろご飯だよ」の一言がなければ恐らく飯も食わずに遊んでいたんだろう。

 ご飯の一言で端の方で、遊んでいた連中は俺の方にワッと群がってくる。


「長兄様!」「大兄貴!」「お兄!」


 そんなことを俺に言いながら飛びついてくる奴らに俺の肩がビクッと動く。

 え、なに?なんでこっち来てるの?晩御飯は俺?そんなバカな話があるか。そもそもなんだその長兄様やら兄貴やらは、それ俺に言ってんのか。意味がわからん。

 当の本人が困惑していることを知りもしないそいつらは、俺の手を何人かで持ってぐいぐいと引っ張っていく。手を持っていない奴も俺の周りを囲んで、あっという間に俺の周りは祭りの神輿か何かのような状況だ。


「兄貴は何食うんだ?」


「お兄は人間だから量、少な目のほうがいいよね!」


「長兄様、ご飯の後にまた何か面白い遊びを教えてください」


 俺の周りにいる奴らは全員笑っていた。俺の目を見て話をし、俺の反応を伺う様に顔を覗き込む。仲良くなったと思っていいのだろうか?

 キラキラと目を輝かせるそいつらを見ていれば、俺も楽しくなってくる。簡単な遊びを教えただけでこれだけ喜ぶんだから他の遊びを教えたらもっと喜ぶんだろう。その反応を想像するだけで楽しい。


「あぁ、けど遊ぶのにゃ夜は危ないからまた明日な。飯は適当にしてくれれば食うよ」


 答えれば、周りの奴らは次々に俺に話しかけてくる。そのことが嬉しくて、楽しくて、結局食堂のようなところに着くまでにはかなりの時間を要した。

 ご飯は、案の定すっかりと冷え切っていたのが作ってくれた誰かに申しわけなかった。俺の飯が焼き魚と白飯なのに対して、他の奴らは木の実や肉など様々だ。種類は様々らしいし違いは出てくるのが当たり前だろう。


「お兄は魚を食べるんだねぇ」


 1人の緑の髪をおさげに結んだ女の子が俺の食べているものを見て呟けば、他の連中も俺の皿を覗き込んでくる。

 その状況が非常に食べづらい。誰かに見られながら食事をするっていうのがなんとも慣れなくて、俺の箸はついつい止まりがちになった。言うべきか、言わないべきかで悩んでいれば、近くでダダダッ!と音がした。


「こら!!人の物を見る暇があるんだったら自分のを食べなさい!」


 それだけ言われて途端に散り散りになるそいつらに苦笑いを送って、俺はありがとうと喝を飛ばしたそいつを見た。まるで母親のような怒り方をしたその黒髪の少女は、俺の視線に気づくとパッと口を抑えて誤魔化すように真っ赤になった顔で笑う。


「す、すいません。あ、あの…お話をされているようでしたら…」


「いや、俺も実は少し食べづらかったんだ。ありがとう」


「あ、え、ええと…お役に立てたようならなによりです」


 黒髪の少女は照れ笑いをするように笑うと、1つお辞儀をして俺の前から駆け足で去っていく。

 いやぁ、懐かしい思いをしたもんだ。俺の母親は訳あって俺が小さいころに死んでしまった。父もいなかった俺は親戚をたらい回しにされ、母親らしい人間も周りにはいなかったわけだ。迷惑をあまりかけないようにとわざわざ怒られるようなこともしなかったからか、人が怒っているのをあまり見たことがない。

 そもそも、親戚の子供なんて怒りづらかったんだろう。自分の子供が例えなにかをしても、俺の前では怒らなかった気がする。


 散り散りになった連中は、時折俺の方をチラリと見てくる。話はしたいが、また自分が行くと周りが来て結局同じことの繰り返しなのが目に見えているんだろう。なんとも言えずに、俺は苦笑いを返して冷めてしまった魚を口に運んだ。



 さて、遊んでばかりもいられまい。魚を口に運びつつ、頭では別のことを考えた。考えているのはもちろんこれからの戦いに関してだ。

 今日、1日を遊びに費やしたのは目的がいくつかある。まずはここの連中と仲を作ること。これは必須だ。この方法じゃなくともいくつか策を練っていたが、1発でうまくいってくれたことに感謝しかない。

 次に、敵側が1日のどのくらいを探索として時間を割いているか。魔法を使った痕跡も相まってからか、おおよそ1時間もない。

 ここで疑問が生じる。何故、1時間しか探索に時間を割いていないのか、だ。探すなら1日でも2日でもぶっ通しで探したほうが格段に見つけ出す確率は高くなる。仲間なら、気を使ってなどのこともあるけれど、奴らが見つけ出すために使っているのは召喚獣だ。なんなら使い潰すまで使っていたほうが勇者らしい。


 じゃあなんで短時間でしか動かないのか?理由はいくつか考えられる。


・召喚獣を操ること自体が難しく、うまくコントロールできないから。

・召喚獣の強化に時間制限があるから。

・そもそも、あの召喚獣は偽物で化けているだけであるから。

・魔法を使った短時間で探索をしたほうが効率がいいと考えているから。


 まぁ、大雑把だがこれのどれかだろう。どれもありそうなのがまた気に食わない。なんせ俺は相手がどんな人間かも知らないのだ。当たり前と言われれば当たり前だが。

 残ったサラダのプチトマトを口に放り込んで思案する。これは、敵の特徴を聞いた方が早いかもしれんなぁ…例えば…。



「召喚士様」

「約束、だよ」



 見た目とは裏腹にとんでもなく頑固なこの双子、とか。


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