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騎士を育成する学園

純白な髪の毛に漆黒の瞳。

そこら辺にいる男性より少しだけ良い顔立ち。

その他は全て平均的な何処にでも居るような青年。


「…うまいな…」


──今リンゴをムシャムシャと齧っているこの青年こそが、今ベルメール王国で話題の指名手配犯である『絶対不変』である。


しばらく歩いていると、目の前に立派なお城のような2つの建物が見えてきた。


俺を含め、制服のような服を着た多くの少年少女と鎧を着た騎士達がぞろぞろとその建物の門をくぐって行く。


ここは都立ランディア騎士育成学園と呼ばれる騎士を育成する場所であり、王都中から優秀な実力を持った若い子や貴族の子息たちが通っている。

ちなみに入学試験では毎年王都中の若者が受けに来るが、受かるのはせいぜい30%とも言われており、そんな入学試験を乗り切っても卒業までの3年間の間に退学する者は数多く、王都随一のエリート実力主義の学園と呼ばれている。

だがそんな学園だからか卒業する者は猛者ばかりであり、その中の大半の卒業生は王国騎士団としての人生を歩む。


そんな猛者たちの集まりである王国騎士団総本部がこの学園に隣接されているもうひとつの大きな建物だ。

王国騎士は収入はもちろんの事、国を守るその姿から人々から英雄職とも呼ばれている。

卒業生を筆頭にあらゆる猛者が集まる騎士団は間違いなく王国最強の集団と言えるだろう。


そして俺は一応ここの()()として働いている。


「おはようルークレンスさん!」


「ああ、おはよう」


そんな中、制服を着た1人の可憐な少女が俺の事を呼び、大きな声で元気に話しかけてきた。

長いリボンで整えられた赤い髪に、風を思わせる淡い薄緑の瞳。そして天真爛漫の子供のような笑顔でこちらを見ている。


「何食べてるの?」


「今朝、来る途中に買ったリンゴだ」


「えーいいなー!おいしい?」


その少女は俺の食べるリンゴをじっと羨ましそうに指を加えて見つめている。


「…1つ食べるか?」


「やった!いただきまーす!」


俺はその少女にリンゴを1つ与えると、その少女はニコニコしながらリンゴを速攻で受け取り、そのリンゴにかぶりつく。


「ちょっとルメア!登校中になにしてるの!」


「あ!おはようシンディ!今ルークレンスさんからリンゴ貰ったんだけど、これすっごく美味しい!!」


「ルークレンスさん、おはようございます」


「ああ、おはよう」


その時、俺たちの後ろから2人目の新しい少女が赤髪の少女と俺に言葉をかける。

派手な金色の長い髪にその髪と同じ金色の目。高貴な立ち振る舞いにお嬢様のような上品さが目立つ。


リンゴを美味しそうに食べる元気な赤髪の少女はルメア、もう1人のお嬢様のような金髪の少女はシンディといい、2人ともこの育成学校に通う騎士の卵だ。


「シンディも食べてみなって!ルークレンスさん!シンディにも1個分けてあげてよ!」


「私は貴方と違って登校中にそんな下品な事は…」


ルメアはシンディに俺からリンゴを貰うように目をキラキラさせているが、シンディはふんっと顔を仰け反らせて腕を組んでいる。


だがシンディの目は俺が持っているリンゴをチラチラと横目で見ている。

ルメアが美味しそうに食べるから気になっているのだろうな。


「…食べないのか?」


「…まあ!ルークレンスさんやルメアがどうしてもと言うなら1つ頂きますよ!」


俺がシンディにリンゴを差し出すと、シンディはパッと俺の手からリンゴを受け取り1口齧る。


「…!あら、本当においしいわね…」


「でしょ!このリンゴ美味しいんだから!」


正直このリンゴは美味いとは思うが、なぜルメアが胸を張ってシンディにドヤ顔を見せているのだろうか。


「お前ら、こんなとこで道草食ってて大丈夫なのか」


「あ!今日は朝イチから騎士団の人達と合同訓練の日だった!」


「はぁ、走れまだ間に合うわよ」


「なら急がないと!それじゃあまたね!ルークレンスさん!」


「まったく…。では失礼しますルークレンスさん」


「ああ、頑張れよ」


ルメアは俺に手を振りながら、シンディは俺にお辞儀をしてから、2人は急いで建物に向かって走って行った。

シンディはともかく、ルメアは朝から騒がしい奴だ。


「おはようございます、ルークレンスさん」


「ごきんげんようルークレンスさん」


「おっはよー!」


「ああ、みんなおはよう」


男女の生徒たち、そして騎士団の騎士たちが俺に向けて朝の挨拶をしてくれる。

俺も一人一人に挨拶を返しながらゆっくりと建物に向かって歩いていく。


「さて、俺も少し急ぐか」


俺は学園に向けてゆっくりと歩んで行き、建物の中へと入っていく。

中はとても広く、授業前の為多くの生徒たちが歩いている。


建物に入ってからも生徒たちは俺に挨拶を交わし、俺も答えるように挨拶を返しながら歩き、階段を登り、1つの部屋に辿りつく。


その扉を開けると中には大人の集団が集まっていた。

そこにいるのはこの学園で生徒たちを指導する教師たちだ。


