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魔導騎馬隊


西側・・キヨウラ公国軍1万5千

東側・・カイラシャ王国軍3万

このトーラス大河に架かる唯一の大橋(ルヴァ大橋)を境にして両軍は対峙していたのである。


橋の中央付近では、散発的な小競り合いが続いていたものの、どちらの軍も相手の出方を窺い、攻勢に出る気配はない。

特にカイラシャ王国軍の動きは慎重であり 橋の向こう側で睨むゴーレムたちに対して 強い警戒心を抱いていたのであった。



---- 陸月の下3日(1月24日) 朝方 ----



カイラシャ王国軍側陣営に、不意に広がるざわめき。

その原因は・・一軍の姿!

陽光を受け輝く多数の甲冑、その間を流れるようにはためく幟・・・そして、その先頭を白馬にまたがる一人の巨漢

その堂々たる姿は一瞬にして兵士全員の視線を奪った。


王国軍側に新たな援軍が現れたのだ。

それは・・かつて王太子だったエルドラートの母方の一族・・・

そう、エルトラードからみれば祖父に当たるソガラ公爵率いる魔導騎馬隊2千! 

東の領地から 急ぎ駆けつけてきたのである。


彼らは・・公爵ご自慢の騎馬隊にして公爵の出せる最大戦力、それは名実ともに、公爵家の威信そのものだった。



しかし、その公爵の胸中は穏やかではない。

孫であり、王子でもあるエルドラートを救いたいという熱い思い!

それと交じり、彼を再び王太子の座に戻したいという野心的な願望。

その胸中には、愛情だけでなく、家門の誇りと政治的な野心も渦巻いていた。


そして、このソガラ公爵こそが、かつて王太子だったエルドラートを傲慢にし、その横暴を助長させた元凶とも言える存在であったのだ。




ちなみに・・・この戦地にソガラ公爵を引き込んだのは・・デルテ二ア邦伯の根まわし、計算ずくの計画!

もちろんプライバン伯を始めとした参謀たちにも了承されており、しかも次に始まる作戦の一環でもあったのだ。


ただし、デルテ二ア邦伯自身は・・できるだけソガラ公爵との接触をさけ、距離をとることにした。

邦伯がエルドラード王子を裏切ったということを、公爵が知っているかは不明だが・・・一応、念のため顔を合わさないようにしたのである。


" わたくしとしての懸念材料は・・エルドラート王子の親族、母方にあたるソガラ公爵家の動向だ。

この公爵家はわたくしからすれば敵! 貧乏くじを引かせてやるしかない! "



-- -- -- -- -- -- -- -- -- --


大地を揺るがす馬蹄の音と共に魔導騎馬隊の先頭・・白馬から降り立つ人物。

見るからに熊のような巨漢、圧倒的な存在感と風格

彼こそが、エルドラート王子の祖父にあたるソガラ公爵なのだ。

(ただし・・王子と祖父の容姿はあまり似ていない)


「これはこれは、ソガラ公爵殿。お久しゅうございます」


公爵という上位貴族の到来に・・司令官プライバン伯は一歩前に進み出て深々と一礼し、丁寧な言葉で迎えたが、公爵は大きく手を振り、その言葉を遮った。


「そのような挨拶は無用だ。我の目的はただ一つ、王都ルヴァへ向かい、エルドラート王太子を救援すること!」


公爵の声は揺るぎなく、その表情には確固たる決意が浮かんでいた。

彼にとって、孫であるエルドラートは今でも王太子であり、ルヴァもまた守るべき王都だったのだ。


「ですが公爵殿・・・我らは今、苦境に立たされているのです」

プライバン伯は公爵にも見えるように ルヴァ大橋向こう側のキヨウラ陣営を指差した。


「敵のキヨウラ軍は、このルヴァ大橋を占拠し、我らの行く手を阻んでいるのです」


「あれが、あのキヨウラか!」

ソガラ公爵は眉をしかめ、怒りのこもった声を吐き出した。

「忌々しい・・・どこまでも 我の邪魔をするのだな」


彼の言葉には、ただの敵意だけでなく、深い深い確執の影が滲んでいた。

そう、ソガラ公爵家とキヨウラ家の争いは今に始まったことではなく、先祖代々にわたる因縁であったのだ。


「それで、我をここへ呼び寄せたというわけだな」

鋭い視線をプライバン伯に向けるソガラ公爵。


「はい、ご明察の通りでございます」

プライバン伯は静かにうなずく。その口元にわずかに浮かんだ笑みは、計算された策士そのものだった。

「ぜひとも公爵殿のお力をお借りしたい」


それを聞いた公爵は短く鼻を鳴らし、不敵な笑みを浮かべる。


「ならば良い。辛うじて生き残ったキヨウラ一族の・・・イジャルと名乗る輩に 最後の引導を渡してやろう」

公爵の目には決意の炎が宿り、その言葉には凄まじい威圧感が込められていた。




-*- - - - - - *-


会戦を仕掛けるは休養をいれ二日後の早朝、霧がトーラス河川一帯を覆い尽くし、視界がほとんど閉ざされる時間帯。

王国軍はこの自然の恩恵を最大限に活かすことにしたのである。



作戦はいたって簡単、突破と確保!

