15 仲間
「アサシン……?」
「そ、えっと、暗殺者とか刺客とかって言えばわかりやすいかな。レオンは何も言わないしこっちも詳しく聞いてないけど、立ち振る舞いとかでなんとなくそうかなって思うんだよね」
ミリアちゃんの発言に、その場にいた他のメンツも皆同意するように頷いた。え、異世界人にはそういうの、わかるものなの?驚いて絶句していると、ミリアちゃんが渋い顔で話を続ける。
「レオンがアサシンとなると、そのレオンに殺すって言った男、レオンが暗殺してきた人間の関係者か、もしくはレオンを狙う組織の人間ってところじゃないかな」
「しかもその男を見てレオンの様子もおかしかったとなると、こちらに来る直前、レオンへ致命傷を負わせた人間という可能性もあるな」
ラースがそう言うと、ライドさんは盛大に眉間に皺を寄せた。心臓が、またバクバクと嫌な動き方をする。どうしよう、レオンの命が本当に危ないってことになる。
ふと、ラースさんが何かに気付いて突然姿を消した。えっ、と思った次の瞬間にはまた姿をあらわしたけど、そこには首根っこを掴まれたレオンもいる。
「レオン?えっ?どうしたの?」
「こいつ、勝手にどこかへ行こうとしていたから捕まえてきたぞ」
「……はっ?勝手に!?どうして……」
レオンを見ると、バツの悪そうな顔をして視線をそらしている。そんなレオンに、ミリアちゃんがあきれたような顔で声をかけた。
「どーせノゾミンの側にいたらノゾミンが危ないから、とか思ったんでしょう。ってかその前に、私たちはノゾミンのおじいちゃんに監視魔法で監視されてるんだから、逃げたところで見つかるでしょうに」
「それでも、ノゾミからは離れているべきだと思ったんだよ。……ノゾミを巻き込みたくない」
レオンが静かにそう言って俯くと、その場が静かになった。
「レオン、私のことを心配してくれるのはありがたいけど、勝手にいなくなるなんてしないでよ。私、レオンがいなくなったら心配で……」
「俺がそばにいるせいでお前の命まで危険にさらされるんだぞ!そんなの絶対にダメだ!」
「レオン……」
レオンの怒号に驚いて目を見張ると、レオンは私の顔を見て傷ついたような顔をして視線を逸らす。
「悪い……」
「あのさあ」
ミリアちゃんが腕を組んで口を開いた。
「レオンがノゾミンのこと心配する気持ちはわかるよ?でもさ、もうこれはレオンだけの問題じゃ無くなってるわけよ。私たちのようにノゾミンやおじいちゃんに助けられた異世界人だけじゃないってわかったんだもの。この場所だって特定される可能性はゼロじゃない」
そう言って、ミリアちゃんはじっとレオンを見据える。
「レオンはまるで一人で戦うみたいな口調だけどさ、私たちだっているじゃん。最強の魔術師、魔王、聖女、騎士。これだけのメンツが揃ってるんだから、ノゾミンを守れないわけないでしょ?」
「ミリア……」
「一体何があったかは知らないけどさ、一人でなんでもやろうなんて思わないでよ。何より、そんなのノゾミンが望んでないでしょ?これ以上ノゾミンに悲しい思いさせるつもり?そんなの、私が許さないんだから」
ふん、とノゾミンが鼻息を荒くすると、ラースたちも同意するようにレオンをじっと見つめている。レオンは頭をガシガシと書いて、小さくため息をついた。
「はあ、わかったよ。……迷惑かけることになって、本当に悪いと思ってる」
「そこはよろしく頼む、でしょ!」
「……ってぇっ!叩くなよ!」
ミリアちゃんとレオンのやりとりにその場のみんなが笑っているし、私もつられて笑ってしまう。よかった、ミリアちゃんのおかげで、いつもの雰囲気に戻っている。
「とりあえず、今後どうするかの作戦会議はまた明日朝に行うとして、レオン、ノゾミちゃんとちゃんと話をしたら?ノゾミちゃん、すごく心配してたの。安心させてあげて」
ノルンさんが優しく微笑みながらそう言うと、レオンは悲しそうな顔で私を見た。
「……ノゾミ、部屋に行っていいか?」
「……うん。ちゃんとレオンのこと知りたい。話せることだけでもいいから、聞かせて」




