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 スキップでもしそうなリアンの後をついていって、もうすっかり覚えたらしい店の場所に迷いなく進んでいく。いや、相変わらず有能な鼻を頼りにしているのかもしれない。


 少し見えにくいが、店自体はすぐそこにあるようで、すぐに朝とは違ったいい匂いが鼻にとんできた。何を頼もうか、とぼんやり思っていればリアンがくるりと振り向いて「何を食べましょうか!」と笑顔で聞いてくる。


「…魚食いたい」


 最近魚食ってないな、と思って言えばリアンはまた笑顔になる。さっきギルドにいた時よりも太陽は真上よりは微かに傾き始めていて、リアンの方へ向くと逆光になってしまい顔がよくみえないが、小さく笑った声がした。


「お魚ですか!私はお肉が食べたいですねぇ、ご主人様はお肉が嫌いですか?」


「いや、嫌いじゃないが肉だと重い」


「そんなまるでおっさんみたいなこと言わないでください!」


「俺の心を的確にえぐる言い方はやめてくれ」


 わいわい言い合いながら歩いていれば、目的の場所にはすぐに着く。

 朝とは違い、店は混雑していた。多くの人で賑わうその店は、並んでいるとまではいかないがそれでも中には空いてるテーブルは少ない。カラン、と小さな鐘の音を鳴らして中に入れば忙しそうにあちらこちらを歩くミーアがこちらを向いた。


「あっ、朝の人達ですね!お席は好きなところにどうぞ!また後でメニューを聞きに来ます!」


 パタパタと中に入るミーアは、すぐに出てくると俺達に赤い表紙のメニュー表を渡して「どうぞー」と笑う。それを受け取ったリアンは、きょろきょろと周りを見回すと俺の手をひっつかんで端にある3人席に座るので俺も座った。


 賑やかな店内は、家族連れやカップルも多いらしくファミリーレストランのようだった。というか子供用のメニューもあるのか。すごいな。


 関心しながらメニュー表を開いて、どれにしようかと悩んだ。色々書かれているのは分かるんだがサンマやアジなんてものは当然なくて、どれがどれなのかさっぱりわからないのだ。うーん…嫌いなものはないから気にすることはないんだろうが、それでも肉やらが出てきても困る。


「ご注文お決まりですか?」


 ミーアがパタパタと駆け足で近寄ってくれば、手に持っていた水が入ったグラスをそれぞれの前に置いた。それを見届けた後、リアンは「これで!」とメニュー表の何かを指差す。はっやいなお前…。


 即決してしまったリアンとは対照的にまだ決まらない俺は、ミーアに「魚でおすすめなのありますか?」と聞けば、ミーアは『ウヤの塩焼きの果汁絞り添え』を指差すとにっこり笑って


「私のおすすめはこれですねぇ、さっぱり食べられておすすめですよ。希望があればご飯もおにぎりにすることも大丈夫です」


 美味しいんですよねぇ、と呟くミーアの顔は本気で美味しそうなものを見ている顔だ。その顔を見ていると俺もお腹が減った気がして、すぐさま「それで」と注文をすませる。


 ミーアは「はーい」と返事をしながら持っていた片手サイズの小さなバインダーに挟まれた紙にペンでサラサラと書き込んでいって「料理が出てくるまで少々お待ちください」とにっこり笑って一礼、そのままパタパタと奥に引っ込んでいく。


「何がくるんでしょうね?わくわくします」


 グラスになみなみ注がれた水を飲んで一息ついたリアンはそう切り出すと、また1口、水を飲む。俺も1口飲めば若干乾いた喉が潤った。


「ところで、あの勇者の人間と何を話していたんですか?結構話し込んでいるように見えましたけれど…」


 不思議そうに俺を見るリアンに、かいつまんで話をすれば、リアンは冷めた口調で「ふーん」と相槌を打って、グラスに口をつけた。


「子供のような人間ですね。まぁ、向かわなければ命の保証をされている人間側の意識なんてそんなものでしょう」


 フゥ、とため息を吐くリアンに俺は「残念だったか?」と話しかける。こくりとリアンが頷いた時だった、聞き覚えのあるパタパタと小さな駆け足の足音に美味しそうな香ばしい匂い。「お待たせしました!」というミーアの声にリアンの唾を飲む音が聞こえた。


「こちら、ご注文のものですね!ごゆっくりどうぞ!」


 コトン、と置かれたそれはまぁ美味しそうなものだった。

 リアンのものは大きなステーキで、ジュウジュウと音を出す鉄板の上には茹でたような野菜が数種類と、でかい塊の肉が鎮座している。肉の上にはバターのような四角く白いものが熱で溶けて肉を伝い、熱い鉄板に落ちてジュウジュウと更に大きな音を出す。同時に置かれた別皿の白いご飯は光り輝いていて、恐らくそれだけでも美味しいだろう。


 俺の魚は白身魚らしく、網目模様に焼き目が付いた切り身はふわふわと湯気が立ち込め、柑橘系のような小さな果実も半分に切られて添えてあった。魚の上には、黒ごまのようなものもパラパラと散らしてあり、それだけで美味しそうに思える。俺のごはんは、おにぎりにしてあり普通の白い米のおにぎりが2つ、焼いて茶色く色付けされた網目模様のおにぎりが1つ。

 嗅げば、ほのかに醤油の匂いがして焼きおにぎりだと1発でわかる。


「さて、リアン」


 話しかければ、リアンは早速食べようとしたところを止められていて、いわゆる『待て』の状態のまま俺を見つめる。目だけでわかるが、早く食べたいと訴えているのをあえて無視して俺はにっこり笑う。


「『いただきます』だ」


「いただきます…!」


 両の手を合わせれば、リアンもすぐに勢いよく両手を合わせてパン、と小さく手が鳴る。そのままかっこむようにステーキを食べるリアンをおにぎりを食べながら小さく笑った。




 あ、おにぎりうっめぇ。


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