ゴルーナ丘の戦い(増援)
ノアたち箒組によるアフターバーナー全開、しかも超低空飛行! ついでにソニックブーム!
そう、彼女たちが通り過ぎた後には、ペンペン草すら生えないのだ!
全てを破壊し粉砕・・兵士たちの死体が転々と横たわる。
何ということなのだ・・壊滅! まるで魔王のごとく所行。
「いったい何が・・!」「そ、空から襲撃されたのだ」「うっうわわぁぁぁ」
魔導師隊を含め・・王国軍のど真ん中に大打撃! 軍全体の統率が揺らぐ。
正規軍の兵士たちでさえ逃げ腰となり、今にでもタガが外れかねない。
王国軍司令官・シラヤ子爵は自軍の実情に悲観した。
" くっ! あの空飛ぶ魔導師によってこれほどまでに・・・いやまてよ! あの魔導師は・・奴! フィレノアーナ王女の疑惑も!
もっと警戒すべきではなかったのか! "
だが、ここで悔やんでも仕方がない。
もはや後には引けないのだ。撤収など不可能。王都に戻る術がないからだ。
ならばならば、奴を倒す! 公王と名乗るイジャルとやらを・・・
「突進! 突進せよ! あの黒き戦士を討ち果たすのだ・・しからば我が軍は大勝利!」
シラヤ子爵の声は、叫びのように響き渡った。
だが・・兵士たちの反応は悪い。返答をした兵士たちは極少数で声も小さかった。
それでも子爵は・・これに賭けるしかないのだ! 公王イジャルの首を取る!
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魔弾が空を切り裂き、弓矢が雨のように降り注ぐ中、キヨウラ公国軍は、王国軍の最前列・前衛部隊へと駆け走り、激突する。
その勢いは尋常にあらず修羅の如く(ノアによる身体強化が原因か?!)
剣と剣、槍と槍、鉄と鉄・・激しくぶつかり合い火花が散る。
怒号と悲鳴が交錯するたびに、多くの血と肉が弾け飛ぶのだ。
ここはまさに地上の地獄。弱肉強食の世界。
強者のみが正義なのだ!
「真横から斬り込め! 突進突撃~!」
エル兄弟率いる抜刀連隊が、王国軍の左翼側面に回り込み突入! 切り崩す。
または、かつてアリツ砦の司令官だったサリュマも、ここでも一軍を率い、王国軍右翼へと襲い掛かった。
そして、黒き鎧に身を包んだ公王イジャルは、最前線に立ち・・突進!
彼の気迫と剣技によって、王国軍中央集団を蹴散らす。
三日月殺法! 一刀両断でダース単位で吹き飛んでいく王国兵!
「ノア様のおかげで・・戦いはだいぶん楽になったというか・・僕の出番がなくなりかけている。
せめて・・敵将の首ぐらいは取らねば・・」
公王イジャルの持つ黒き剣は赤く染まり・・・地面に滴り落ちる。
そして、彼の目は遠く離れたシラヤ子爵・・華やかな鎧をきた人物の姿を捕らえた。
それはおそらく・・・敵の総大将!であろう。
明確な狙いが定められたのだ。
イジャルは猛ダッシュ・・駆け走る
立ちはだかる敵兵は容赦なく薙ぎ倒す・・・ダース単位で!
黒き鎧に黒き剣! たとえ小柄であろうと、その威圧感はまるで巨人の如し。
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イジャルの突進を見たシラヤ子爵は、一瞬の動揺を隠せなかった。
しかし、すぐに冷静さを取り戻し、自らの剣を抜き放つ。
「来たな、黒き戦士よ! 我が剣の前に屈するがよい!」
だが、勝負は一瞬で決まったのである。
両者の力量(剣技)に、あまりの違いがありすぎたからだ。
子爵の視界は一瞬にして赤く染まり・・・そして、考える暇もなく永遠の眠りについた。
「敵将の首を討ち取った成り」
黒き戦士・・公王イジャルの声が戦場を駆け抜けた。
そう、子爵の思惑とはまったく異なり・・・自分の首を差し出してしまったのである。
戦いの勝敗は決した!
司令官シラヤ子爵が討ち取られるやいなや、王国軍は動揺し・・そして一斉に逃げ出したのである。
だが容赦などしない! 公王イジャルは即座に追撃を命じる。
「一人たりとも逃がすな!」
できるだけ敵の数は減らしておきたいものだ。
だが・・・その時、不意に風を切る足音!
