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2分で読める短編(恋愛もの)

土曜日三時の散歩道

作者: 大崎真

同棲丸一年。遂に、拓人(たくと)とケンカをした。

内容はこうだ。


「脱いだ服、床に置いたままにしないでよ!」

「ごめん」


いつもはここで終わっていたが、さすがに丸一年は長過ぎた。


「何度も言わせないで!」

「…………」

「言いたくて言ってるわけじゃないからね! 言わせてる拓人が悪い!」

愛菜(まな)も……」


言いかけて言葉をつぐんだ拓人を、私は見逃さなかった。


「なに? 言いたいことがあるんだったら言えば?」

「食べ終わったお皿、すぐに流しに持っていかないじゃん。洗い辛いんだよ!」

「今それ言う? そん時に言えばいいじゃん!」

「言ってたわ! もうちょっと待って~って言ってスマホいじってて、いつもカピカピになってたんだよ!」


それで言い合いになって、口をきかなくなって二時間が経過……。

今まで、注意をされた方は謝る……の流れしかしたことなかったから、今回のケンカは初めてだ。


思えば、拓人は負けず嫌いだ。二人で勝負をすると、いつも、「俺の勝ちだな」と自慢げに笑っていた。

今回の拓人は絶対に謝ってこない気がする。

そんなことを考えていたら、三時になった。


土曜日の三時は、二人で散歩をして買い物をするルーティンになっていた。

拓人は黙って、いつものように玄関で靴を履きはじめた。気が重かったけど、私も靴を履いた。


しばらく、お互い黙って歩いてたけど、


「俺、この先もやると思うんだ」


と、突然、拓人が喋り始めた。


「一年も注意されてるのにできないなんて、無意識だ。なんか、もう、できる気がしない……」

「…………」

「俺、できないよ」


え? ちょっと待って。こんなことで私たち別れるの?

嫌だ。嘘だ。もう少し頑張ろうよ。


「だから、俺が愛菜のお皿をやるから、愛菜は俺の服をやってほしい」

「へ?」


意表を突かれた。

拓人は、じっと私の反応を伺っている。

私が怒ってる間、拓人は仲直りの方法を考えていたのだ。同様に腹が立つはずなのに――相当な愛を感じます。


素敵な発想とその愛に、思わず、ふつふつ笑いが込み上げてくる。

不機嫌だった私が思わず笑ったもんだから、拓人の表情も柔らかくなった。


「いい案だろ?」

「……はい」

「俺のこと、愛菜は腹が立ってただけだったろ?」

「……はい」

「俺の方が好き度は上だな」

「…………」

「俺の勝ちだな」


負けたけど、悔しいのか嬉しいのか分からないなぁと思う。

そして、『惚れた弱みじゃなくて、惚れた方が勝ち』。

お互いが幸せになる、なんて素敵な発想なんだろうと思った。

読んでくださって、ありがとうございました。

「小説家になろうラジオ大賞」の応募作品です。

「寝言」で恋人同志になったバージョン、「散歩」で仲直りバージョンです。もう恋愛ネタがありません。

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― 新着の感想 ―
うわぁ… あるあるネタをこうして解決するなんて! こんな提案されたら、うん。か、はい。しか言えないですね。 しかも好き度で勝ち負けに持っていく。 策士ですな。 面白かったです! ありがとうございま…
すごく心配したけどナイス提案だーって目からウロコでした♪ 一緒に住んでる相手と喧嘩した時のあの空気って、すごい重たいですよね(´Д⊂ヽふたりが早めに仲直り出来て良かったぁぁ。 とても良いお話、読ませ…
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