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双子は言いたいことは言ったとばかりに踵を返すとどこかへ歩き去っていく…わけでもなく、相も変わらず俺の足にピタリとくっついている。無論、ひよこも俺の頭の上だ。別に重いわけでも、双子がさっきのようにコアラのごとくへばりついているわけでもないから歩きにくくはないが、なんか、こう、言いえない違和感が…。
違和感の正体はすぐにわかる。まず、意外とひよこが重い。ひよこだからと油断をしていて重さもそれほど感じなかったが、長いこと乗せていれば段々と首のあたりが怠くなっていき肩が凝った。降りてほしいが、ゆっくり休んでほしいのも事実なのでこれはまぁ…仕方のないことだと受け取ろう。
次に、双子は俺の足にくっついているだけで特に歩行の邪魔にはならないものの、俺が双子を踏んでしまわないよう気を遣うのだ。どれだけバランスを悪くしても双子は綺麗に避けてまたくっついてくるのだが、それでも人がぶつかりそうになったら避ける、と体に染みついた癖は抜けることはない。結果的に双子を避ける際に、一瞬だけ双子との距離が開いただけだった。
そんなことがあるからどうにも歩きにくい。と、いうよりも歩き方が若干ぎこちなくなっているのが現実だ。さて、この双子をどう引き離すか…と考えたときに頭の中で豆電球が光ったかのようにアイデアが浮かんだ。
そうだ、どうせここにいる遠巻きに見る他の奴らとも仲良くしたかったのだから同時にこなしてしまえばいい。双子を俺から少し離しつつ、他の奴らに敵意がないことを示すには…あれしかないだろう。
俺は双子が足にくっ付いている姿を見てにんまりと笑顔を作った。
さて、そうとなれば双子にまずは話をせねばならない。俺の足に猫の毛のごとくくっつく双子を足から少し離して俺の目の前に立ってもらうと、双子は良い子のお手本のように綺麗に立ったまま少しだけ不思議そうな顔をして俺を見つめた。
俺は、ゴホンと1つ咳ばらいをして双子を見ると左手の人差し指をピンと立てて双子の前に差し出す。言うことは1つだ。
「俺と遊びたいやつこの指とーまれ」
瞬間、とんでもない音がした。音がしたというよりは、俺が状況をうまく理解できなかった。分かったのは俺の視界が一瞬で真っ暗になったことと、耳元で何かが転がったり走ってきたりする可愛くない音が聞こえたことだ。音がドスドス言ってるからね、可愛くないね。
人間、驚きすぎると声もでないらしく俺は声も出ずにただ目をぱちくりとさせただけだった。状況を理解しようにも視界は真っ暗だし、まず体が動かない。これが噂に聞く金縛りなんだろうか?身体がめちゃくちゃ重いんだが、金縛りによくかかる人は大変なんだな。今度体験をした人がいたら労ってやろう。
新たな決意表明をしたところで、小さく光が見える。そこへ懸命に手を伸ばしてなんとかその光に近づこうとして、伸ばした手はぐいと上へ引っ張り上げられた。
ぷらん、と手首を掴まれたまま俺は何故かさっきの場所で宙づりになっている。手首をつかんでいたのは俺より2倍の高さはあるであろう巨漢。そいつは、1つ目で牙があって体は緑色だった。ジッと俺を見ると、睨みつけるように目を細める。
「何か用か?あ、というかさっき何があっ…た…」
その時に気付いたのだ。いや、気付いてしまったと言ったほうが正しい。今俺がいる場所、そこはさっき俺が双子を含めてここにいる全員に遊びを提案し、指にとまれと言った場所だ。そこには確かに俺とひよこ、双子以外の者は見える範囲にはいなかった。俺達を遠巻きから見ているのは分かっていたが、それでもガランとした空間はそれなりに寂しさを感じさせるものさえあったのだ。
それが、俺の周りには今から小さなミニコンサートでも開催するのかという人数の召喚獣達が床が見えないほど押し寄せていた。そのどれもが形が歪で、召喚獣だと知らなければ妖怪や化け物と揶揄されるような外見をした召喚獣ばかりだった。
ある者は地面から生えた大きな手、ある者はガーゴイルのような凶悪な見た目、ある者は毛虫のような見た目、ある者は馬の尻尾が蛇になっており、ある者はとても小さな虎…。
どこか、不完全な体の奴らばかりだった。中には人型になっている奴もちらほらいるが、それも少数だ。ほとんどが歪な体で俺を見つめている。
で、これはいったいどういう状況なんだ。
ようやく降ろしてくれた巨漢に「助けてくれてありがとうな」とお礼を言って考えていれば、集団の隙間を縫う様に双子が俺の元に駆け寄ってくる。小さいから紛れちゃうとわからんなこいつら。
双子は、そのまま真顔で俺を見上げると、無事だ。と一言言った。その一言であからさまに俺の周りが息を吐いたので首を傾げる。なんだってこんなことになってんだ。
「みんな、遊びたいって」
「みんな、指止まった」
あ、さっきの急な金縛りは俺が押しつぶされてたのか。納得して「なるほどな」と呟けば、双子は続けた。
「みんな一緒に遊ぶの」
「何して遊ぶの?」
双子は、表情がなくて分かりづらいがそれでもかなり楽しみにしてることがわかる。嬉しさが滲み出てるし、なによりちょっと声が高くなってる。それは、周りの奴らも全員同じなようで、ワクワクしているのが丸わかりなことに少しだけ面白く感じた。
さて、この手の遊びをやることに決まりなんてない。なるべくルールが簡単で、わかりやすく、誰にでもできるものをとチョイスしたのだ。
フッフッフと笑った俺は腰に手を当て、「ずばり!」と切り出した。
「【だるまさんが転んだ!】だ!」




