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「あぁ…えぇと…」


「………」


 足にしがみついたまま離そうとも、喋ろうともせずに俺をジッと見つめてくる幼女に俺はなんと言っていいのかわからず苦笑いを浮かべた。

 何を言ったらいいんだ?別に不快なわけでもないから離せとは言えないし、でもちょっとこの体制は色々困るというか困惑しているというか…とりあえず俺通報されないよな?


 幼女は、すっかり色落ちしてしまったであろう古いワンピースを着ていた。髪も目も真っ赤なその見た目が逆に浮いてしまうが、綺麗に着飾ればいいところのお嬢様にでも見えることだろう。


 幼女の綺麗に肩で揃えられた髪が揺れる。口を開かない幼女に俺が色々と限界だった。俺に懐いているのか、そうでもないのかそれすらもわからない。子供に懐かれるような人間じゃないと思うんだがな。




 そうして困っていればもう一人、同じ髪型で同じ年くらいの幼女が俺の半分にも満たない身長の手足をせかせかと動かして俺に近づいてくる。

 今度は赤ではなく紫。その子が、今度はしがみついてる子をジッと見つめると、俺を見上げて一切笑いもせずに真顔のまま口を開いた。


「…お兄さんは、おじさん?」



 少し高くて鈴のような声で言われて今度は俺が固まる番になる。いや、わかるよ?わかるんだよ?仕方のないことは分かるんだけどね?それでも、こう、心にグサッとくるものがあるのだけはわかってもらいたいっていうかね?


「ピィ!」


 笑顔のままで固まった俺のところへ、話し合いをしていたはずのひよこがすっとんできて俺と紫の子の間に割って入ると、翼をバサバサと言わせながらけたたましく鳴き始める。

 幼女は、ひよこをジッと見つめると「ごめん」と小さく呟くと俺をもう一度見上げて、ごめんなさい、と頭を下げた。



「召喚士…様。兄を助けてくれてありがとう…」


「兄?」


「そう、兄」



 首を傾げた俺に紫のその子はひよこをひょいと持ち上げると俺に差し出す。理解の追いつかない俺は更に混乱する羽目になったが、ひよこは素知らぬフリで「ピヨ」と1声鳴いた。



「理解、できないって顔してる」


 今度は下からする声に驚いて自分の足を見れば、今度は赤髪の幼女が口を開いていた。声まで紫の子とそっくりなところを見るに双子なんだろうか?いや、それよりも…



「兄は兄…ひよこでも変わらない…」



「いや、あの…」



「私達は家族だから」



「いや、違くて…」



 おおう、自分で気づいてほしかったがこれは絶対に気付かないやつだ。自然に話し始めてる当たりもう絶対にアテにできないこれ。

 話を遮った俺を不思議そうに見てくる幼女には少し悪いが、これだけは言わせてもらいたいのだ。



「足から離したほうが話しやすいかなって…思うんだが…」



 俺の足にコアラのようにしがみついたまま話すのはやめてもらいたいと。




 改めて、赤髪の子と向き合えば尚のこと紫の子とそっくりだった。瓜2つの言葉がしっくりくるだろう。同じ人物が髪と目の色を変えたようにすら思える。

 未だに俺に寄ってこない他の奴らと比べてこいつらの方がまだ友好的だと思っていいのだろうか?それにしては口数が少ないとも思えるが、元々そこまで口数が多い方でもないのかもしれない。


 小さい子はお喋りが好きなイメージだったが、まぁそのあたりは個性というか性格だろう。全員が全員そうと決まったわけでもない。



「お前ら双子か?」


「そう、双子」

「うん、双子」



 紫の子が答えれば、呼応するように赤髪の子も答える。そこから話を膨らませる気もなかったが、もうちょっと俺に話を持ち掛けてくれてもいいんだよ?ちょっと悲しくなってきちゃうから。


 双子は、それだけ言うと視線を俺の後ろに向ける。

 …ん?後ろ?なんとなく俺も振り向けば、思わずヒィッ!と情けない声が出た。ひよこと話をしていたはずの白いそいつが俺の真後ろに立っていたのだ。



 あ、ひよこがこっち来たから来たのか…。まじで真後ろに立たないでほしい。いや、後ろに立ったからどうとかいう話じゃなくて純粋に俺の心臓に悪すぎる。


「さて、召喚士様。家族を助けてくれてありがとうございました」


 あ、そのまま話を始めるんですね。


 真剣な表情で頭を下げるそいつに俺は「いえ、」と両手を胸の前で軽く振った。むしろひよこには助けてもらった恩がある。お礼を言いたいのはこちらの方だ。


「いきなり連れてきてしまったみたいで、説明もなく意味がわからない…と思」



 瞬間、ドォン…と遠くで地響きがした。否応なしに聞こえてくるその音と、小さな地震にも匹敵するであろう上下の小さな揺れに全員の顔色が真っ青になった。次々に小さく短い悲鳴と嗚咽が聞こえる。


 その音はドォン…ドォン…と音を響かせながら遠くをグルグルと回っているのか、一定以上は近づく様子はないものの、それでも緊張感と不安感は拭えない。

 それは、ここにいる全員がそうだった。全員、緊張した面持ちでその音が止むのを待つ。




 その時、恐らく俺だけが見えただろう。



 建物の小さな穴から地響きの正体がはっきりと見える。


 そいつは、赤い体に長い尻尾を持ち、大きく口を開け、木々をなぎ倒す恐竜だった…!


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