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「オババ、オマエラクルコトシッテタ。オレラソノツカイ」
たどたどしい言葉で話すそいつにリアンの顔が青く変色していく。青色を通り越して土気色になったところで、リアンはわなわなと震え始めた。
「あば、ばばばば…す、すすすすみませ…まさか友好的だとお、おもももも…」
「いや、それに関しては俺も悪かったからそんなに死にそうな顔すんなよ…」
「オ、オレラモワルカッタ…」
何故か1人の女の子を囲んで男と2人の黒コートの不審者が慌てて慰めるという意味のわからない構図になっている。今にも泣きだしそうなリアンはそんなことも耳に入らず、視界に入れずと全くもって話にならない。まぁ、仕方ないなと思い直すとリアンをそのまま肩にかついで、黒コートに向き直った。
「とりあえず案内してくれ。おばばとやらに色々聞きたい」
「ワカッタ」
こくり、と頷いた黒コートはリアンが吹っ飛ばして踏みつぶした奴を一人背負い、くるりと背を向けると奥の方へと歩いて行った。黒コートは歩きながら暇なのか、俺の方へは振り向かずに話しかけてくる。
「オマエフシギ、ヘン」
「変?俺がか?」
その言葉に首を傾げた俺に黒コートは頷く。他の1人も同様に頷くと、リアンを見る。リアンは未だに何かをブツブツと呟きながら手で顔を覆っていた。聞こえるのは大体謝罪の言葉で永遠それを繰り返しており、回復するのはもう少し時間が経ってからだろう。黒コートはリアンを見ていたがすぐに目線を戻すと、また喋り始める。
「ソイツ、キヅイテナイ。オレタチハトクベツメガイイッテオババガイッテタ。ダカラワカル。オマエ、ニンゲンダケドニンゲンカラハナレテル」
「……」
「ヨクミエナイカラオレタチ、クワシイコトワカラナイ。ダカラクワシイコトキカナイ。ソレ、オババガヤル」
聞き取りにくいが、まぁよく喋る奴だった。暇だったとしても人間を嫌うと聞いていたから割とびっくりする。片言だし顔は見えないから友好的かどうかはわからないが、それでも悪意のある言葉は一切飛んでこないし、むしろ気を使われてるようだ。
「そうか」
それだけ返すと、黒コートはチラリとこちらを見るように頭を動かすとまた前を見て歩き始める。それを見て、俺の顔は少しばかり難しくなってしまう。
もし、こいつらの種族自体が眼がいいのだとしたら…もし、こいつらの言ったことが正しくておばばとやらの眼が更にいいとするなら…俺の謎も解けるのだろうか?俺の疑問にも答えてくれるのだろうか?俺に、何かヒントをくれるのだろうか?
どのみち、会わなくてはいけない相手だったろう。この世界の問題云々ではなく、俺自身の問題として。もし、それが俺が望まぬ答えだったとしても。
こいつらの住処まで、あともう少し─。




