scene2 カルチェ争奪戦
「え? 私に仲間になって欲しいですって?」
テーブル席で一人飲んでいた先程の女戦士に、バッツはパーティを組まないかと持ちかけていた。
「そや、ワイは魔宝使いバッツ。でもってこいつは使い魔のペケ。姉ちゃんの名前は?」
「カルチェだけど……」
「カルチェか。ええ名前や。どや、カルチェ。ワイと一緒にパーティを組んで魔宝具をガッポリ稼がへんか? ええ思いさしちゃるでぇ?」
「えー」
手をワキワキさせ、怪しい動きをしながらバッツはカルチェに迫る。
「どうしようかなぁ……」
顎に指を当てながら、うーんと考え込むカルチェ。
そんな考え込んでいるカルチェをバッツはチラリと見た。
豊満なバストに、引き締まった腰のライン、スラリとした足。抜群のプロポーションを持つ彼女だが、その顔には幼い少女のあどけなさがまだ残っており、考え込む仕草もまた可愛いらしい。このギャップが、彼女の持つ魅力をよりいっそう鮮やかに際立たせていた。
その魅惑の姿にクラクラしそうになるバッツ。だが、慌てて自分の頬を両手で叩くと、首をブンブンと横に振った。
あかんあかん、何をワイは考えとるんや。こいつは単なるワイの金づるや。いくら色っぽい姿をしとるからって、情欲に溺れとったら本来の目的を見失うで。明鏡止水。邪念を捨てろ。金や、金の事だけを考えるんや!
「じゅげむじゅげむごこうのすりきれ。マケルナレバンガカピカッピ。エロイムエッサイム、エロエロエッサイム……」
既にそれ自体が邪念である事に気がついていないバッツは、目を瞑るとブツブツと全く意味の無い精神統一の呪文を唱え始めた。
「ちょっと待ったー!」
その時、酒場のあちこちから声があがり、立ち上がった冒険者達が我先にとバッツ達の元に集まってきた。
まず最初に現れたのは、白い法衣を身に纏った気品ある男だった。
「私の名前は、アルハイム。美しき神官戦士です。美しいお嬢さん、どうか私どものパーティに加わって頂けませんか。美しいあなたは、美しい我らのパーティこそ相応しい」
金色の髪をなびかせ、優男は深々と頭を下げた。だが、そんな男とカルチェの間を遮るように、見慣れない鎧を身に纏った戦士風の男が現れた。
「あいや待たれい。拙者の名前は、ササキコジロウ。職業はサムライでゴザル。先程のお主の腕前、しかとこの目にて拝見させてもらった。どうでゴザル? 我のパーティに加わり、共に剣の道を極めようではござ……ぬおっ?」
話途中の男を押しのけ、今度はカルチェに膝蹴りを食らわされたガイラムが現れた。
「ガッハッハ! 俺様の名前はガイラム! さっきの一撃は効いたぜ! 俺様は強い奴は大好きだ。惚れた! 俺様のパーティに入りやがれ!」
その他にも自分のパーティに入ってくれ、結婚してくれ、パンツ下さい等とカルチェに向かって引く手数多のスカウトの声が飛び交った。だが。
「ゴメンね。気持ちは嬉しいけど、私は一人がいいんだ」
やんわりと断ったカルチェは、席を立つとそのまま店から出て行ってしまった。
その場に居た全員が落胆で肩を落とす。
ペケがチラリとバッツを見た。
「出て行っちゃったニャ。どうするニャ、バッツ」
「どうするもこうするも無いやろ。追いかけるんや! ワイは諦めが悪い男やさかいな!」