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外伝2025新春・イジャル伝説


ノアと出会う以前、お祖父様としてのキヨウラ公爵が内務卿として活躍していた頃・・・

イジャルは剣の道・蘭影流を極めんと修行の旅にでる。

魔獣退治、ダンジョン探索、大陸一武芸大会の出場などなど、多くの冒険、活躍?!をしていた。


そんな中、とある島国(ルソンニア)に滞在中・・とある領主間・領土争いに巻き込まれることになる。



時は・・新年、雪降る山中の村。

かやぶき屋根が連なる美しき里、名物は秘湯というか温泉、源泉かけ流し

イジャルは、ゆったりとした気分で温泉宿に泊まり、新年の初湯治を楽しんでいた。


そんな中、隣接する領主・クガル家の手勢が、正月にも関わらず、この村に攻めて来たのである。

詳細は知らないが・・この国特有のもめ事らしい。


そんなもめ事に巻き込まれる村人は・・大変迷惑千番! 

そして、湯治客としてのイジャルも、その渦中へと放り込まれることとなった。

しかも、露天風呂に浸かっている最中にである。




「やめてください!」

宿屋の主人の声だろうか!?・・そして諍い、叫びと悲鳴! 

突然の騒ぎ・・・イジャルは何が起きたのかと身構える。


すると・・・数人の武装兵がいきなり露天風呂の敷地内に入り込んできたのだ!

「おっおおお 女だ! しかも裸! これはこれは」


兵士たちの下衆な笑み・・・実に嫌らしいw



いつものことながら・・見た目だけは少女、可愛らしげな姿をしているイジャルは・・いつものように勘違いされていた。

湯気で見えない・・下半身は湯の中ということもあるのだが・・

ちなみに、ここは男湯であるw 間違っても・・・女は入ってはいない!



この兵士たち・・冷静に判断すべきであった。

そして、うかつにも襲いかかる!


「へっへへ・・俺たちは、クガル軍の兵なのだよ! 大人しくするんだな・・さもなくば・・」


兵士たちは目前の女性をw か弱い女性だと思ったのだろう。力づくで何とかなると思ったのだろう。

欲望のままイジャルに近づき、腕を掴もうとした瞬間、逆に腕を掴まれ・・そして盛大に投げ飛ばされた。


「何をする! この無礼者どもめ」


イジャルは叫ぶと同時に‥水しぶきを上げながらジャンプ!

残った兵士たちの懐へと飛び込み、連続パンチをお見舞した。

兵士たちの反論・・いや、反撃する隙すら与えない疾風アタック!


ドスドスドス バス ドッドドド

「俺たちはクガルの・・・」「やめろ!」「だ・・助けてぐれぇぇぇぇ」


盛大なパンチ音とともに、兵士の叫びが響き渡り、そして全てが沈黙した。


「おいおい、この国の兵士・・弱すぎるだろ!」

イジャルは呆れ返るのだが・・この兵士たちによる最後の叫びは不味かった。


そう、この叫びによって次なる新手が現れたのである。



「ちっ 不味いことになった!」


だが・・イジャルはあくまでも冷静だ!

倒れ伏している一人の兵士から、剣を拾い上げ即座に構える。

露天風呂だから仕方がない。全裸剣士イジャル・見参!




-- -- -- -- -- -- -- -- -- --


それは・・とんでもない事態となっていた!

湯気が広がる露天風呂にて・・

可愛らしき全裸の少女、いや 男なのか!?・・・が剣を構え、駆け付けて来た兵士たちと対峙している。


ゴクリ! 彼らは唾をのみこんだ。

性的に・・いや! 危険な雰囲気に・・緊張が走る。


目前の男の娘(イジャル)は決して強がっているわけではない!

あまりにも不釣り合いな光景だが、油断できないのは明らか。


そう・・その男の娘(イジャル)の足元には 数人の兵士が倒れ伏しているのだから・・


「き・・貴様がやったのか!?」


「ならば・・どうする!?」


イジャルの眼光、威圧によって、兵士たちの腰がわずかに引けた。

だが・・相手は少女というか少年、見た目はひ弱い。しかも小柄だ! ついでに全裸!


