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冬なのに不快指数はうなぎ登り


シルンちゃんの鼻がビクンと動き・・口からわずかに炎が噴き出した。

それは幻影魔法の発動・・すなわち!

"マーケットブリッジ作戦・第二弾"の開始である。


それはノアの秘策、王都を震撼させ、多くの者たちを狂わせたという悪逆非道の攻撃!


そう、それはいつもの・・・幻影であっても真の幻影ではなく、もちろん・・3D表示ドラゴンでもない!


もっと直接的にダメージを与える恐るべき攻撃、実体弾と言うべき物理現象!

それは・・音という名のサウンド弾なのである。


たとえ幻影魔法であっても・・・音波だけは実体! 鼓膜を震わせる確かなサウンドなのだ

しかもその音量は・・・360度3Dサラウンドの大迫力!?


『 上手くいったっす! 』

シルンちゃんのサムズアップにノアもニッコリ、サムズアップで返した。




そう現在、彼女たちの視界前方に広がるカイラシャ王国の王都ルヴァ。

その町の隅々にまで、シルンちゃん特性の幻影サウンドが鳴り響いていたのである。


" ギッギギギィィィィィ~ ギィィィィ "


人の神経に過度の負担をかけ、虫唾が走らせるあのいやな・・"" 黒板のひっかき音 ""または"" 発泡スチロールのあの音 ""

さぁ、想像してください! あの不快な音階をw 不快な周波数をw


「敵か!? 王都に敵が攻めて・・・いや違う! なんだこの耳触りな音は・・・うっ! こ、これはやばい」

「鳥肌が! ぐうぇぇぇぇ」「あっああっぁあああ~ 虫唾が走る!」

「「やっ・・やめてくれ!!」」


耳を塞いでも・・布団の中に逃げ込んでも・・聞こえてくるあの奇怪なメロディ!

そして、絶対聞かせるマンと化した不快周波数!


鳥肌がたち・・足を震えさせ・・うつろな目となり泣き叫ぶ! 

そう、王都中の住民たちは悲鳴を上げていたのである! 

子供も大人も、いかなる身分であろうと・・いや、全ての生物たちの頭上から、容赦なく降り注ぐ不快周波数!

全ての者に・・その洗礼を授けるのだ。


" ギッギギギィィィィィ~ ギィィィィ"  虫唾が~ 鳥肌が~



しかもしかも!

あまりの波長のせいなのか、王都からある程度離れているはずのノアとコサミちゃんさえもその影響を受けてしまった。


「うぎゃゃゃああぁぁぁ! む・・むしずが走る・・・なんと凶悪な!」

「ノ・・ノアヒャまぁぁ~」

『 ・・・これはあれっす! ちょっとあれっすね 』


シルンちゃんにはこの音への耐性があるようだが・・(チビとはいえドラゴンですからw)

ノアとシルンちゃんには打撃が大きかった。


「逃げる! 逃げるのよ!」


ノアは涙目となり、空飛ぶ箒の進路変更、全速力を上げて・・逃走したのであった!

うわぁぁぁぁ~


そう、ノアたちには・・とりあえず逃げる場所があったからまだましなのだ。


しかし・・王都の住民たちは・・すぐに逃げることはできない(生活がありますからね!)

しかもこの不快な波長・・・幻影魔法で作られた音階は昼夜とわず降り注ぐことになるのである。

(多分・・魔導効果がきれる3日間ほど・・連続で鳴り響くはず)




ちなみに、この不快音階魔導というか周波数の極意は邪神様(コーヒーチョコケーキ)と出会ったあの日・・たまたま教えてもらった知識によるものであった。

「うん、邪神様のおかげで大成功よ」


さらに・・・シルンちゃんにもある程度、周波数に関する知識を持っていたため・・・幻影魔法として作り出すことに成功したのである。

ある意味、異世界技術の集大成と言えよう。


-*- - - - - - *-



昼夜を問わず王都ルヴァを震撼させた奇怪なメロディ♪が、町の隅々まで鳴り響いていた。


" ギッギギギィィィィィ~ ギィィィィ"


耳を塞いでも、地下室に逃げても、必ず追いかけてくるサウンドストーカー

魔導師たちによる防壁魔法・・"魔導障壁"を展開しても音波だけはすりぬけてしまうのだ! 

そして、その不快な周波数は身分に関わらず、すべての生物に降りそそぐ。


「・・・やめろ!やめろ!」


王子に降格してしまったエルドラート元王太子も、この洗礼に襲いかかられていた。

王宮の奥深く、地下室に逃げても追いかけてくる不快サウンド!


「こ、こんなことが出来るのは・・奴か!魔王に魂を売ったフィレノアーナ!」  


耳を塞ぎ、布をかぶり、布団をかぶり、抱き枕を抱えても・・身体中を虫唾が走りまくる恐怖のサウンドキラー


「くそ!くそ! 誰か助けろ! すぐに助けろ!」


だが、いくら叫んでも助けに来なかった。

王宮内の武官、文官も同じくのたうちまわり・・それどころではなかったからである。

ついでにいうと、あんな元王太子の世話なんてしたくないという本音もあったのだろう。


王太子の地位から脱落し・・・国王から見放されてしまった以上、ただの人なのだ(一応・・王族なのだがw)



一方、王都防衛司令官(ラクシャアーナ)・シラヤ子爵も王子と同様に・・耳を塞ぎ、頭を抱え込んでいた。

「や、やってくれたではないか! なんてやつらだ」


間違いなく、この不快音声は・・何らかの魔導、しかも出どころは、キヨウラ公国のはずである。

そう、間違いなくキヨウラの秘密魔導兵器!


