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 さっき聞いた叫び声よりかは大幅に音量は下がっているとはいえ、それでも鼓膜にビリビリと響く音量だった。両手はひよこを持つために使ってしまっているので手を使って耳をふさぐこともできず、目を瞑って歯を食いしばるくらいしかできない。


 鳴き声はすぐに止むものの、大音量を間近で聞いてしまったおかげで耳がキンキンとおかしな耳鳴りのような音が鳴り続ける。頭も若干痛むのは絶対に気のせいなんかじゃないだろう。

 ひよこは、鳴き終わると小さく息を吸い込んだ。さっきの1鳴きで肺の中の酸素を全部吐き出してしまったらしく、足がふらふら千鳥足になりながらも絶対に倒れなかった。



 いや、それよりも重要なのは今の1鳴きで敵が来るかどうか、だ。

 今の日記を読むに大元の敵は2人、そして操られているであろう奴は1人は確実、他は分からない状態だ。今のこの状況を見るに、明らかに俺は不利な状況に立たされているわけである。


 正直なところ、こういうものはあまり俺自身得意ではないし、好みでもない。真正面から来てしまったら俺に勝ち目はないのだ。

 ならば、どうするか?まずひよこの仲間を見つけないからには話は進まない。仲間を見つけ、日記では分かり切ることができなかったことを聞き、理解をしたうえで彼らに協力を求める。協力なしに戦うほど俺は愚かではないし、自分の実力くらいは把握しているつもりだ。



 耳鳴りが多少なりとも治まって周りの音がよく聞こえ始めた頃だ。ヒソ…と、声がした。何を言っているのかも、どんな声なのかもわからないくらいの小さな声。本当に、声だけが聞こえただけの音量だった。

 その声に気付いて、しばらく耳を澄ましていればその声が1つじゃないことにすぐに気づく。ヒソ、ヒソ、と聞こえる声は俺達をいつの間にか取り囲んでいた。恐らく山のようにそのあたりに散らばる瓦礫に隠れているんだろう。


「…………」



 俺の手元にはひよこがいる。仲間であればすぐに出てきてくれるだろうと思ってその場でしばらく待ってはみるが、時間は過ぎれどひそひそ声は止まずに俺の前に姿を現す奴もいなかった。

 ひよこも俺と同じ考えだったようで、しばらく待っても姿を現そうとしない自分の仲間に首を傾げた、もとい体を少し傾ける。


 いつまで待っても出てこないそいつらに、俺とひよこは目を見合わせるともう1回一緒に首を傾げた。出てこないのにはそれなりの理由があるのだとは思うが、その原因がわからない。ヒソヒソと声が聞こえてくるあたり、まだ警戒もそこまで強くはないと思うが一定の距離を保たれているとこっちもどうにもできない。



 さて、どうするか…。


 頭を悩ませた直後にひよこは俺の手からひょいと飛び降りると、ピィピィと鳴き始める。飛び跳ねながら何度も鳴いていれば、そのうちに疲れてきたのかその飛び跳ねる感覚が遅くなり、鳴くのにも元気がだんだんなくなってくる。


 それでもひよこは鳴き続けた。何度も飛び跳ね、鳴き続け、やがて瓦礫の後ろから誰かが顔を出すようになる。



 ゆっくりとした足取りで俺達の元へまっすぐに歩いてくるそいつは人の姿をしていた。若い男の姿で、白髪に肩にかからないくらいの天パがこの世を恨むようなまっすぐなストレート。身長は俺と大して変わらないだろう。


 そいつの印象はとにかく白い。

 白い服に白い肌、白髪とまできている。そいつは、ゆっくりひよこの前まで来れば、ひよこは鳴くのをぴたりと止めた。





 ひよこと、白いそいつは見つめ合い、一瞬だけピリッとした空気が流れるものの、それまで何の表情も作らなかった白い奴の顔が唐突にふにゃりと砕けた。



「おかえり、無事でなによりだ…!」



 白い奴はそれだけ言うと、ひよこをひょいと手で掬いあげて涙を流す。それがきっかけだったのか、それまで瓦礫の後ろにいたであろう何十人もの人や、獣がひよこの元へ集まってきた。


「それで、あの人間は?」


 ギロリと睨まれる俺は苦笑いでとりあえず手を振っておく。俺は人間に変わりはないのだからどう弁解することもあるまい、敵意むき出しだろうがとりあえず笑っておいた。

 俺が笑ったことに多少なりとも腹が立ったのか、さらに鋭く睨まれたのだが…まぁ、そういうこともあるだろう。


 ひよこは、ピィ!と鳴くと俺とそいつらの間に立って、羽を必死に動かしながら弁解を始めるように鳴き始めた。

 そのひよこの様子にびっくりしているようなそいつは、俺を睨むことを弱め、けれどしっかりと俺を観察するかのように見てひよこに「だが…」やら、「狼族を呼んだはずなのに…」やらひよこに言っている様子が見れたが、それもひよこが鳴けば言葉を飲んでしまう。



 いや、まあ…呼ばれた本人の俺が言うのもなんだけど、この状況ならリアンの方が確実に力になれると思うよ?



 さて、話し合いの間はどうしたって俺が暇になるわけで張り詰めた空気もなくなった俺は1つ小さなため息を吐いた。

 頭の中じゃ常に何かを考えているが、この時ばかりは少し何も考えたくなくなったのだ。空気を吐いて、もう一度空気を肺に入れたときにふと、足に違和感。



「……………」



「……………」



 すいません、ひよこさん。


 この赤い髪と赤い目の幼女は誰でしょうか?というかなんで俺の足にしがみついてるんでしょうか?


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