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さて、どうするか。
項垂れているシロを見ながらリアンの動きもチェックする、というなんか少し人間離れしかけていることをしながら懸命に頭を動かしているんだがどうにもシロの方へ考えが上手く働かない。
リアンの方は上手いこと情報の聞きだしをしているようで、そこはホッとすることができる。流石リアンだな。
「あの、誰かを守るために、僕はどうすればいいんでしょうか…」
まぁ、問題はこっちなんですけどね。
弱弱しく言う彼は、一見すれば勇者に見えることはない。けれど、それは今現在迷っているからなのか、元々なのかはわからなくてさらに困惑する原因の1つになっていた。
相変わらず周りはガヤガヤとうるさくて、考えにあまり集中できない。それに、シロに対して本音を言っていいのかどうかも迷っていた。
頭を悩ませながら口を開く。
「どこに行ったってメリットとデメリットがある。それをよくよく考えながら自分で選べばいいんじゃないか?他人に決めさせるなよ、そういうのは自分で決めるもんだろ」
「でも」
「おー!おー!シロ!今日も討伐行くぞ!」
顔を上げたシロの言葉は、大声でシロを呼ぶ声にかき消される。彼を呼んだのは恰幅のいい男3人だった。まだ昼間の日が差す頃、その声を聞いたギルドのメンバーは重い腰を上げるように席を立つとゾロゾロと酔っぱらった顔で受付のカウンターへ向かっていった。
昼を過ぎてからが本番はいつものことらしく、受付の女性も慣れた手つきで仕事を捌いて、時折何かを言われるたびにとんでもない顔で睨みつけているんだが、セクハラでもされてるんだろうか?
「あ、い、今行きます…!す、すみません、僕もう行かなきゃ…」
シロは慌てて立ち上がると、地面に落ちたガラスを拾いながらどちらに行けばいいのか迷う様に目をあちらこちらに移しながら謝る。
「俺もそろそろ出なきゃいけないからちょうどよかった。頑張ってこいよ」
情報もそろそろ出尽くしただろうとリアンを探し、横目で見ればリアンもこくりと頷く。情報は集まったようで、シロに目線を戻すとにっこり笑ってヒラヒラと手を振った。
シロは、何度もすみません、と謝るとガラスを全て拾ってそのまま駆け足で3人組の元へ走っていく。いくつか話をするとカウンターの列に並んで依頼を受けるのを待つと、リアンがそっと近づいてきて俺の正面に座る。両足が地面に着かずにパタパタしているのが可愛い。
リアンに関しては喧噪も聞こえなかったし、様子を見ている限りでは怪しいこともなかったので安心できる要素しかない。これで情報が集まらなかったとしても魔王のところへ向かいながら別の街なり村なりを探せばいい。
そんなに切羽詰まってるわけでもないしな、時間はある。まぁ、時間がなきゃさっさと魔王のところにでも行ってればそっちの方が少し怖いが確実なんだよなぁ…多分人より情報の確実性と量が桁違いだろうし。
今回そうしないのは、魔王が完璧に俺達側であることに確証が持てないことと時間があるからだ。そうでなきゃこんなに面倒なことはしてない。
「一回、昨日の宿に行くか。交換はそこで」
「はい。異存ありません。確実なものから噂を含めればかなりの数が出たので明日、明後日にでもここを抜けてもよさそうですね。恐らく明日には今日いた数のうち8割は戻ってきませんが」
出ていくギルドのメンバーを見ながらリアンはあざ笑うように口角をあげる。それも、一瞬だけでサッと笑顔を作れば、俺は意味が分からずに黙った。
いや、意味がわかることにはわかるが分かりたくないという気持ちが強い。どうしようもできないことも、自分ではどうやったって今出て行った連中を止めることができないのは分かっている。リアンのことが知れても面倒だ。
俺の目的は、あくまで自分のことを知るためと、この世界の異変の原因を知ることだ。原因がわかった上で対処ができそうであれば対処をする。今から出ていく一攫千金狙いのやつらを止めることが目的じゃない。
「…そうか」
色々と考えて、なんと発言していいのかわからなかった俺はそれだけしか言葉を出すことができなかった。
昼過ぎにしちゃ、暗い話だなと頭の隅で思った俺はリアンに「飯、食いに行くか」とだけ呟くとそのまま、恐らく明日にはいなくなっているであろう集団の中を抜けていった。
リアンは、俺の言葉に嬉しそうに返事をして大人しく、けど嬉しそうについてくる。
前も、俺とこいつらの認識の違いというか、違う部分を見せられた。そりゃ、他人同士で、なおかつ生きる時間も生きていく環境も、思想の違いも種族の違いもあるのだから仕方がない。俺は人間で、こいつらは召喚獣なのだから。
それでも、前も今も戸惑う瞬間はある。いくら慣れたとはいえ、仮に俺と手を組んでくれるとはいえ思想の違いなんて変えられるものじゃないし、俺は変えようとも思わない。そもそもそんな簡単に変えられるものじゃない。
「今度は何を食べましょうか!」
とりあえずは、今のリアンの笑顔のために朝に行った定食屋を目指すことにしよう。




