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さて、勇者をぶちのめしたいところだがわざわざ出迎えに行くのも面倒で少し休憩をすることにした。勇者が何を使ってくるのかもわからないんだ。休憩兼作戦会議である。
「勇者、といいますと…大体が剣士であることが多いですね。剣術に優れ、人並み以上の努力をし、ようやくの想いで国王に認められ勇者となる」
「ほぉ、大変なんだなぁ」
何故そこまでして勇者になりたいのかはわからんが、まぁ親を殺されたりだの色々あるんだろう、と半ば無理やり納得していればリアンは「ですが…」と続けた。
「ここ最近は勇者は流行だそうです。強いのに女に弱く所謂『草食系勇者』が横行しているのですが、それは見せかけの『中身は肉食系勇者』も流行のようですよ」
「なんでそんな人間側の世情に詳しいんだよ…」
詳しすぎてお兄さんびっくりだよ。そもそも1000年経ってだいぶ世の中変わったんだなぁ、と感慨深く思う。前に来た時に仲間にした召喚獣達に町の様子を観察させて帰ってこさせたらお菓子たらふく買って帰ってきたからな…偵察してこいよ!っていう。
つうかなんだ中身は肉食系って、見た目は草で肉食系ってそんな感じのをどこかで聞いたことがある気がする。なんだっけ、思い出せない…いや待て、喉元まで出かかっているんだ…あとちょっと…あとちょっとなんかこう、思い出せる要因があれば…。
「人間に狙われている身ですから。人間を見なくては私たちがどう狙われ、どう向こうが動くのかがわかりませんから。人間に化けて町によく行くんですよ?」
「へぇ、人に…」
その時、ツキン、と痛む頭に頭を押さえたくなるがその痛みは一瞬ですぐに消えてしまう。痛みも、そこまで痛いものじゃない。少し太い針か何かで軽く刺されたような痛みだ。そこまで鈍い痛みでもないから痛くなくなれば後に響くこともない。けど、何かが…あるような…。
「召喚士様?頭が痛みますか?」
心配そうに顔を覗き込むリアンに、「いや…」と返してから、別の何かを微かに俺は思い出そうとしていた。
『なぁ、──よ。私のことを忘れないでおくれ』
そう言って、寂しそうに笑ったあいつは…誰だ?何故思い出せない?
そう、約束をした。決して忘れないと約束をしたはずだったのに、声は思い出せれど顔も、姿も、何も思い出せないのだ。あいつは誰だ?あいつはなんといった?あいつの名前は…なんだった?
「召喚士様?」
リアンの声でハッと顔を上げれば、ポタリと汗が落ちていた。背中を伝う汗がこれ以上なく気持ち悪い。いや、気持ち悪さではリアンの住処の入口のほうが気持ち悪かったが。
汗をかいているはずなのにぶるりと身震いがしたのがよけいに気持ち悪い。ここ10年風邪など引いたことはなかったからなおさらだ。
「どこか具合が…」
リアンが再度、俺に聞こうとした瞬間に茂みがガサガサ!と揺れた。そして、そこから出てきたものを見て、俺は完璧に思い出したのだ。これに関しては感謝せざるおえない。
「くっそ、こんなところにまで逃げ込みやがって…」
出てきたのは勇者であった。
草食系にみせかけた肉食系勇者…。リアンはそう言った。それが何かに似ていると思っていた俺はようやく思い出すことのできた名前を勇者を指差し、叫んだのだ。
「出たな!!!草食系に見せかけた肉食系勇者!!!!食虫植物系勇者め!!!!!」




