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「どう見ますか、召喚士様」
「いや、明らかにこっち見てるし森の中だから偶然鉢合わせた…なんてことはありえねぇよなぁ…」
両者、1歩も動かない状態でにらみ合いを続けていれば、先に動いたのはフードの連中だった。まぁ、この世界で平和的な俺の望みはあきらめたほうがいいと思っていいだろう。だってみんな敵意むんむんなんですもの。
フードの連中は、全員顔を見合わせると…顔見えてるのかな?まぁいいや、顔を見合わせて頷きあうとこちらに向かって跳躍した。コートをバタバタと風になびかせて1人がこちらに、2人がリアンの方へ飛んでくるが、大きく後ろに飛んで避ける。
「リアン!」
「大丈夫です!それより…」
目線の先にいるのはとびかかってきたやつだが、その足元がおかしい。恐らく拳を叩きつけたのであろうその地面は、まるで液体化したようにドロリと溶け出した。
あぁ、これだ駄目だ。触っちゃいけないやつだ。親に、かぶれるから触っちゃいけないって言われるやつだ。たらりと流れる冷や汗に動悸が止まらない。誰か、誰か動悸を収める薬持ってきてくれ…。
「ア…アアア…」
黒コートの1人がガパッと開いた口から出たのは、意味のなさない言葉だった。1音しか発しないその男は、ゆっくり、ゆっくりと近づいてくる。素早くリアンが俺の前に立ち、庇う様に背を向ける。
「召喚士様、貴方はとても運がいい。奴らは目的だった種族のものです」
リアンは、そう言うと口から大きく息を吸い始める。また、あの酸素不足になるのかと覚悟した時、リアンの口から見えない何かが吐き出された。ポカンとその様子を見ていた瞬間、ワンテンポ遅れて周辺の木がビシビシと嫌な音を立てとんでもない風が巻き上げられる。踏ん張ってようやく吹っ飛ばされないくらいだ。
ぎゅっと目を瞑ってそれに耐えると、すぐに風は止む。やがて、うっすらと目を開ければそこには吹っ飛ばされて倒れている黒コートの面々とそのすぐ横で笑顔で黒コートを踏みつけるリアンがいた。
「召喚士様に喧嘩を売ろうだなんてその強さでよく思えましたね!でもちょうどいいです!あなた方の長に私達は用があるんです!案内してください!っね!!」
ゲシゲシと蹴られるその様はどこかのSMクラブで見たことがあるような…ないような…そんな微妙な気持ちにさせられる。黒コートがゆっくり手を伸ばしてもそれを容赦なく踏みつぶすあの子は果たして本当に俺の知っているリアンなんでしょうか?
そんなことをぼけっと思いながら踏みつぶすリアンと黒コートを見て十数秒、リアンがこちらに気付いて大きく片手をこちらに振って、ぴょんぴょんと跳ねる。
「あ、召喚士様!ちょうどいい下僕が手に入ったんです!案内させましょう!」
うん、うん、わかったから…わかったから黒コートの身体の上でジャンプするのはやめろ…やめてあげろ…痛いから、それ絶対痛いから…。俺も痛くなってくるから…。
「と、とりあえず降りろ?な?」
そう声をかけた時、黒コートが口を開く。
「ショーカンシ…ア、ア、アンナイ…イワレタ…モトカラオマエラオレタチノムラニハイレル…」
ん?聞こえにくかったけど、こいつ、元から村に入れるって言わなかった?リアンと思わず顔を見合わせ、状況が全く理解できなかった俺たちは2人して首を傾げることとなったのだ。




