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 一通り、書類に記入を終えれば女性はそれにサッと目を通すと、ニッコリ笑って大丈夫です。と言った。


「では、依頼についての簡単な説明だけ。

依頼は、私に簡単にどういうものを探しているのかを聞いてもらえれば私の方で探すことができます。どんな細かいものでも構わないので言ってください。戦闘はない、ですとか討伐、ですとかなんでもいいですよ。

 それを私の方で探してお出しするのでそれを見て、依頼を受注してください。もちろん気に入るものがなければキャンセルも大丈夫です」


「へぇ、探してくれるのか」


 思わずすごいなぁ、と言ってしまうと彼女は照れくさそうに「ありがとうございます」、と笑う。依頼なんてかなりの量になると思うんだがそのへんは王も関わっているんだろうか?その辺も知りたいが、まぁ質問ばかりになるのも悪いかな。


「じゃあ、早速受けてみてもいいですか?」


「はい、どうぞ」


 とりあえずは、


「えーと、戦闘無し、探し物、でお願いします」


 浮かんだ言葉を口にすれば彼女はふんふん、と頷きながら後ろを向き何やらガサガサと探し出し20枚ほどの紙束を机に置いた。


 どうぞ、と言わんばかりの顔の女性を少し不思議に思ったが、1枚、2枚と紙を見たところで驚愕する。女性が取り出した20枚ほどの紙は全て俺の言葉通りの依頼内容だったからだ。


 上に大きく依頼の名前と内容、それがずらりと並んだ下のほうに小さく手書きで戦闘無し、や街の中、などが書いてある。これで女性は俺の言ったことで探し出していたのかと納得したが、まぁすげぇ処理能力の高さだ。とんでもねぇな。


 とりあえずは、と一番上の紙を手に取って「これで」と差し出す。よく見てはいないけど、どうせほぼ全部やるんならどれを取っても一緒だろう。なんでもいい。


 リアンも特に口を出す気はないらしく、依頼の紙を見ながら口を開く気配はない。というかこいつ喋らない。いつもの滑りまくるような口はどうしたお前。


「はいはーい、それじゃあその紙は必要になるので持っててくださいね。依頼が完了したら私のところまで来てください。報酬をお渡しするので」


 よいお仕事をー、とヒラヒラ手を振る彼女だがこれはもう行けと暗に言っているのだろうか?リアンにも話を聞きたいからとりあえずは行くけどな、でもそういう態度されると俺も傷つくから、悲しくなっちゃうから。体だけじゃなくて案外メンタルも脆いんだからな。


 扉を出れば、入れ違いにゾロゾロと勇者らしき人間が入っていく。それを端に寄って見送れば勇者に似つかわない顔をした男が見えた。その顔は明らかに疲れてて、死んだ魚みたいな目をしている。やる気がないとかそういう類でもない。その男も、例に漏れずギルドの中に入っていく集団と同じように入っていったのを見届けるとリアンに引っ張られるように外へ出た。


「匂いが、しました」


「匂い?」


 首を傾げる俺に、リアンは頷く。

 顔色が、決していいとは言えない。真剣なその顔で俺の持っていた依頼の紙をかっさらうとそれを読んで鼻を動かしながら俺の手を掴んで歩き出す。そのまま、「はい」と返事をした。


「強烈な…召喚獣の血の匂いです。誰かまでは人間の匂いに混じってしまってわかりませんでしたが、あの集団の中の誰かが私たちを殺しまわっていると思っていいでしょう。

それと…」


 ふと歩みを止めたリアンは裏路地へ続く道へ吸い込まれるように入っていく。リアンに手を取られている俺も自然と裏路地へ入っていくのだが怪しさ満点のそこは予想通りあまり人はいない。いるのはネズミや小さな虫ばかりだ。

 リアンは、そんなことをお構いなしにずんずんと進んでいく。時折止まりはするものの、迷いのカケラも見られないその足取りに俺が不安になってくる。


「魔王に関してですが、彼は未だ現役だと思われます。死んだのであれば嫌でもそのことは私たちに届くはずです」


「どうしてそう言い切れる?」


 俺の言葉に、ギルドを出てからリアンは初めて俺の顔を見て、立ち止まった。だが、すぐに顔を前に戻すとまた歩き出す。


「魔王城にかかっている呪いだからです」


 どこをどう行ったのかも分からなくなったころ、リアンはふと路地の隅へしゃがみこみ何かを拾い上げるとポンポン、と汚れを払った。そして、おぉーと棒読みの声をあげるとそれを持った腕を上げて俺に見せてくる。


「?その財布がどうかしたのか?」


 その手に握られた真っ黒な財布に俺が首を傾げればリアンはペラっと依頼の紙を俺の前に出して見せてくれば、その紙には『落とし物』とでかでかと書かれており、横には特徴も書かれていた。


『黒い折り畳みの四角い財布。皮なので汚れている場合は払えばわかる』


 まぁ、確かに特徴は掴んでいるが…これだと山ほど財布が出てきそうだな。苦笑いしていればリアンもわかったようで、呆れたようにため息を吐く。


「それだと、恐らく似たものが山ほど出てきてますよ。たくさんの人間の匂いがついていましたから。匂いを頼りにここまで来ましたが恐らくこれで合ってるでしょう」


「やるなぁ、リアン」


 リアンが嬉しそうに笑うのを見て、俺も思わず笑顔になる。

 さて、あとはこれを出しに行くだけだ。そう思えば自然と足取りも軽くなった。


 ギルドへリアンと一緒に戻れば、そのころには昼をすぎていた。真上に上る太陽をまぶしそうにする人がちらほら出始めて、通りがかった広場の噴水には子供が水遊びをしている姿も見れる。だが、子供の数はどことなく少ないような…。


「最近少子化らしいけどうちには子供が生まれてよかったわねぇ」


「ほんとほんと!2個先の奥さん、子供が欲しいけど全然子供が授からないらしくてねぇ。お医者様によく相談にしいくらしいのよ。可哀想に」


 立ち話をしている、おそらく広場で遊んでいる子供のお母さんの声が聞こえてきてそら大変だなぁと他人事のように考える。そういえばリアンのとこも子供が産まれないんだろうか?リアン女の子だし子供とか彼氏とかいなかったんだろうか?いやでも村で一番偉い奴だったし相手も怖気づいて近寄らなかったのかもしれない。


「リアン、お前子供とか彼氏とかいなかっ…ベブッ!?」


 ドゴォ!と、とんでもない音と共に俺の足がリアンに踏みつけられる。

 やばい、クソ痛い。本当に痛い。というより足を踏んだ時に出していい音じゃなかった。俺の顔が変形しそうです。痛くて。


 痛みで冷や汗がだらだら流れる中でリアンはにっこりほほ笑む。もう本当にその顔だけ見ればお前は女神が何かだな…!


「女性に対し、そういうことを聞くのは失礼というものですよ?ご・しゅ・じ・ん・さ・ま」


 ご丁寧に俺を呼ぶときに逐一力を込めて俺の足を踏みつぶす。そのままパッと足を放せば、俺の足は見事に感覚がなくなっていた。一瞬まじで足がなくなったんじゃないかと思ったほどだ。


 うん、俺今日で決めたわ。



 これは今後の教訓にしておこう…。


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