その先陣に立つは、ソガラ公爵率いる2千の魔導騎馬隊である。

彼らの目標はただ一つ。ルヴァ大橋を突破し、橋の向こう岸に待ち構える公国軍とゴーレムたちに一手をかける。

この霧を利用したいきなりの奇襲攻撃なのだ!

上手くいけば。敵陣に混乱と恐怖をもたらし潰走するであろう。


「進め・・突進しろ! 我に続け!」


橋を守るはキヨウラ公国軍の兵たちだが・・

その背後にひかえるはゴーレム隊6体、霧の中で不気味な影を落としている。


しかし・・・ソガラ公爵率いる魔導騎馬隊は恐れない!

馬蹄を響かせ、橋全体を揺るがせながら・・一挙にかけぬけていくのだ。




-- -- -- -- -- -- -- --


「敵軍! 突っ込んできます」

「槍隊、構えよ!ここで奴らを食い止めるのだ!」


公国軍側の兵たちは、にわかに騒ぎ出す。


しかし・・霧のため視界は不良、王国軍の姿は未だ定かではないとはいえ、

迫りくる蹄の音と地面を揺るがす振動だけで・・・敵の大攻勢だと理解できるであろう。


キヨウラ公国軍前衛部隊の兵士たちは一斉に立ち上がり・・手に持った槍を突き出した。

これがいわゆる槍衾! 騎兵突撃に対して もっとも有効な陣形なのだ!

鋭く尖った槍先がずらりと並び、前面に押し出す!


「奴らを串刺しにせよ!」


「「うおおおっぉぉぉぉ」」


兵士たちの雄叫びは、空気全体を震わせ、迎え撃つ者たちの覚悟を如実に示した。



だが、そんな覚悟、槍の脅威など、意に介さない猛進集団が・・霧の中から出現したのである。


それはソガラ公爵家の魔導騎馬隊、圧倒的な存在感を放つソガラ公爵家の象徴!

もちろん、槍衾など想定内なのだ!


彼らの身体・・・騎兵も馬も含め全て、魔導によって身体強化されていた。

鋼のごとき筋力と防御力を備え・・通常の槍など、ものともしない。


ガキッキキッィィン!


耳をつんざくような金属音が響き渡る。

剣山のごとく鋭い槍衾・・槍隊が魔導騎馬隊に接敵したのだ。


叫び、悲鳴、怒声!


柄が音を立てて砕け散り、鋭い破片の数々が空を舞い散っていく。

槍が通用しないのだ! 戦場に衝撃が走る


「なっ・・・!」「ぐうっああああ」

鋭き槍を抱え持つ彼ら兵士たちは、目前の現実を疑いながら、次々と地に伏し赤く染まっていった。


公国軍の最前列が突破されたのだ。

鋼鉄のような身体を持つ騎馬隊の突進は、槍衾など問題にもならなかったのである。




「なんと…!」

公王イジャルは、槍隊壊滅の報を聞き、思わず立ち上がった。

その手には無意識に黒き剣を握りしめている。


"まさか!"というべき衝撃に動かされ、今にも走り出しそうな勢い・・

しかし、イジャルは深呼吸をひとつつき、なんとか踏みとどまる。


「そうだな! ここは・・あのゴーレムたちの出番だ。突進せよ。いけ!」


号令をかける公王の声。

その声に応じて、6体のゴーレムが一斉に動き始める。


彼らゴーレムたちの姿は、威圧感に満ち溢れ、圧倒的なパワーを放つ!

まるで甲鉄のレスラーのようだ。


このゴーレムたちは、かつてキヨウラ討伐軍に参加していたレプシロン製のものとは異なり、"千手観音モード"にはならない。

その改良版であり戦闘特化型なのだ。

そう、彼らはパワーファイター、その強力な力で敵を圧倒する。


『 どすこい! 』『 どすこい! 』


人の声とは異なる無機質な機械音声を発しながら・・・突き出し!、突き出し!を放ったのだ。


強大な剛腕によって、大量の空気を巻き込み前方へと押し出すパワーは、まさに脅威!

ソニックブームのような衝撃波が前方へと広がり、全てを吹き飛ばす空気砲なのだ。


そして、その矛先は霧の中・・ルヴァ大橋を突破してきた魔導騎馬隊へと向けられたのである。





--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)


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