ミキプルーンの苗木(詩)
「これはね、ミキプルーンの苗木、あぁ、つまりベイビー、わかる?」
彼は歌うように、私に向かってつぶやく。
私は目のやり場に困って、視線を地面に落とした。
中井貴一の真似が上手だった、人を笑わせるのが好きだった、そんな彼。
「これはね、ミキプルーンの苗木」
だらしなくギョロリと見開かれた二つの目玉が、力なくこちらを見つめている。
たった今気づいたが、彼の顔にはこちらが不愉快になるほどの満面の笑みがたたえられていた。
私はきっともう、正常であることを放棄したのかもしれない。
「コレはね、ミキプルーンの苗ギ」
機械的にかつ狂ったように、同じ台詞を繰り返す彼。
精神を病んだ者のつぶやきはじわじわと黴のように、私の耳を腐らせにかかる。
「コレハネ、ミキプルーンノナエギ……ッ!」
そう言って彼が引っ掴んで私の目の前に差し出したのは、鮮血の滴る生首だった。
私の心臓はもはや床に落ちて割れたインク瓶のように、黒い粘つく液体を惜しげもなく地面にまき散らすだけ――。
「ヅマリ、ベイビー、ワガル?」