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9 おじいちゃん

 ライドさんが私の両親について聞いた瞬間、その場の空気がピリつくのを感じる。これは、良くない雰囲気だ。


「えっとね、両親は離れて暮らしてるんだ。ここについてはあんまり良く思ってなくて……」

「あー、ライドさん、ノゾミンのおじいちゃんとおばあちゃんにまだ会ってないんだ?おじいちゃん、すっごい魔術師なんだよ!ミリアにとっては憧れの存在なんだ。それに、二人ともお年寄りなのにすっごいラブラブなんだよ」


 私の話に、ミリアちゃんが慌てて話を被せてきた。


「誰がお年寄りだって?」


 突然、背後から声がする。みんな驚いて声のする方を向くと、そこにはおじいちゃんがいた。短めの白髪に青色のきれいな瞳、グレーのスーツをピシッと着こなしている。ああ、おじいちゃん今日も素敵!


「おじいちゃん!」

「おお、ノゾミ、元気だったか」


 おじいちゃんは私のそばに来ると、ライドさんに視線を向けた。ライドさんは一瞬驚いたように固まり、すぐにハッとして立ち上がる。


「あなたが、ノゾミ……ノゾミさんのおじいさまですか。初めまして。バレンド王国の騎士、ライド・アルベルトと申します」

「なるほど、最近ノゾミが拾ってきた新人さんか。どれ……」


 おじいちゃんがそう言うと、急におじいちゃんの周りにぶわっと強い風が吹く。皆が風にあおられ顔を腕や手で隠していると、風が止んでおじいちゃんとライドさんの姿だけが無かった。ああ、始まっちゃった。


「ライドさん、連れていかれちゃったね」

「ノゾミの爺さん、毎回あんなことしてんのか。飽きないな」

「俺が初めてあのじじいに出会ったとき、まさか何もないだだっ広い草原に飛ばされて力のぶつかり合いを行うとは思わなんだ。この世界に、あのような強い魔術師がいるとはな。さて、ライドはどこまで耐えられるか、ククク」


 みんな、おじいちゃんとの初対面では必ず、魔力や剣術などそれぞれの力がどのくらいあるのかを試される。そして、この世界でその力をむやみに振り回さないように制限をされるんだけど……ライドさんは騎士なんだよね、大丈夫かな?


 少し経ってから、また強い風が吹いておじいちゃんの姿が現れた。


「ライドさんは?」

「相当疲弊したようだからな、直接部屋へ送り届けた。騎士にしてはなかなかの根性の持ち主だ」


 フッと微笑むと、おじいちゃんはレオンの方を見る。視線を向けられたレオンは少しだけ眉間にシワを寄せて警戒している。


「手強いライバルの出現だな、レオン」

「……は?」


 レオンの眉間にますます皺が寄っていく。ライバルって、なんのライバルだろう?レオンは別にあっちの世界で騎士ってわけでもなさそうだったけど。強さの話?


「はぁー。何を言われたのか知らないけど、俺はあいつに負けるつもりはない」

「そうかそうか。それは楽しみだな」


 本当に、何のことだろう?みんなを見ると、ミリアはレオンと私を交互に見てワクワクした顔をしているし、ラースはニヤッと不敵な笑みを浮かべている。ノルンさんは片手を頬に添えて、まぁ、と嬉しそうに微笑んだ。何?みんな何かわかってるの?


「さて、新人との挨拶も済んだし、今日はこの辺でお暇するよ」

「え、もう帰っちゃうの?おばあちゃんは?一緒じゃないの?」

「今日はこっちに来てないからな。そのうち二人でまた遊びに来るさ」

「うん、ぜひ!待ってるね!」


 私の言葉に笑顔で頷くと、おじいちゃんの足元に魔法陣が浮かび上がり、おじいちゃんは光に包まれて消えていった。


「相変わらず神出鬼没だな」

「でもやっぱりおじいちゃんイケオジだよねぇ。紳士的だし、おしゃれだし。おばあちゃんが羨ましい」


 ミリアがうっとりした顔で言う。わかる、おじいちゃんイケオジだもんね。そんな素敵なおじいちゃんを射止めたおばあちゃん、すごすぎる。


 ふと、視線を感じて目を向けると、レオンがジッとこっちを見ていた。


「どしたの?」

「……いや、別に」


 そう言って、レオンは手元にあった缶ビールを飲む。なんだろう、さっきのおじいちゃんの話といい、わからないことだらけだと思った。


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