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12 宣戦布告

そのまま逃げ切れず、部屋の前までついてきたレオンを私はしぶしぶ部屋の中へ入れた。


「それで、共用スペースで何かあったんだろ」


 静かに、レオンが尋ねた。無理に聞き出そうとしない辺りがちょっと憎い。ふーっと小さく息を吐いてから、私は観念したように話し出した。


「えっと、ライドさんが明日のバイトが不安だからって会いに来て、部屋に上げるのもなんだから共用スペースでお茶しながら話してたんだけど」

「……うん」

「途中からなぜかレオンの話になって、レオンは異性だし、恋人でもないのに部屋に上げるのかって言われて、信頼してるからって言ったけどあんまり納得してない感じで」

「……ほう」

「ミリアちゃんたちに、私とレオンの仲を邪魔するのはやめろって言われてるし、離れ離れになった時にお互い辛くなるから異世界人とは恋をしないって私が言っていたけど、それでも別に恋人でもなくレオンのことを何とも思っていないなら、私を諦めたくない、意識させたいとかなんとか言ってて」

「……は」

「レオンのことをどう思っているのか、教えてくれと言われたの」


 これを聞いてどんな顔をしているのか知りたいけど、でも怖くてレオンの顔が見れない。いや、レオンのことだからきっと怒ってる。何馬鹿なこと言ってるんだあいつは、とか思って絶対怒ってる気がする。


「……それで、なんて答えたんだよ」

「それは……わからない、とにかくライドさんやミリアちゃんたちと同じように大切な人だって言って、とにかくその場から離れたくて、掴まれてた手をほどいて走って逃げてきた」

「は?手を掴まれてた?……何してんだよあいつ、クソッ」


 ドスの効いた声が聞こえてきた。怖い、やっぱり怒ってる。


「なんか、あれだよね、拾ってくれて世話してくれた相手を好きって勘違いしてるだけだと思うんだよ。それなのに、あんなこと言われてびっくりしちゃった、ははは」


 なんとなくいたたまれなくなって無理に笑いながらそう言ってレオンの顔を見てから後悔した。レオンがめちゃめちゃ真面目な顔で私を見てる。宵の明けの空のような澄んだ美しい色の瞳に吸い込まれてしまいそうで、私は思わず息をのんだ。


 レオンがゆっくりと席を立つ。そして、静かに私の横に来て、机に片手を置いた。そして、少しかがんで私の顔を覗き込む。駄目だ、そんな近距離、耐えきれない!思わずうつむくけど、レオンはその場から離れなかった。


「あいつをこの部屋に入れなかったのはいい判断だ。異性でも、俺だけをこの部屋に入れてくれるのは、ノゾミの言う通り信頼関係がきちんとできているからだって思う。その関係を築き上げるために、俺はずっと頑張って来た」


 レオンの低くよく通る声が耳にスッと入って来る。


「ノゾミが異世界人と恋愛しないと決めてることはなんとなく雰囲気でわかっていたし、いつもどこか見えない線をひかれていたこともわかってる。それでも、俺はノゾミが笑顔でいてくれればいい、この世界で楽しく幸せに暮らしてくれればいい。そして、俺はノゾミの側にいられればそれでいいと、本気で思っていた。でも」


 机に置いていた手がギュッと握られる。


「あいつがやってきてから、あいつがノゾミの心を揺らすたびに、俺の胸は苦しくなる。ノゾミの心にズカズカと土足で踏み込んで、ノゾミの心を乱すあいつが許せない。ノゾミを意識させたいだ?ふざけるなよ。俺がずっとしたくでもできなかった、あえてしないできたことを、あいつは簡単にやろうとしてる。……もうやめだ。今まで俺が我慢してきたこと、全部やめだ」


 どういうこと?驚いて思わず見上げると、レオンは私の頬にそっと手を添えてニヤリと微笑む。その微笑はあまりにも妖艶で、今まで見たこともない顔で、心臓がドンッと大きく高鳴る。


「俺はもう我慢しない。俺が我慢しているうちに突然やって来た奴にあっさりノゾミを奪われるくらいなら、俺はもう遠慮しない。俺だってノゾミを意識させる。俺が、ノゾミの心を奪って見せる」


 レオンの言葉に、どんどん全身の血が激流のように流れていくのがわかるし、顔が一気に熱くなる。どうしよう、絶対に顔が真っ赤だ。


「覚悟しておけよ、ノゾミ」


 そう言ってまた妖艶に微笑むと、私の頬をひと撫でしてレオンは私の部屋から出て行った。


「な、にが、起こったの……?」



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