表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/106

覚醒


「うううぉぉぉぉぉぉ!」


薄い氷が浮かぶ・・酷寒のトーラス大河! その水面が突如として盛り上がり、そして出現するは熊のような巨体!

それはまるで某怪獣映画の如く・・・


「キヨウラめ~! よくもやってくれたな」


戦場を赤く染める爆炎を背景に・・その巨体は咆哮した。

エルドラート王子の母方の祖父にして巨漢の男・・・ソガラ公爵。

(プライバン伯やデルテ二ア邦伯によって囮役にされたことなど、まったく気づいていない)


重い鎧を水中で捨て、力強い肉体、上半身をはだけさせたまま、キヨウラ公国軍が陣取る川辺に、たどり着き、彼は一人立つ。

そう、他の者はいない。公爵・・・ただ一人!

それは・・トーラス大河のあまりの寒さ! 落ちた兵士たちはその瞬間・・身体の熱を奪われ溺死してしまう。川辺にたどり着けない。

そう、大河に落ちた兵士たちは全滅したのだ。


だが、ソガラ公爵は違っていた。彼の肉体は強靭だ。半裸であっても寒さを感じない。

それどころか・・闘争本能によって身体は燃え上がり蒸気を噴き出す・・・まるで蒸気機関車のごとく!


そう、彼の目前には闘争すべき獲物・・彼の魔導騎馬隊を壊滅させた憎き魔導兵器・ゴーレム6体が立ちふさがっていたのである。



もちろんソガラ公爵は戦いを挑む。

味方の兵士がいなくても・・単独で戦い続ける。やられたらやり返すのだ! これぞ軍人魂! 貴族魂! 



「よくもよくも我の騎馬隊を・・・借りは返させてもらうぞ」


ゴーレムもかなりの巨体で190セトル(センチ)ほどの身長だが・・ソガラ公爵もほぼその大きさ!

(1 Vs 6)の巨漢たちは殴り合いをはじめたのである。 

しかも素手で! 武器も持たず! 肉体言語のみで!


ドス! ガス! ドスン!


あのノアでさえ苦戦したというゴーレムを、なんと6体同時に相手にして・・しかも互角! 

身体強化してるとはいえ、このソガラ公爵の身体はもはや・・・人ならざる者なのか!?


ドス! ガス! ドスン! 


フットワークをいかして、ゴーレムたちを翻弄!

連打にフック、さらにストレートで応戦、その動きは疾風のごとくジャブ! ジャブ! ジャブ!

ゴーレムたちからの反撃をよけきり・・さけきり・・時にはブロックをしながら・・・

狙いを定め、会心の一撃、アッパーカットを放った。


ズドォォォォン!


その衝撃で赤い動力液が噴水のごとく吹きあがり雨のように降らす。

ゴーレムの頭部! 鉄の頭部が砕け散り破片が周囲に飛び散ったのだ。


「まずは一体!」・・・低く響く公爵の声。あくまでも冷静だ。


あの強靭な鉄の身体を、魔導も使わず、パンチ力だけで破壊したのだ。ソガラ公爵の実力は恐るべし



ドス! ガス! ドスン! ズドォォォォン!


そして・・再び響き渡る轟音。赤い血(動力液)が地面を染める。

そう、二体目のゴーレムも同じ運命を辿り、地面に崩れ落ちたのだ。


6体いたゴーレムのうち、2体が撃破される。

公国軍にとってこれは予想外の緊急事態! しかもたった一人の存在によって・・・


-- -- -- -- -


ノアたちは、サテライト魔法によって、ゴーレムたちの現状を知った。

「あのゴーレムを撃破するなんて あの大男・・いったい何者!?」


困惑の声を上げるノア。

だが幸いにも・・王国軍の左翼部隊を退却させたところだったので、彼女たち(ノア、コサミ、シルン)は急ぎ現地へと走った。


「行くわよ、コサミちゃん。油断しないで。あの大男、接近戦では危険すぎる。遠距離から仕留めるのよ!」


「はい、ノア様」

コサミちゃんは少し緊張しながらも、しっかり頷いて返事をした。




現地に到着すると・・ノアたちは、思わず息を呑む。

より深刻な状況となってしまっていたからだ。


なんと、ゴーレムがさらに一体撃破され、・・・残り3体!

