'孤狼団'の秘密のアジト
'孤狼団'の頭ゴルモンは・・・この森におけるタブー(全裸疾走)を犯したため・・
別の世界に転移させられてしまった。
もう二度と・・・帰ってくることはないだろう!
さよなら(- -)ノ << ゴルモン! >>
というわけで・・・盗賊団の頭を失い、大半の構成員は捕縛したのだ。
もはや組織としての活動は不可能・・・'孤狼団'は壊滅したのである。
あとは、彼らの本拠地、隠れ家というべき砦には 門番程度の人員しか残っておらず、立てこもるだけの戦力もないはず。
やけくそになって火を放つということもないだろう。
公王イジャルは、ほぼ勝利を確信した。あとは食料を確保するのみ
「よし、行こう。盗賊団の砦へ」
キヨウラ公国軍は森の中へと突き進んだ。
鬱蒼とした森、そこは通称・・呪界の森と呼ばれ、近辺に住む住民たちにとっては忌むべき場所とされていた。
「たしかに・・不気味よね」
イジャルとともに歩むノアは・・・この森の波動、魔力溜まりの異変に気づいていた。
ちなみに、コサミちゃんは恐怖で足がすくんでいるのか、歩みが遅い。
そんな森の中・・木々に隠され、風景に溶け込むようにして目的の砦・・'孤狼団'の隠れ家が存在していた。
そう、まるでカメレオンのように周囲と一体化し、人々の目を欺いているのだ。
しかも・・方向感覚を狂わすように、木々や岩を配置しており、あらぬ方向へと誘い込む!
一種の迷路、砦に近づかせないような仕組みとなっていた。
「・・なるほど! たしかに発見しづらい砦だ。ふむふむ! いずれ何かの参考になるだろう」
これは・・内務総長アランスの呟きである。
「ほんと! うまく考えたものね」
「魔法なしで・・ここまでの偽装! 何と素晴らしき知恵なのだ! 盗賊とはいえ、あなどれない」
「そうよね! 方向感覚を狂わされてしまうなんて・・怖すぎ」
イジャル公王やノアたちは兵たちを率いて、慎重にその砦へと侵入していく。
ただし・・迷ったりはしていない。
影忍たちによって、すでに調査はされており、地図も作成していたからだ。
ついでにノアのサテライト魔法でも確認をしている。
その砦の中は・・不気味なほど静かだった。
人の気配がない。もぬけの殻である。
どうやら、'孤狼団'の門番たちは、砦から既に逃げ出したようだ。
これほどの圧倒的戦力、公国軍正規兵たちで攻め寄せてきたのだから、仕方がないだろう。
そして、砦の天辺に・・キヨウラの旗が翻る。
無事に占拠したのであった。
砦の内部は・・割と清潔のようだ。
盗賊団のくせに・・掃除が行き届いており意外である。
あの頭・ゴルモンは、見た目の印象と違い潔癖症だったのか!?
どちらにしろ、これだけ掃除してくれているのだから、食料の保管もしっかりしてくれているに違いないという期待通り・・
温度管理が行き届いた状態で、大量の食料が地下室にて発見されたのであった。
よっしゃ! ミッション成功
敵の潔癖症に、ほんの少しだけ感謝しつつ・・公王イジャルや、内務総長のアランスは大喜びのようである。
これで食料問題も解決し、軍の維持に問題はなくなる。
王都攻略のメドも立つであろう。
一方、ノアたちは・・・この食料保管庫とは別に、宝物庫と言うべき倉庫の中を探っていた。
ただし、人の目を引くような金銀財宝は見当たらず、兵士たちの関心は薄いようである。
そう、ほとんどが紙の束・・書籍類なのだ。
一応・・これら多くの書籍類はそれなりに貴重ではあり・・・公国の文化財として接収されることになるであろう。
だが、それにしても、なぜここに・・・これだけの書籍類があるかというと
盗賊でも勉強するのだよ!!
・・などではなく、これら書籍類も食料と同じく盗品だったからである。
(王立ルヴァ文校から蔵書を盗んできたらしい)
そう、いずれ・・・どこかで売りさばくつもりだったのであろう。
「それにしても、よくこれだけ貴重なものを・・・!! ある意味、感心するわね!」
ノアたちは・・そんな書籍類の中をかきわけかきわけ、色々と物色していると・・シルンちゃんの驚きの声!
『 こ、これ・・これっす 』
なにやら興奮気味のようだ。
シルンちゃんは、重そうな一冊の本を机に置き、小さい羽で"ペラペラ"とページをめくりはじめた。
実に嬉しそうである。
いったい何を見つけたのか!? ノアは興味を持ち、シルンちゃんの後ろから覗くと、見慣れない文字が羅列していた。
「読めないよ! これって・・どこの国の文字なの!?」
『 あっ、これわっすね~ ひらがな、漢字、日本という国の文字っす 』
「???」
何をいっているのか、ノアには分からなかった。
異世界・日本の知識など・・全く知らないのだ。
しかし・・その世界・日本からやって来たシルンちゃんは大変ニッコリ、大喜びのようである。
『 これは・・いい物っすよ! 』
なぜこのような書籍が、ここに存在するのか!?
どういう経緯でもたらされたのか!?
全ては謎であるのだが、ここにあるのだから仕方がない!
そう、その書籍の題名は' 困った時の料理全集 '
表紙には帯までついており・・推薦者からのキャッチコピーまで掲載していた。
これは・・某異世界の料理本・・この世界にはない調理法が、書かれているのだ!
まさに画期的というか・・・文明レベルをかえてしまう一品の書籍!
『 お好み焼き、たこ焼き、餃子・・色々つくってほしいっす 』
などと宣うのだが、シルンちゃん以外、本が読めないので・・理解不能だった。
この書籍の文字は誰にも読めない未知の文字だったのです。
だって、漢字やひらがな・・だもん!
モフモフな羽を口元にあてながら、どこかの司令官のように熟考し・・そして、シルンちゃんは決断した。
『 わっちは・・がんばるっす! この本をこの世界の文字に翻訳するっす 』
さぁ、ここから始まる大プロジェクト、解体新書ならぬ'調食新書'
食の革命を起こすのだ! 料理の夜明けは近い。
・・などとシルンちゃんが、一人で・・おもっきり盛り上がっているのに反して
ノアとシルンちゃんは、まったくの無関心、自分たちのしたいことだけをしていたのであった。
そう、彼女たちは、それぞれ見つけた自分たち好みの魔導書を・・夢中となって読みふけていたのである。
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内務総長アランスは、砦内に隠し持っていた各種の食料とその総量、
それらを報告書にして・・提出した。
各種雑穀、肉などなど・・
そして、主食となる米俵5000石・・異世界単位でいうと750トン
60日間ほどの軍事行動が可能な量なのだ!
十分とは言えなくとも、ある程度の兵糧を確保できた。
ならば・・いざ行かん王都ルヴァへ、狙うは・・エルドラート王太子の首!
「待っておれ・・・一族の仇は必ず取る!」
キヨウラ公国軍は行軍を開始する。
公王イジャルの復讐戦が再び始まったのだ。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)