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 サイクロンは、やがて中心へ向けて小さくなっていくとポンッという音と共に消えて爽やかな風が吹く。風が吹けばあれだけ騒がしかったのが嘘のような静けさで、リアンの息遣いさえも聞こえた。

 そっと、サイクロンがあった場所へ近づけばあの2人が倒れているのが見えて思わず息を止めてしまう。それはもう、ひどい有様だった。大量の切り傷と恐らくサイクロンに巻き上げられた石や硬い何かに当たったような打撲痕、おそらく、骨にも何かしらダメージは入っているだろう。


「ギリギリで防護魔法をかけたようです。息はまだあるでしょう」


 後ろからついてきたリアンは俺の背を鼻先で支えるようにして言う。少しだけ、落ち込んだような声で「申しわけありません、負担をかけてしまいました」と言ったきり、黙ってしまった。あの急な体調不良は技の前兆みたいなもんだったのか。と一人で納得すれば、リアンの鼻を撫でてやった。


「いや…守ってくれてありがとな」


 だいぶ体も楽になっている。自分の足で立ち、倒れている彼女らを近くの木にもたれさせて空を仰ぐ。大きく息を吐くといつの間にか狭まっていた視界が大きく開けていた。


「お前、風を使えるんだな」


「えぇ、先ほどの召喚士様の症状は私が空気を圧縮し、吸い過ぎたことによる低酸素状態による高山病だと思われます、加減がわからずすみません」


 そんなに気にすることもないのになぁ、と笑ってしまう。症状のことがわかったなら別になにも気にすることはない。原因がわかってしまえば次に生かせばいい。というか別に俺は悪く言うつもりもないし怒るつもりもないんだがなぁ。


 うーん、と頭を悩ませればリアンはただ優しく俺を見る。


「貴方は、優しいのですね」


「んあ?そうか?」


「私たち召喚獣はほとんど目は退化していると言われています。外の形を見ることもできる、同胞を認識することもできる。けれどそれは白黒の世界。使えるべき召喚士に会うためか、私たちが召喚士に騙されないようにか、それはわかりませんが、私たちは人間の認識は必ず魂で行うように作られています。あなたがどういう人間であるか、あなたが今どういう感情を抱いているのか、貴方という人間を信じていいのかどうか、魂を見て少量の会話を通せば大体のことはわかる。これは、貴方の魂を見て言うのです。召喚士様、貴方はとてもお優しい」


 聞いたことがあった。前に来た時も、召喚獣は色が分からない、と全員が口を揃えて言った。ある程度物はわかるらしいが人の表情を見ることはおろか、髪型もわからない。何で人間を識別しているのかといえばそれは『魂』であり、図りきれないものは少量の会話の中で変化する『魂』を見る。彼らはそうしてずっと生きてきた。


「ずいぶんと買ってくれるんだなぁ」


「私が、自分で決めた人間ですもの」


 では頑張らねばなるまい、期待にはせめて応えられるように。とりあえずは─



 「あの勇者のクソガキをなんとかすることからだな」


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