このままでは、ゴーレム隊が全滅してしまう。


ノアたちは謎の巨漢、大男の背後・・およそ100ルトメ(メートル)ほどまで接近し、岩陰に隠れる。

あの大男には気付かれていないようだ。ノアは、ほんのわずかに安心した。


「いいね! ここから撃つわよ! 敵の背中を狙う」


視界の先では、あの大男がゴーレム3体と殴り合いを続けていた。

そう、大男の注意がゴーレムに向けられているのだ。今が好機のはず! 卑怯もへったくれもない。


『 ここからなら・・わっちの "魔動拳"も有効っす 』

シルンちゃんの自信に満ちた声、その隣でコサミちゃんは小さく震えていたものの、頷き準備を整える。


「攻撃開始!」

ノアは低い声で静かに合図をした。



-- -- -- -- -- -- -- -- -- --



半裸の大男・ソガラ公爵は嵐のごとく猛威を振るう。

彼の拳は連続パンチに連続ジャブ! 連打連打で押しまくる。


「おらおらおらおら!」 バッシ!バッシ!バッシ!


その叫びと共に鉄拳が炸裂し、圧倒的パワーでゴーレムたちを追い詰める!

しかし、公爵の背後は無防備、ガラ空きなのだ。


チャンス!


大量の・・黒く甘い物体が上空を飛行、ソガラ公爵の背中に向けて飛翔していく

それはチョココーティング! ノアが放った"ホイホイ"的拘束魔法なのだ。



しかし、その甘い香りに感付かれたのか、大男・ソガラ公爵は即座に振り向き、怒涛の連続パンチを放つ!

 

ドッドドドドッドドドド!


ノアの放ったチョココーティングは・・公爵の圧倒的パワーによって粉砕され、瞬く間に雲散霧消してしまった。

かなりの熱量によって蒸発してしまったようである。


「ま、まさか! うちのチョコが・・」

ノアのホイホイ的拘束魔法が命中する前に、飛翔中に防がれた・・・こんな防がれ方は始めて! 



だが、その瞬間、大男・ソガラ公爵の背後にゴーレム3体が迫る。絶好のチャンス! 背後がガラ空き!

トリプル・ゴーレムパンチを繰り出すのだが・・・残念!

公爵は・・即座に立ち位置をかえ 当然のように回避した。


その超人的な身体能力に、ノアはただただ驚かされるばかりだった。



コサミちゃんの繰り出すアイスジャベリンの方は期待通り・・ではなく、やはりというべきか通用しなかった。

公爵は正面にて、ゴーレム3体を相手しながら、その合間に軽く後ろ蹴りだけで 巨大な氷の槍・アイスジャベリンを迎撃したのである。


「な、なんて・・・」


驚きのコサミちゃん! そんな中、シルンちゃんは僅かに前に出る。


『 わっちに任せるっす! 』


自身ありげな発言! それは確かに有効な技であった。

そう、シルンちゃんが放ったのは" 魔動拳 "・・念動力というべきサイコキネシスパワー!

有効射程距離は200ルトメ(メートル)で・・敵を射程内にとらえている。


バッシュ! バッシュ! バッシュ!


エアーパンチというべき連打攻撃! 何もない空間から繰り出されるパンチのような念動力鉄拳・・・

しかも見えない! まるで透明人間からの攻撃!?


そう、あの大男・ソガラ公爵ですら面食らってるようだ!

反撃もままならない! いや! 反撃すらできない不可解の攻撃に圧倒され・・・公爵は一旦後ろに下がり距離をあける。



『 ふっ 手応えありっす! 』

シルンちゃんはしたり顔なのだが・・勝負はまだ決まっていない。 


あの大男・ソガラ公爵を倒してもいないし・・逃げてもいない。

一旦引いて・・周りの様子を窺っているだけなのだ。

まだまだ戦意は旺盛、戦闘意欲は衰えていない。



-*- - - - - - *-


ノアは岩陰に隠れながらも初めて、あの大男・驚異の身体能力を持つソガラ公爵の素顔を遠くから確認できた。


「熊のような姿・・熊のような容貌・・・どこかで・・どこかで・・」


その刹那、胸の奥底に、奇妙な感情!? わだかまり!? いや! 怒りが湧き上がってきた。


これは・・敵意! 殺意!