「こんな技を持っていたとは!」


シラヤ子爵は苦悶の表情を浮かべながら、その魔導に戦慄していた。



◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇




" ギッギギギィィィィィ~ "


この奇怪なメロディーは容赦なく王都へと降りそそぎ・・・住民たちに困惑と戸惑い、そして苦痛を与える。


「「やめろ! やめろ! やめろ! 頭がおかしくなる!」」


男も女も子供も幼児も・・犬や猫、鳥までも・・・みな逃げ惑い耳を塞ぐ。

だが、いくら塞ごうが・・確実に聞こえてくるのだ!



身体中に虫唾が走り、強張らせ・・もはや何も手を付けられない。やる気も出ない。不快指数はうなぎ登り!

王都中の店は閉店し、路地には人っ子一人もいない。


「だめだ! もうだめた!」


一部・・・耐性を持つ人達や、ある種の魔導によって、精神の安定を保っている魔導師はいたが・・・

一般の人々にはこの不快な音に耐えることはできなかった。


そして、その音を一晩中聞かされ・・寝不足となり、翌日の朝方には、完全に住民たちの心は折れたのである。


「「こ・こんなところで住んでられるか!」」



奇怪な音は止まらない! いつまでも鳴り続けているのだ。

我慢の限界,精神の限界


ついに住民たちは、逃げ出した。王都から脱出し始めたのである。



着の身着のままで走り出し、できるだけ早く、できるだけ遠くへと逃げだす者もいれば、

奇怪な音に悩まされながらも、荷馬車に荷物や家具を積みこみ、家族と共に逃げだそうとする者・・


彼らは、とにかく逃れたい。奇怪な音源から、できるだけ遠く離れようとした。


「「逃げろ! 逃げろ! 早く逃げろ!」」


ちなみに、彼ら一般住民に対して・・猿の影忍たちは襲わないことになっていた。

猿たちの目的は、あくまでも王都への物資流入の阻止なのだ。




-*- - - - - - *-


このようにして逃げる住民たちは・・・はたして一般人のみだったのだろうか!?

いや!? 違うのだ。


シラヤ子爵と配下の正規兵たちは、一般人の姿となり・・逃げる住民たちや、荷馬車の列に紛れ込んでいたのである。


木を隠すなら森の中・・

目立たぬように、目立たぬように! 住民たちの中に混じり込み、とある作戦を実行に移そうとしていた。


それは、奇襲作戦!

敵・公国軍の本営があると思われる小都市ラクロットに密かに接近し、不意を撃つことであった!




しかし、大河トーラスが彼らの行く手を阻んでいた。

ラクロットに向かうには・・大河を渡る必要がある。

そして現在、その大河に架かるルヴァ大橋は通行不能となっていた。

そこで・・・


「仕方がない、大河を船で渡るしかあるまい」


一般住民に扮した・・小汚い恰好のシラヤ子爵は 同じく小汚い恰好の兵士(正規兵)たちに命じ、船の用意をさせる。

ただし・・・敵に注意を抱かせてはならない。あくまでも我らは一般住民!

目立たぬ船でなければならぬのだ。





一方、その上空にて、王都から逃れる住民たちを観察していたノアたち空飛ぶ箒組。


「あの不快音声・・予想以上の威力だったわね! まさか・・逃げだすとは!」


『 わっちも驚きっす! 』


「あっ、ノア様、これは不味いです・・・だいぶん予定外の事態が・・・」


「・・・そうね」


ノアは残念そうに首を振った。

一応、予定では・・・物資不足による不満と、不快音声によって、住民たちを狂暴化させ、暴動に発展させるはずが・・

その肝心の住民たちが、我先にと逃げてしまうとは・・「残念!」


あまりにも音声が不快すぎたのが原因だった・・ガマンの限度をブッチギリ過ぎたのだ!



『 でも、あれを見るっす! 別の意味で上手くいったっす 』


シルンちゃんは眼下を指差したが・・・遠すぎてノアには見えない。

そこで・・・サテライト魔法を発動し、遠くの様子を映像にして映し出したのである。


「あっ・・・敵兵が逃げてる!」


そう、映像には住民たちとともに・・逃げ出す兵士たちの姿があった。

しかもかなりの兵数である。

我先にと・・ばらばらに逃げ出す兵士たち…。


「これは良き事! 勝ったわね! さっそくイジャル君に報告しないと!」


ちなみに・・逃げる兵士たちは王国軍の正規兵ではなく・・徴集兵たち。

先の戦いでの恩賞・"士尉"の位を与えたとしても・・この奇怪な音声を耐えれるだけのモチベーションは得られなかった。


基本的に名誉だけで・・金銭的なものは予算上、渡せなかったのが致命的だったかもしれない。


とにかく・・・シラヤ子爵配下の徴集兵たちの大部分が逃げ出したのは間違いなかったのである。


子爵にとって・・最後の切り札となったのは・・正規兵たち4000名のみ。

そして、その4000名はひそかに大河を渡り・・・イジャル公王が陣取るラクロットへと近づきつつあった。




--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



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