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二話目

「えっと……これから私はどうすれば?」

 何せ見知らぬ世界に飛ばされたのだ。右も左もわからない。

「とりあえず怪我してるからそれの治療するべさ」

 彼はどうして見知らぬ私にここまで親切にしてくれるのだろうか? まさか裏があるのだろうか……?

「狭い家ですまねえけど、我慢してくれ」

「そんな……私は好きですよ、この家」

 確かに少し古い感じはするが逆にそれが趣深い。木で作られているからだと思うのだが妙に温かい雰囲気に包まれている。

「ま、そう言ってもらえるとお世辞でも嬉しいやな」

 どこか自嘲気味に笑う彼。少しその表情も陰って見えた。

「一つ……いいですか?」

「どうぞ」

「どうしてこんなに親切にしてくれるんですか? 今日出会ったばかりの私に」

 直後私は後悔した。彼がこちらを悲しそうな目で見ていたからだ。小さな目に涙をうっすらと浮かべて口元を辛そうに歪めている。

「まぁ……そうなるやな」

 彼の空笑いが悲しく木の家に響く。そして私の方を見たかと思うと――

「お前オークがどんな生き物か知ってるべ?」

「一応……」

「醜くて凶暴で欲にまみれた汚らわしい化け物――そう聞いたんじゃねえのか?」

「そんな……」

「否定しなくていい。そりゃそうだわな。オラはそう言われながら生きてきたんだから」

 そっと悲しそうに目を伏せ、

「想像できるか? 生まれた時からこんな見た目のせいで森に追いやられて、おまけにここにすむ精霊たちからも除け者にされたんだ」

「……」

「世間の評価ってのはこええよな。オークのイメージが悪いだけでオラたち普通の奴らまで被害を受ける。全くいい迷惑だ」

 彼はきっと私が想像もできないほどつらい思いをしてきたに違いない。その目がそう物語っている。そこには深い悲しみと決意が満ちていた。

「だからよ、オラは決めたんだ。せめてオラだけはまともになろうって。人に優しいオークになろうってな……だから困っている奴は誰であれ助ける。それだけだ」

「ごめんなさい……無神経なこと言って……」

「気にすんな。もう慣れた……それよりおめえ、何て名だ? まだ聞いてなかったべ」

沖野渚おきのなぎさ……です。あなたは?」

「オラはラグってんだ。よろしくな、渚」

 そっと差し出される緑色の大きな手。ゆっくり握り返すとそれは見た目よりも柔らかく……とても温かかった。


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