無性にあの大男を殺害しなければならないというような感覚・・義務感


「これはいったい!? まさか・・・」


ノアはこめかみを押さえ、混乱する思考を必死に整理しようとした。

うちは記憶を失っている。過去のことなど、何一つ覚えていないはず。

それなのに・・・それなのに・・・


ノアの目から・・・涙がこぼれてきた。

なにか・・なにかが・・


失われたはずの記憶の中に、あの大男の姿が浮かび上がってきたのだ。

あまりの憤怒ゆえに記憶から蘇る・・忘れられるはずもない憎き姿。


「奴だ! 奴だ! あれは・・キヨウラのおじい様の敵! 仇! ゲルンラン城伯と共におじい様を陥れた敵、敵、敵! ソガラ公爵!」


ノアの声は震え、怒りがその言葉に宿る。ノアは記憶を思い出した。

全て思い出したのだ! 嫌なことも良いことも全て・・


奴! あのソガラ公爵は・・うちに対して" 薄汚いキヨウラの娘 "と公然と侮辱した。

しかも・・・"お前は必ず追放する! この王宮にそぐわない、汚物は排除する"とまで言ってのけたのだ。


ノアの心に深い屈辱と悲しみを刻む。

そして、その感情は次第に怒りへと変容していく。彼女の瞳には、憤怒が宿り、その怒りは決して消えることはない。


そう、そうよ! うちは復讐をする!

うちは・・・・"カイラーナ・ノン・コハヤシ・フィレノアーナ"

このカイラシャ王国の王女なのよ! 

うちは王族として、貴族として・・あの憎き"エルドラート王太子"の一派を殲滅、滅亡、皆殺しにする!

これは正義! これは高貴なる使命!

あの優しかった"キヨウラのおじい様"のために・・・義務を果たす。



遠くで、こちらを睨む大男・ソガラ公爵!

その姿を見たノアの表情は、邪悪な笑みに変わる。


奴はエルドラート王太子の祖父であり、キヨウラ最大の敵!

イジャル君にとっても、憎きべき宿敵なのだ。


ノアの体から吹き出す負のオーラは、黒く、どす黒く、まるで魔王そのもの!


「ノア様!」『ノア様! 』

コサミちゃんとシルンちゃんは、心配そうに声をかけるが、ノアの耳には届かない。


「殺せ! 殺せ! 抹殺せよ!」

ノアの声が重く冷たく、周囲の空気を染め上げていく。


-- -- -- -- -- 


立ち上がった! ノアは立ち上がり迷いなく駆け出す。

片手には・・撲殺用魔法杖"ブラッディ・マリー"を掲げ・・その目には復讐の炎が宿っていた。

もちろん、目的はあの大男・ソガラ公爵の撲殺!


コーヒーバブルボムを乱射しながら、ノアは駆け走る。その後を慌てて追いかけるは・・コサミちゃんとシルンちゃん。

二人(一人と一匹)の表情には不安と驚きが入り混じっていた。



一方、ソガラ公爵は爆炎の中にいた。咲き乱れるようなバブルボムの嵐! ノアによる問答無用の乱射なのだ。

噴き飛ぶ瓦礫、土砂、轟音・・それはまるで多連装ロケット弾に撃ちこまれた如く!


これほどの熾烈な攻撃!

さすがのソガラ公爵も命の危険を感じ・・後退を余儀なくされる。

いったい何が起きているのか!? 理解が追いつかないのだが・・・

ただ一つ、こちらに向かってまっすぐ突進してくる少女が・・全ての元凶だと悟った。


「いや待てよ・・あの少女! 髪の色は違うが・・まさかフィレノアーナなのか!?」


・・・と公爵が思考した瞬間、凄まじい突風が真横から吹きつける。

その風はあらゆるものを吹き飛ばす圧力を伴っていた。


ゴッゴゴゴゴゴゴゴゴ



それは・・・ゴーレム3体による"突き出し"攻撃・・・

強大な剛腕によって、大量の空気を前方へ押し出す空気砲!


そう、あの魔導騎馬隊を撃破した技が再び行使されたのだ。


「しまった! 我としたことが・・」


公爵は・・ノアに気を取られ、ゴーレムたちの動き、"突き出し"攻撃の初期動作に気づかなかったのである。



--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