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もしも過去を変えられるなら  作者: 空西 結翔
第二章 未来の君から過去の私へ
6/17

2ー2

 容疑者の少女は何度か自殺をしようとしたという。しかし、その全てを彼女の恋人に止められたと話していた。


 なぜそんなにタイミングよく恋人が現れたのかについては分からなかったが、その人についても大分気になるところだ。


 閑話休題して、容疑者が自殺しようとした理由を聞いたところ、被害者を殺した自分が恋人の隣に立っていいはずがないと思ったからだと言う。しかしなぜ、その道を選んだのだろうか。自身が犯人だとバレていない現状なら嘘を隠し通して付き合うことだって可能だったはずだ。


 もしかすると、彼女のプライドというか、良心なるものがそれを許さなかったのかもしれない。とはいえ、良心があったのならば人を殺すようなことはしなかったに違いない。事件のきっかけとなったイジメに対し、また別の解決方法がなかったとは考えられない。


 万一にも別の解決法がなかったのだとすると、イジメが何らかの形で取り返しのつかないものへと変わってしまった可能性も考えられる。そのイジメというものが容疑者の恋人へのイジメなのか、被害者へのイジメなのかは分からないが·····。





 色々と調べていたそんなある日、とんでもない出来事が起こってしまう。


 事件についてまとめて考察していた紙が、次の朝に起きると、全て机の上から消え去っていたのだ。


「どいうことだ·····?」


 寝ぼけていてどこかに置き忘れただけ?

 それとも泥棒が入ってきた?


 私の頭にはあの容疑者の少女の顔が浮かんでくる。まさか彼女には知られたくないことでもあってそれを隠蔽するために·····?


 いや、彼女は今施設の中だ。そこから抜け出して家を特定するだなんて出来るはずがない。




「全て戸川さんがやったことです」


 家の中に見知らぬ男の声が響いた。声がする方を向くと、スーツを着た見知らぬ男が立っていた。


「ど、泥棒·····!!」


 情けなくも腰を抜かしてしまう。こいつが事件についてまとめた紙を盗んだのか?


「私は、戸川さんの担当になりました、志木です」


 志木と名乗る男は、腰を抜かして床に手を付く私に名刺を見せてきた。


「時間救出隊?」


「はい。未来の戸川さんはとあることをキッカケに自殺しようとするのですが、それを食い止めるために過去へと戻る選択をされたのです」


 言っている意味が分からない。過去へ戻るだと?


「にわかには信じ難いが、その未来の私はなぜ自殺を図ったんだ? まるで私が今この事件について調べていることが間違いであるかのような言い方じゃないか」


 紙を盗んだのは未来の自分? だとすると、これまでの調べがやはり何かの真実に繋がっている、そう言っているようなものだ。


「戸川さん。お二人を会わせるわけにはいかないので、この時間を超える携帯を通して会話してもらいます」


「会話って、未来の私と話せるという意味かい?」


「左様でございます。私は未来の戸川さんに仕えている身のため、今の戸川さんに決定権はありません」


 決定権がないなど全く関係ない。なんせ私も聞きたいことがあるのだから。


『·····もしもし』


「随分としわがれた声だな。お前は何年後の私だ?」


『具体的な数字は言えない決まりになっているが、数ヶ月後の私だ』


「なぜ自殺を図った? 未来の私が処分してしまった紙に何かしらの原因があったということなのだろう?」


『·····べきじゃなかったんだ』


「何だって?」


『あの事件について調べるべきじゃなかった。真実は想像よりも遥かに残酷で恐ろしいものだった。もう二度と思い出したくもない』


 声が震えている。恐怖を植え付けられたかのようなそんな震え方だ。


「おい。それはどういう意味だ!? 何があったのか教えてくれ!」


『できない。過去の私の行動を変えることはかなりのリスクを背負うんだ。バタフライエフェクトのように、どんなに些細な行動でさえ多大な悪影響を及ぼす可能性がある。それこそ誰か別の人が殺される可能性だって·····』


 つまり、未来の私は過去の私に·····。


「つまり、事件をもう調べるんじゃない、とお前は言いたいのか!? 記者としての覚悟はどこへやった!? 私はそれほどまでに無能だったのか!?」


『ダメなんだ·····。あの事件はもう誰も触れるべきじゃないんだ·····』


「一体、私の身に何があったというんだ·····」


『二度とこの事件には手を出さない。そう約束してくれるならこの事件の真実を全て話そう。どうだ?』


 全ての工程をすっ飛ばして真実を聞けるというのはなんとも耳寄りな話だ。だが、二度とこの事件に関われない。つまり、それが本当の真実かはこの目で確かめられないということになる。


 かと言って、真実を聞かずに調査を続けたら、未来の私のようにまたいつか自殺を図るのだろう。そしてこれが永遠とループされる。誰かがこの無限ループを断ち切らなければならないのだろうか。


「分かった·····。二度とこの件には関わらない。約束する。この事件の真実を聞こうじゃないか」

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