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ゴルーナ丘の戦い(逆落とし)


シラヤ子爵は焦った。あのようなものが空に浮かんでいるとは・・完全に想定外! 想像すらできなかった。

更には、これから実行しようとしている"とある作戦"の妨げにもなるであろう。

はっきりいって・・目ざわりなのだ!


ならば撃ち落とす! 撃ちおとしてしまえばよい!


「放て!放て!放て! 全力で放て!」

子爵は王国軍魔導師隊に対して空飛ぶ箒の撃墜・・排除命令を発した。


ドッドドドドドドッドド


数うちゃ当たる!

大量の火弾、飽和攻撃と言うべき程の火弾が・・一斉に放たれ飛翔し・・ノアたち箒組を撃破、粉砕するはずが・・・"残念!"" 無理でした。


そう、ここでも"祭祀の丘"、上空の呪いが働いたのである。


すなわち・・相手(ノアたち)からの魔導空爆を完全に防げると同時に・・

こちらからの攻撃もまた、時空の歪みによって あらぬ方向へと飛んでいってしまう。

つまり・・ノアたちに命中することは、ほとんどないということなのだ。



-*- - - - - - *-




大量の火弾が空へと舞い上がり・・・轟音と共に周囲が赤く染まった。しかもすごい熱量!


「こ・・これは!」

ノアの目が大きく見開かれる。

火弾が次々と迫ってきているのだ!


『 これはまずいっす! 緊急退避をするっす 』


シルンちゃんは即座に空中パネルをタッチし・・逆噴射を開始した。

白い飛行機雲を吐き出しながら・・ノアたちが乗る箒は猛烈な加速度で後退したのである。


一応、この箒には反重力装置が搭載されており、慣性の法則に縛られないため、

ノアたちが振り落とされる心配はないので・・ご安心を!


「シ、シルンちゃん・・ナイス!」


そんなわけで・・シルンちゃんの迅速な判断により、ノアたちは一挙に戦線離脱したのであった。

一方で、放たれた火弾の軌道は、やはりというべきか、呪いの影響で狂ってしまい、たとえ後退しなかったとしても命中することはなかったであろう。

しかし、それはシルンちゃんの知るところではなかった。


結果的に言えば、ノアたちが逃げたことで、シラヤ子爵の思惑通りになったのは確かである。



「撃ち落とせなかったのは残念だが・・追い払ったのなら良しとしよう」


作戦はまだ半ばであり・・不安も残るであろうが、次なる ステージ(計画)への移行を子爵は決意した。


ここからがこの戦いの本番なのだ!

「皆の者! 予定通り・・最終決戦の時が来た! 腹を括れ! 突撃の準備をしろ」


「お~! お~! お~! 勝利を我が手に!」


子爵は力強く号令をかけ・・そして、それに答える兵士たち。



-- -- -- -- -- --


現在・・"祭祀の丘"に通じる狭い街道にて両軍は激戦を展開している。

槍隊の突撃、または抜刀攻撃・・互いに命と肉を削りつつ、凄惨な戦いが続く


狭い戦線ゆえに・・総力では戦えず、ほぼ膠着状態なのだが・・・

若干、キヨウラ公国軍が有利となっており(ノアのチョコ効果)、王国軍側が少しづつ後退を続けていた。



「空飛ぶ箒を、一旦は撃退したとはいえ、いずれ戻ってくるだろう。これは早めに決行すべきか!」


シラヤ子爵はおもむろに"祭祀の丘"の中心地へと足を運び、

しめ縄で飾られた鳥居の前に立ち止まって、うやうやしく一礼をした。


「かしこみ かしこみ」


ここは神域、周囲は異界のごとく静まり返り、ある種の神聖さを感じとれる。

そこで彼は・・ゆっくりと静かに柏手を3度叩き・・そして、ある種の呪文を唱えると・・

その瞬間、鳥居がわずかに揺れ、空気が変わったのを感じた。


「ふむ、うまくいきそうだ」


子爵の心に一瞬の安堵が広がる。

どうやら、我が一族の秘術書通り鳥居の守り神が・・あの呪いを一時的に封じ込めたようである。



そう、この"祭祀の丘"付近に、はびこる呪い(迷子効果)を一旦、抑え込んだのであった。


ただし、それは一時的にすぎない。

鳥居パワーで蓋を閉めた程度、やがて時を経れば、沸騰した鍋のごとく呪いが、再びあふれ出るのであろう。


「短期間でもよい! この呪い効果さえ喪失すれば・・作戦を決行できる」


シラヤ子爵は頷き、今から起きるであろう決戦に向けて決意を固めた。

すでに兵士たちの準備は完了している。いつでも突撃可能!