武芸に心得ありといえども・・所詮は子供! 数で圧倒できるはずだ。

そう、すでにここには十数名の兵士たちが 駆けつけた上に、その男の娘(イジャル)を包囲しているのだから・・


「武器を捨てろ! さもないと殺す」


兵士たちは言い放つが・・・イジャルに動揺はない。


「ふっ やるというのだな! ならば、お相手しよう」


そう発言するやいなや・・イジャルは一挙に縮地!

薩摩示現流のごとく一の太刀で正面の兵士を切り裂き・・・血しぶきの花が咲く。

そして・・間髪を入れずに次なる兵士へと剣先が伸びた。


「ぐぅあああ ぎゃぁあああ」


叫びとともに湯舟は赤く染まり。瞬く間に倒れ伏していく兵士たち。

反撃の余地など与えない・・圧倒的力量の差。



クガル軍と名乗る十数名の兵士たちは、もうここにはいない。誰もいない。

一人残らず地に伏せさせたイジャルは一息突く、そして・・・付近を警戒しつつ露天風呂から出た。

目的は・・とりあえず脱衣所! 服を着なくてはカッコもつかないし・・寒い!  

雪がちらほら、新年から全裸とは・・なんたること!


だがこの時、イジャルは異変を感じた。心臓の鼓動が早まる。


「強い波動だ。魔導師! これは・・厄介な・・・まずい! 来る!」


鋭い殺意を感じたイジャルは即座に身体を反らし・・バックステップを踏んだ。

その瞬間、目前を青白い魔弾が切り裂き、先ほどまでいた空間を貫いていく。


一難去ってまた一難というべきか!?

まだ服も着ていないというのに・・・


イジャルは苦々しく屋根上を見上げた。

その魔弾を撃ち放った元凶、波動の根源をしっかりと視認(ターゲット)したのである。


それは白き鎧に、白き魔導杖・・ホワイトグリーンの長い髪がたなびく・・女!


イジャルとは・・・おそらく同年代であろう! だが油断できない波動を感じる。 


やばい! あれはヤバイ相手だ!

イジャルは眉を顰め、剣を握る手から汗が流れる。



それと同時に・・屋根上の女魔導師も同じく・・・眼下の人物、全裸の剣士に動揺していた。


顔が可愛い華奢な身体なのだが・・・・なんと彼女、いや彼は男性! 少年!  

一見、ひ弱そうに見えるが・・・決して侮れる相手ではない!。

そう、その少女、いや、少年の背後には、倒れ伏す兵士たちの数々・・


かなりの使い手なのは明らか!

その女魔導師は強く杖を握りしめた。かなりの強敵と相まみえているのだ。

でも・・・全裸で丸見えゆえに、目線があそこへと向いてしまう。これは一種の視線誘導なのか!?




両者は睨み合い、緊張が高まる。

そして、初めに動いたのはイジャルだった!

彼は一挙に飛び上がり、攻撃を仕掛ける。


冬なのに全裸・・寒い、恥ずかしい。

雪がちらほらと舞いちり、手がかじかむ

早めの決着を望んだからでもあった。



太陽を背景に黒き影となったイジャルは 空中で一回転しながら・・躊躇なく唐竹割り!

そう、女魔導師の脳天を狙っているのだ。


あまりの俊足さ!

しかも冬とはいえ、太陽の光は眩しく・・影となった少年の位置を把握しきれない。 


女魔導師は本能に従い・・瞬間移動、側面へと避ける!

その際、イジャルの剣先が・・彼女の前髪を一部切り裂き・・多数の断片が宙を舞い散る



「ぬっ!」


女魔導師は・・少年を鋭く睨む。


うっうう ちょっと好み、可愛い・・・裸も・・いや、違う!

そんな思考をする時ではない! 

あの少年・・勝負をすれば五分五分、勝てないわけではないだろう。

しかし・・あたいは、クガル家の傭兵として金で雇われただけ!