猿の影忍の一人(一匹)が風になびく毛だまりを背に駆け込んできたのである。
それはどうやら緊急報告! 猿忍の顔には焦りの色が濃く浮かんでいた。
「ご注進! ご注進! 東方50ロキルに・・新手の王国軍を確認! その数3万」
「なんと!」
公王イジャルはその報告に驚き・・東方の地平線付近を見つめたが・・・さすがにここからでは視認できなかった。
「敵の増援か・・・だが距離はある! とにかく、目前の敵を排除することが優先、そののちにルヴァ大橋へと向かう」
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王国軍の残存部隊の駆逐、掃討をしたキヨウラ公国軍は、その後・・ チョコまみれにされていた"ルヴァ大橋"を占拠したのである。
(ちなみに、粘着性のあるチョコと、そしてそのチョコによって捕らわれていた人たちを、ノアの手助けを借りながら兵士たちは、きれいに洗浄し、救出しましたとさ・・)
そう、ここで東方から進撃してくる敵の救援軍を足止めしようというわけなのだ。
この"ルヴァ大橋"こそが、大河トーラスを渡る唯一の架け橋。
防衛上の観点から見れば、ここは最重要拠点ということになる。
・・・とはいえ、背後に控える大都市ルヴァの動向も懸念材料。
今だ多くの王国守備隊がいるはず、そんな彼らが兵を繰り出し・・背後から襲撃する可能性も考えられるのだ。
そこで、公国軍は一隊を派遣し、ルヴァ方面の監視をすることにした。
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一方、キヨウラ公国軍の東方では、3万の兵を有するカイラシャ王国軍は、広大な平原の中をゆっくりと進軍していた。
穏やかな風が吹き渡る中、数多くの剣や槍、鎧が日差しを浴びて鈍く光を放つ。
整然とした兵士たちの行軍隊形は、緩やかに広がった魚鱗陣だ。この地はすでに敵の勢力圏内だと判断し・・行軍していたのである。
この王国軍を指揮しているのは、かつてキヨウラ公国討伐軍の司令官を務めていた老将プライバン伯に、その幕僚たち
そして・・・その一行に、ヴァルト王復活に寄与した人物! デルテ二ア邦伯の姿もその中にいた。
彼らの任務は・・かつての王都ルヴァを敵の手から救うことではなく・・・
反旗を翻した賊軍どもの進軍阻止・・これ以上、東へ進撃させないことだったのだ!
いわゆる東方生存圏の絶対防衛である。
そう・・・王都ルヴァの放棄はヴァルト王によって決定されていたのであった。
「密偵の情報では・・あのキヨウラがルヴァに迫っているとのことです」
幕僚のプルゥーリが低く静かな声で報告すると、プライバン伯はわずかに眉を動かし、短く答えた。
「だろうな!」
プライバン伯の心情は・・複雑であっただろう。
かつて討伐軍の司令官として抜擢されたにもかかわらず、即座に解任された後、その討伐軍は敵によるものではなく自滅という形で壊滅したのだ。
だが現在、彼にとっては過去の出来事。もはや関係のないことなのだ。
それに、この任務はキヨウラ公国軍の撃破ではなく、反旗を翻した全ての勢力の監視と、それ以上の東進を阻むこと。
かつての王都ルヴァは放棄されたとしても、それ以上東へと進撃させないことが目的であった。
王国軍はそのまま西進し・・キヨウラ公国軍が陣取る"ルヴァ大橋"まで至る予定である。
理想的国境線は・・"ルヴァ大橋"が架かる大河トーラス、天然の国境として まさに理想的な地形だった。
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ルヴァ大橋の西岸にてキヨウラ公国軍は大河を盾とし・・・東方から進撃してくるであろう王国軍に備えて防衛陣をはっていた。
そんな最中・・公国軍本営テントに・・とある珍妙な情報が舞い込んできたのである。
それは、カイラシャ王国軍3万が・・"ルヴァ大橋"に迫るという情報とは別に・・・
西方から異様な集団の接近という不可解な報告だった。
その内容とは・・人間ほどの大きさをした鉄製のゴーレム6体が列をなしてルヴァ方面に移動中、しかもその中の一体・先頭に立つゴーレムの肩には、黒髪の長い少女がちょこんと座っていたという。
ついでに補足すると、ときおり襲ってくる盗賊たちを、そのゴーレムたちが返り討ち!
逆に盗賊たちから金品をせしめていた。
「うん、それはヒラガさんだね」と・・公王イシャルの側で、コーヒーをすするノアからの速攻な回答!
すると、その名を聞いた公王イジャルや幕僚たちは・・・互いに顔を見合わせた。
そう、ヒラガさんとは・・・
セェルンの町郊外、シドン村に住む唯一の住人にして村長・・しかも準男爵
はっきりいって・・どうでも良い家庭事情により・・106歳のおじいさんのはずが・・・10歳前後の少女に変化してしまったのだ。
(本人の趣味で・・・)
そんな彼(彼女)が・・・鉄製のゴーレムを6体を連れて来たということはついに ノアが持ち込んだあのゴーレムの量産に成功したという事なのか!?
・・・というそんな疑問は数時間後解決したのである。
黒髪をなびかせたヒラガ・ケールナイが・・公国本営に現れたからであった。
その姿、完全に場違いというか・・・ゴーレム6体も完全に場違い!
一応、公王イジャルを含め幕僚たち全員に・・ノアからの説明は受けている。
ヒラガ氏が、なぜ少女のような姿になったかという裏事情などなどw
「こ、こう・・公王陛下!? ・・これは失礼」
ヒラガ氏は謁見の場で少し驚いた様子を見せたものの、あらためて
「公王陛下、お初にお目にかかりまする。わしの名はヒラガ・ケールナイ。しがない魔導エレキテル技師にございます。」
何とも言えない少女らしからぬ違和感、公王イシャルは戸惑い、そしてヒラガ氏も同様に戸惑っていた。
そう、好戦的なイメージとは違い、公王イジャルのあまりにも予想外過ぎる可愛い顔立ちに!!
(ちなみに、可愛い少女が2人・・いや、ノアとコサミちゃんを加えれば、4人もいる状況! 周囲の幕僚たちが何やら騒めく)
「おお、これは! あの名高きヒラガ殿。よくぞ参られた」
公王イシャルは満面の笑みでヒラガ氏と握手し、心からの歓迎を表した。
本営テント内には驚きと戸惑い(色々な意味で)が渦巻きつつも、同時にゴーレムという未知なる魔道具に・・期待が膨らんでいくのであった。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)