「おはようございます!ルークレンスさん!」


「おはようございます、セレナ先生」


その集団の中の1人の女性が俺に近づき挨拶をする。

短く揃えられたオレンジ色の髪に、黄色に輝く瞳。

黒と緑のローブを羽織っているのに隠せない大きな双丘。そして大人の割には少し幼さを感じる可愛い顔立ちをしている。


「おそいぞアルディス・ルークレンス!みんなもう集まっているのだ!」


そんな中、黒いスーツをピシッと着こなした男性が俺に向けて声を荒らげる。


「すみません、ローラン先生」


オールバックに整えられた金髪に眼鏡の中からこちらを見る鋭い紺色の目。

少し威圧を感じるキリッとした顔立ちに堂々とした綺麗な立ち姿。


俺はローランに軽く頭を下げて謝罪し、適当にあしらう。


「まったく、貴様はいつもギリギリの出勤だな!毎朝5分前には来るように伝えているだろう!」


ローランは俺にガミガミと説教を垂れ流しながら俺の方に近づいてくる。

正直この人には毎朝怒られているような気がする。


「おい!聞いているのかアルディス!」


「はい、ちゃんと聞いていますよローラン先生」


「まったく!()()()()()()とはいえ、貴様はこの学園と騎士団の職員だろう!自覚をもってピシッとしろ!」


そう、ローランの言う通り俺はこの学園の教師としてこの場にいるわけではない。

俺はこの学園と騎士団の唯一の清掃員として働いているのだ。


「まあまあローラン先生、その辺で…」


ローランと俺の説教を見かねたのか、そばにいたセレナが俺たちの前にぎこちない笑顔を作りながら割り込んでくる。


「ま、まあ、セレナ先生がそこまで言うなら…」


ローランはセレナが割って入った事によりローランが俺に対しての説教を止める。


「いいかアルディス!明日こそ5分前、5分前だぞ!」


「はい、了解しました」


去り際にローランが俺に声を荒らげるが、俺はそれも適当に返してその場をあしらう。


「さーて、そろそろ始めてもよいかの」


知らぬ間に集団の前には1人の幼女が1番前にある大きな机の上に座っていた。

腰あたりまで伸びる琥珀色の髪に、その髪色よりも淡い瞳。

低い身長に子供のような無垢な顔立ちに、口には飴を咥えているのか白い棒が唇の間からでている。


「諸君、おはよう」


「「「おはようございます!リーリャ学園長!」」」


その幼女が挨拶をすると、俺を含めた全員がお辞儀をして挨拶を返す。

年寄りみたいな話し方をしているが、この幼女こそが育成学園の1番のお偉いさんである学園長である。

噂では何種類もの魔法を自由自在に操り、子供みたいな見た目のくせに歳は100を超えてるらしい。

ほんと世の中って不思議だよな。


「えー、本日は全学年騎士団と合流訓練がある。くれぐれも…」


そんな事を考えていると、リーリャが今日の授業の事についての説明や注意事項等を演説している。


「あと最後に、騎士団からの連絡事項じゃ。」


連絡事項の説明後にリーリャが少し困ったような眼差しを教師たちに向ける。


「最近、変な()()のようなものが流通しているらしい。もし何か知っていたり、見かけた場合は直ぐに騎士団へ連絡をしてほしいとの事じゃ」


薬物…確か昨日の奴も何か錠剤みたいなのを飲んで魔法を使っていたな。

何か関係がありそうではあるな。


「以上、今日も一日がんばろう」


「「はい!」」


リーリャの締めの言葉を聞いた後、ほとんどの教師達は部屋から出ていき授業のある場所へと向かって行った。


「ルークレンスさん!また後で!」


セレナも今日の授業があるのか、はたまた自分の研究室に用事があるのか部屋から出ていく。

ここの教師たちには研究室という名の自室が与えられており、そこでは各々自分のやりたい事をやっている。

例えば魔法の研究や、武器の生成、そして修行など。

人によって様々な形で活用されている。


「…あ、リンゴ配り忘れてたわ」


ま、いっか。

そう思いながら俺は部屋を出ようとする。


「待つのじゃ、ルークレンス君」


だがその時、部屋に残っていたリーリャが部屋を出ようとする俺に声をかけ、俺はその場で動きを止める。


「はい、なんでしょうか」


「よいっしょっと、」


俺がリーリャの方を向き要件を聞こうとすると、リーリャは机からぴょいっと飛び降り、俺の方に向かって歩いてくる。


「少し着いてきてくれんかの?」


そう言うとリーリャは俺の前に来て、付いてくるように言い部屋からでていき、俺もその後ろに付いていった。


そしてしばらく歩くと大きな部屋の扉の前に到着し、リーリャが近づくとその扉は勝手に開き出す。


「そこにかけてくれたまえ」


リーリャは部屋の真ん中にあるソファに俺に座るように支持し、俺はそのソファに座る。

そしてリーリャは俺の正面側にあるソファに座り、俺たちは向き合う形になる。


「ひとつ聞きたいんじゃが…」


そしてリーリャが俺に1つの質問を投げかける。


「お主、薬について何か知っているだろ?」


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