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 ビシッと言い切った俺に全員が不思議そうな顔をして首を傾げた。

 まぁ、それもそうだろう。そもそもこの世界に達磨なんて文化はないし、名前だけ聞けばその謎の物体が転ぶとかいうわけのわからない遊びなのだから。もはや遊びなのかすらも考えてみれば怪しいがな。



「んじゃ、まずはルールだ。1人が鬼役、他は逃げる役だな。

 そんで、鬼役は…そうだな、向こうの壁の近くで壁を向いたまま『だまるさんが転んだ』と唱える。それで言い終わった後に振り返る。

 逃げる役は、自陣を決めてその端に立つ。鬼役が『だるまさんが転んだ』と唱えている間に鬼に近づくんだ。鬼役が振り向いている間は逃げる役は動かないこと。動いたら鬼に捕まっちゃうからなぁ~!」



 お化けの物まねのように両手をガバッと広げて最後だけ大声で説明をしていれば、小さな「ひっ」という声がいくつか聞こえた。

 その声に俺はにんまり笑って説明を続ける。うんうん、狙ったような反応が取れると嬉しいもんだ。

 

「さて、鬼に捕まった奴は鬼の傍で待機して見学すること。後はさっき言ったことの繰り返しだ。

 で、繰り返してれば鬼に近づくよな?近づいたら、鬼が『だるまさんが転んだ』を言っている間に逃げる役は鬼役に触るんだ。1人が触ったら、今度は鬼が逃げる役を誰でもいいから1人捕まえる。捕まってる奴らもちゃんと逃げるんだぞ」



「はぁい、質問です」


 ピッと綺麗に挙手をする1人の高くも低くもない声に気付いて「なんだ」と返せば、そいつは何でもないような声で言う。


「最後の逃げるときに鬼役が噛みつくのはいいんですかぁ?」


「だめです、口は使わないでください」


「はぁい!捕まえたやつは食べていいんですか!」


「だめです、お腹壊します」


 淡々と返していけば、質問もなくなっていたので俺はもう1つ、と守りごとを切り出す。ここで真面目に重要になることだ。というか、これを守ってもらえなきゃ俺は工事現場の現場監督の如く遊んでいる連中を見守る羽目になる。


「ここでお兄さんとの約束だ!

 お兄さんの身体はすごく壊れやすいです。なので優しく扱ってください。

 俺に限らず、他の奴と遊んでいる間に叩き潰す、噛みつく、魔法を使う、喧嘩をする、その他危険なことは禁止です。みんなで楽しく遊ぶぞぉ!」


 グッと突き上げた拳を見せれば、周りにいる全員が「お、おぉ!」と肘を曲げて控えめだが、同じように拳を頭と同じ高さに上げた。うんうん、ノリと勢いは大事だぞ。会社の飲み会で特に俺が思ったことだからな、召喚獣には関係のないことかもしれんが。



「んじゃ、最初は難しいだろうから俺が鬼役な。お前ら適当に距離取って一列に並んでくれ」


 適度に離れた場所を指差せば、素直に下がるそいつらを見て、俺は「じゃあ行くぞー!」と声を張り上げた。ちなみにひよこは弱っているので俺の頭の上で見学である。大人しくしていれば体を無理に動かすことも危険な目に合うこともないだろう。

 一緒に遊びたいのか、うずうずと体を少し震わせるひよこに苦笑いが零れた。もうちょっと体の調子が良くなれば遊べるから、それまでお前は我慢な。


「だあああああああああああああああああるまさんがあああああああこおおおおろん」


「だっ!」


 バッと振り向けば、途端に止まる一同に俺は思わず「おぉっ!」と声を上げたくなった。見事に全員が俺の言ったことを1回で理解できていたからだ。最初だし、少し動いている奴がいても注意で見逃そうと思ったのにこれは嬉しい誤算だ。

 よしよし、と俺が心の中で満足げにしていればふらりと1人の身体がふらついた。が、初回だしおまけだ。見なかったことにすると、

「次に俺がだるまさんが転んだって言い始めたら動くんだぞ!」

 とだけ言って壁に向き直る。

 そんで、もう一回さっきと繰り返しだ。


「だああああああるまさんがあああこおおおろんだっ!」


 ピタッ


「だああああああるまさんがあああこおおおろんだっ!」


 ピタッ


「だああああああるまさんがあああこおおおろんだっ!」


 ピタッ


 徐々に詰めていく俺との距離に、向こうの額からじんわりと汗が出てくるのが肉眼でもはっきり見える。その先頭には、あの巨漢が緊張した面持ちでピタリと静止していた。他人より大きいのもあって危なっかしいが、それでも懸命に歩くポーズで静止しているのを見る辺り本人は至って真剣だ。

 次に立つのはあの双子。見事に巨漢の身体に隠れていて動いているかどうかの視認がまずできん。あれ反則じゃないのか?見えないんだけど、大丈夫か?


 なにはともあれ次の1回で俺の背中にタッチすることができるだろう。その緊張感の中で、俺は最後の1回の言葉を言った。


「だああああああるまさんがあああこおおおろんっ」



 ペシリ、と俺の背中に何かが触った。その瞬間、俺は勢いよく振り返ると俺の背中にタッチする双子とそれを後ろで見届けるその他大勢を見て息を吸い込んだ。

 吸い込んだ息をそのまま声に変換すると、大声で叫ぶ。



「そのまま鬼から逃げろおおおおおおお!!!!捕まった奴が次の鬼だからな!!!!」


「わあああああああああ!!!」



 途端に嬉しそうな声を上げて散り散りになっていくそいつらの顔は、とても楽しそうであったことだけ述べておこう。


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