命をかける筋合いなんてないし、恨みもない。

無理をする必要はないのだ。


女魔導師は・・・ここからの離脱を決意する。

だが・・なかなか逃がしてくれない。


繰り出されるイジャルの剣撃は、まるで機関銃! 最速の連打。

それに対して、女魔導師は魔導障壁を展開しながら時折、魔弾を放つ


ドスドス! パスパス! パシュ~


「うっ! これは・・全裸のくせに」


「違うな! 裸ゆえに強いのだ。おまえも・・裸に・・」


「う・・うそつけ~!!」


戦いは拮抗していたが、次第にイジャルが優勢となっていく。

接近戦に持ち込まれた女魔導師は、剣撃の射程内に取り込まれてしまい、魔法杖や魔導障壁などの防戦で手がいっぱい。

反撃の余地すらなくなっていく。


やべぇ! やべぇ!


女魔導師は焦りを感じながらも冷静さを保ち、逃げるタイミングを見計らう。

このままでは、確実にやられてしまいかねない。なんとかして隙を狙う!


一方、イジャルは、さらなる猛攻を仕掛け、女魔導師の防御を崩さんとする。


ドスドスバスバス


そんなさなか、女魔導師は一瞬の隙を見出す。

魔導杖を強く握りしめ、目線は足元の白い地面・・強力な火弾を、撃ち放った。



そう、ここは雪降る山里・・雪が積もっている。

そこへ強力な火弾を撃ち放ったのである。


ゴッゴゴゴオオォォ


噴き上がる水蒸気! 熱気と熱風

膨大な雪が瞬時に気体へと変わり・・霧となす。


何も見えない! 全く見えない! 視界はゼロ

スモーク全開の白の世界!



「予想通り、これでなんとか・・」


「ちっ やられたか!」



女魔導師は瞬時に後方へ撤退。

この視界では、追ってくることはできないだろう。

とにかく逃げる! こんな強敵と命を賭ける筋合いなどないのだ。



一方、イジャルも追撃などする気はなく・・これ幸と脱衣所へと向かう。

そう、寒いのだ。それに全裸で丸見え! さっさと服に着替えたい


霧で方向感覚さえ無くしそうだったが、無事に脱衣所に到着、全裸からの脱出に成功するのであった。



-- -- -- -- -


逃げたあの女魔導師・・ここでは名を名乗らなかったのだが、その後・・

大陸一武芸大会やら、魔獣森マラソン大会やら、ダンジョン探索ツアーなどで再び出会い、互いに知り合うことになる

ついでに遺憾ながら・・デートなんてしてしまうこともあった(付き合う気など無し)


あの村での戦闘は、領主・クガル家がらみの依頼、個人的に合えば・・それほどのわだかまりというものはない。

それが傭兵というもの・・それに、なんだかんだと言いながら仲良しかもね!?


そう、そんな彼女こそ・・あの魔導師イヨナ・・・その後、再び露天風呂にて出会い・・羽交い絞めすることになるw



-*- - -*- - - *-






追伸・・・P.S.

そして1300年後・・伝説に



-- A long time ago --

遥か彼方の昔、美しき秘湯の里は、クガルと名乗る恐ろしき軍団の襲撃を受けた。

人々の安息の地、温泉の楽園に、今まさに終焉の影が迫る!


だが、運命の神は彼らを見捨てなかった。

神々の使徒、英雄イジャルが・・露天風呂より降臨したのである。

彼の姿はまるで 一糸纏わぬ光のごとく、圧倒的パワーで敵を斬り倒していく。


その強大な敵、魔導師イヨナも、イジャルの全裸力の前では赤子同然、軽くひねりつぶし、そしてクガル軍さえも一掃したのである。

村人たちはその勇敢な姿(全裸)に目を奪われ、感動の涙を流したという。


「おっ あれが我らの英雄!」「救いの全裸使徒!」


その後、村は再び平和を取り戻し、温泉の湯気とともに人々の笑顔が戻ってきた。

イジャルの勇気と全裸によって、秘湯の里は守られ、彼の裸は永遠に語り継がれることになるであろう。



(リューム降誕暦2025年発行 ルソンニア童話全集、第二巻より抜粋)






--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




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