彼は深く息を吸い込み、兵士たちに向かって声を張り上げた。


「呪いを解除した。敵は油断している。勇敢なる兵士たちよ! 今こそ決戦の時、勝利の美酒が我らを待ち焦がれているのだ」


「「おおおおー!」」


兵士たちの声は空気を震わせ、その決意が揺るぎないものであることを示した。


よし、いける! 勝てる! 勝てるぞ!

子爵は勝利を確信した! 兵士たちの高揚した士気を感じとったのである。


「よしいけ! 突撃だ! 我に続け」


シラヤ子爵率いる三千の兵は、"祭祀の丘"へと通じる街道とは違う別方角、つまり裏手から・・逆落としの如く丘を駆け下る。


ドッドトッドド~ 白い砂煙が舞い上がる。兵士たちが大きく動いたのだ。


・・とはいっても義経の逆落としほど厳しい経路ではない。すこし急な崖というより、ちょっときつい坂程度というところ。


もちろん、呪いの影響はなく迷子効果は失せていた。方向を見失う恐れはない。


彼らシラヤ子爵率いる王国軍本体は何も問題なく・・・突進!


そう、彼らは敵・公国軍が気づく前に大きく迂回し・・背後から敵本陣へと奇襲をしかける。

もちろん・・最終目的は、敵の大将、つまりイジャル公王の首をとること!


「いけ! いけ! ここが正念場なのだ!」



一方、王国軍の残りの一千名は街道にて、公国軍と対峙中であった。

彼らは敵・公国軍を街道に引きつける重要な役割を果たしている。



-*- - - - - - *-




猿の影忍の一人(一匹)が森林地帯を駆け抜け、キヨウラ公国軍本陣へと、息を切らせながら走り込んできた。


「ご注進! ご注進! 敵軍本隊迂回中・・・こちらへ向かってきております!」


かくして、シラヤ子爵率いる王国軍三千は、公国軍側から視認できないよう裏から大きく迂回!

"祭祀の丘"攻略中である公国軍主力の少し後方・・つまりイジャル公王の鎮座する本陣へと迫りつつあったのだ。



そんな報告を聞いた本営内では、にわかに騒然となり幕僚たちは互いに顔を見合わせる。


「正面の王国軍は囮だったのか」

「まさか、こんな形で迂回してくるとは予測外だったな・・・」

「一刻も早く対策を立てないと、本陣が危機にさらされる。」


幕僚たちの喧々諤々

だが・・イジャル公王はあくまでも冷静であった。


「ほぉぉ! 奴らが背後に迫っているとな・・・やるな! 王国軍よ」


イジャル公王は机上に広げられた作戦地図を見つめた。

背後からの新手の敵出現というシナリオは・・想定済み、動揺するほどのことではない!


"祭祀の丘"付近の呪い地帯をどうやって突破したのか! という疑問も湧き上がったが・・今のところは保留とする。

とりあえず、敵が迫ってきているのは確かのようだ! 

ならばやるべきことは迎撃を命じることのみ


「皆の者、あわてるでないぞ! 作戦を"乙"に変更する! 背後に備えよ」


「はっ ただちに!」


公王の命令により・・・本陣内は・・慌ただしくなってきた。

兵士たちの配置変更が急ピッチに進められる。公国軍の背後を固めるのだ。

もちろん公王自身も・・黒き鎧を装着し、身を引き締める。


現在、公国軍本陣の戦力は二千程度、数では劣っているが・・・ノアから渡されたチョコによって 兵士たちの身体は強化されている。

さらに、"祭祀の丘"方面に配置している軍の一部を急ぎ、こちらに向かうようにと伝令もだした。


敵との接敵前に・・こちらの準備、迎撃体制が整えられそうだ!

おそらく、敵が企図したような奇襲効果は得られないだろう。


両軍における情報網の違いが、ここで明らかになったのだ。

そう、戦いとは・・情報戦である!


「皆の者、臆するな! 我らにはノア殿のご加護がある! 我らの勝利、我らこそ正義なのだ!」


黒き鎧に身を包むイジャル公王は抜刀し、剣を高く掲げて声を張り上げると同時に、公王は走り出す。


イジャル公王は、敵を待ち構えるなどのような消極作は好みではない。

可能であるなら・・攻勢をしかける。 

幸い戦力としては、さほどの差は開いていないのだ。


「敵がこちらへと突入してくるというなら、我らも敵へと斬りこむ」



--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)


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