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「ツイタ、ココ」


 しばらく歩いたところで立ち止まったそいつが指を差したのは、それは立派な、おそらく何百年も育ち続けたであろう大木の根の集合体だった。そこには人一人が、それもそこまで大きい体格でない男がやっと通れるくらいの小さめの穴がある。奴らは、そこを差していたのだ。


「ちょ、ゼー…待て…ゲホッ…いやほんと…ハー…」


 ちなみに俺は日頃の運動不足が祟って真面目に息が切れている。リアンをかついだのは良かった、早めに行動することができたし、奴らとの話もスムーズに行った。しかも俺が上手に恰好つけられたときたもんだ、これ以上の恰好良さはないだろう。


 だが、問題はそのあとだった。自分でも忘れかけていたが俺は基本的に自宅で、パソコンの前で座って仕事を1日していたわけで基本的に体力がとんでもなくなくなっていたのだ。誰にだってあるだろう、学生のノリでスポーツして翌日の筋肉痛で動けなくなるようなやつだ。俺の場合、前にここへきた高校生の時のノリでこんなことをしてしまったわけで完全に落ちまくっている体力を忘れていたのだ。


 結果、今の俺は死にかけている。リアンを乱雑に落とすわけにもいかずそのままリアンを座らせると自分も、どかっと座り込む。座り込んだはいいがそれでも疲れが取れず思わず大の字になって寝ころんだ。


 その光景を不思議そうに見ているのは黒コートのやつらだ。ハイラナイノカ?モウスグソコダと声をかけてくるが、止めてくれ、俺普通の人間だから。お前ら召喚獣と比べると月とスッポンどころかコンクリと豆腐だから。


「ダイジョウブカ…?オレ、オブルカ?」


「あ…じゃあすまんが、リアンだけ背負ってやってくれるか?それともうちょい時間くれ。あと1分でいいから」


 気を使ってくれるこいつらの優しさが本当にありがたい。俺の涙ちょちょぎれるわ。ほんのちょびっと休めば回復すると言った通り、寝ころんでいれば呼吸も整ってきて立ち上がるまでに回復した。そのまま穴に入ろうとして…ちょっと後ろを振り返る。


「なぁ、これほんとに大丈夫?」


「ダイジョウブ、ナカママッテル」


「本当か?俺脆いんだからな?お前らが思ってるよりもデリケートなんだからな?」


「ショーカンシ、ダイジョウブ。オババシタデマッテル」


「大丈夫を連呼されると逆に入りずら…」


「ハヨイケ」


「だあああああぁぁぁぁぁぁぁ…!!!!!」


 言葉を遮ってゲシッと蹴られれば穴の前にいた俺は当然穴に落とされることとなる。ダストシュートのような作りのその穴の中は、思ったよりも突っかからずスピードが出る。


 当然俺の絶叫は、ダスト中に響き渡ることになったのだ。おそらく時間にして数秒であったろうが何m下ったのか逆に気になりだした頃、ふと下からまぶしく光が漏れ出していることに気付いて


「あ、光だ…」


 と、口に出した瞬間、今までの超スピードから急に体がポンッと投げ出される感覚と共に、よくあるエレベーターに乗った時のような妙な浮遊感に不安に思った次の瞬間、


「いだっ」


 ベチャッ!という音と共に地面に叩きつけられた。いててて…と思わず声に出しながら叩きつけられた自分の尻をさする。痔になったらどうしてくれんだチキショー。と、悪態付いた時俺の視界が少しだけ暗くなる。例えるなら、そうそう自分の前に人が立って影ができたみたいな…。ん?


 嫌な予感がして、ゆっくりゆっくりと視線をケツから前へ持って行った時、俺は2重の意味で開いた口が閉まらなくなった。



 1つめは、俺の目の前に立っていたのが自分の身長ほどもある杖を握ったお年寄りの婆さんだったから。


 2つめは、その婆さんが何故かその年に似つかわしくないド派手なハワイアンTシャツを着ていたから。



 婆さんはポカンと間抜けに口を開ける俺を見るなりニヤリとまるで悪役のするような笑顔で笑うとこう言ったのだ。



「ようこそ、お待ちしておりましたぞ召喚士様」


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