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小鳥のさえずり、微かに漏れる日の光──、
なんて、あるはずもなく。日の届かぬ地下の空洞の中、うまいこと作られた隠れ家だと思う。ドーム状に作られたそこは広く広く、大きな空間のそこには草や藁で作られた家が何軒も立ち並んでいた。当然、地下であるから日の光はおろか動物の息遣いも聞こえない。長くいれば人間ならば息苦しくて長い間は住めないだろうが、蛇にとっては結構住みやすい場所らしい。
疲れているだろうからと当てられた家は、寝るには充分の広さだった。寝心地も良く、疲れていた俺はすっかり眠り込んでしまい、起きた時には暗かった。
…やっべぇ、全然寝た気がしねぇ…。日の光って大事だな。
「召喚士様ぁぁぁぁぁぁ!」
「ンベシッ!?」
のそのそとベッドから這い出してあくびを1つ、何時だ?と時計を探してキョロキョロと見回した瞬間、リアンの声が聞こえたと思ったら目の前には床があった。一寸先は地面ってか、そういうことか神様よ。
「召喚士様!おはようございます!朝ですよ、あの蛇婆から話を聞いて…召喚士様?」
多分、様子的に上にのってるこいつは首を傾げてるんだろう。想像ができるあたりがまた憎たらしい。だが憎めん、くっそこいつ可愛いわ。
「と、とりあえず…降りろ…」
「あっ…」
──・・・
「そんで?もう元気になったのか?」
こめかみがぴくぴくしてしまうのは致し方のないことだと思ってほしい。ジンジンと痛む鼻を我慢しておけば、目の前で正座をして縮こまるリアンはいたずらをして怒られた子供のようだ。が、俺には全く関係のないことなので、そのまま話を続ける。
「あい…おかげさまで元気になりました…ご迷惑をおかけしました…」
「今度からは落ち込むときはちっちゃくなっとけ、流石に重いわ」
「あい…」
「あとな、俺に飛びつくのはやめろ」
「あい…」
すみません、すみません…とちっちゃくなって謝り続けるリアンの頭をビシッ!とチョップすると、リアンは「であっ!」と変な声を出す。その声にぶはっと笑ってしまって俺もうずくまる羽目になった。なんだこれ、なんだこれ。
二人してぴくぴくしてれば、ドアが控えめにノックされて外から声が聞こえた。男の声だ。恐らく、この種族の。
「召喚士様、リアン様、大婆様がお呼びです」
「くっ…い、いま…ブハッ…いく…」
頼む、笑ってるときに来ないでくれ…。呼吸めっちゃつらいから…。
なんとか立て直した俺たちは、大婆様がいるという家に案内された。長というだけあって家がとんでもなく豪華だ。名古屋城みたい。連れてきてくれた青年は、「俺はここまでなので」とにこやかに笑うとひらひらと手を振ってくれる。あいつ絶対いい奴だ。断言できる。
青年に言われ中に入れば、そこは一段と暗い。すぐにバタンと扉が閉められ、カツン、カツンと鳴る自分の足音だけが中に響いて耳が痛くなりそうだったが、それはすぐに変わる。パッ!と明かりが急についたのだ。急についた明かりに思わず目を瞑ってしまい、やがてうっすらと目を開けると、そこには─
「ようこそ、召喚士様。さぁ、話をいたしましょう?」
昨日見た老婆が笑い、そこに立っていた。




