第6話
「あら? ちゃんとここへ来たってことは、クイズに正解したってことなのね?」
事務所の扉を開けると、目の前に木目調の大層な机と背もたれ肘掛け付きの椅子がある。そんな場所を陣取っているのは、ここ須世理探偵事務所の所長であり探偵でもある須世理琴音だ。彼女は、ブラックコーヒーを啜りながら、俺を確認して開口一番にそう言った。
「正解しちゃあ、悪いか?」
「いえ。正解したってことは、簡単な問題だったんでしょう。で、どんなのだった?」
須世理はコーヒーカップを机に置き、俺を見る。俺は、今日のクイズを話す。
「今日はあれだ。三位一体の父と子と聖霊の、子の英訳は何か? ってやつだ」
「《the_Son》」
須世理は考える素振りも見せず、そう答えた。
「その通りだ」
さすがは、魔術師で探偵だ。そんなものは基本中の基本ってか?
須世理が、紙に何やら書き始める。そして、書いたものを俺に見せた。
「一応、リスト化してみたわ」
A4用紙には、こう書かれていた。
第一問の答え――恋。
第二問の答え――翡翠。
第三問の答え――《the_Son》。
「……で、これで何が分かる?」
「さあ、まだ分からないわね。この順に意味があるのかもしれない。もしかしたら、意味があるのは答えの部分だけかもしれない」
「そうか」
相槌を打って、俺は給湯室の方へ向かおうとした。自分のコーヒーを淹れるためだ。
「杵築くん」
そこで、須世理が呼び止める。
「おかわり」
そう言って、須世理は空になった自身のカップを俺に差し出す。
「自分で淹れろよ」
「あなたは、今からコーヒーを淹れるつもりだったんでしょう? なら、ついでに」
「はあ」
俺は嘆息して、
「はいはい」
と言って、須世理のコーヒーも淹れてやることにした。すっかり、奴隷助手が型に嵌まっている俺であった。




