ダンジョンビキナー
ゲルンラン城伯は・・・あまりにも恨まれ過ぎた。あまりにも酷い統治だった。
そして、彼は身から出た錆びによって・・撲殺された。
(公式では行方不明)
城伯領の人々は、領主ゲルンランの死を知って狂喜乱舞した! お祭り騒ぎに・・ドンチャン騒ぎ!
彼らは長年の苦しみから解放されたと感じたのだ。
城伯が住んでいたアルゲルンの町も、彼と運命を共にした。
今では廃墟と化し、再建されるかどうかは不明である。
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
そんな出来事が起きたとは露知らず・・・ノアとシルンは街道を駆け走っていった。
一刻も早く・・・あの町から離れたかったからである。
ちなみに・・・アルゲルンの上空を闊歩していた大量のドラゴンは・・無事に消滅しています。
時間経過で消え去る仕組みとなっていたのであった。
現在・・城伯領の空は平和となっている。
「どうやら・・・あの魔導師男もついてこないようね」
『 はいっす! あきらめてくれたみたいっすよ! 』
「よかったわ」
ノアは、ほっとした表情で胸を撫で下ろした。
それでも・・・念には念を入れ、一人と一匹は街道を爆走する。
自動車並みのスピードで・・・ ドッドドドドド
それから一時間ほどの快適な爆走の旅・・・
二人が山岳地帯の峠にさしかかった時、シルンは突然目を見開いた。
ある種の魔力を感じたのだ!
そう この魔力! 間違いなくダンジョンから漏れ出した魔力だ!
おそらく・・・向こうの方に見える湖付近!
『 ノア様! ノア様! 』
羽をバタつかせながら・・シルンはノアに声をかけた。
『わっち、魔力を感じるっす! たぶんダンジョンがあるっすよ』
シルンは小さい手で遠くに見える湖を指差した。
「ダンジョンって何?」
ノアは首を傾げる。
『 ダンジョンって、魔獣が住んでる場所っす もちろん、魔獣を倒すと経験値やら、宝物もとれるっす!』
「経験値!? 宝物!?」とノアは興味を示したが不安もある。
「でも、危険じゃないの?」
『大丈夫っす! 大丈夫っす! わっちの感だと、あのダンジョンは初心者向けだと思うっす! ノア様の経験値稼ぎにぴったしっす!』
「そうかな? でも・・もしもの時はシルンちゃんが守ってくれるよね」
・・・というノアの質問に対してシルンの目が泳いだ。
『 わっちは・・・面白グッズっす。攻撃力はないっす! 』
「うん、そうだね! かわいいシルンちゃんには無理そうだけど・・・・」
なんて言いながらノアはシルンちゃんの頭をなでなで・・・
「でも・・・全くないわけじゃないよね? 魔法とかあるのじゃないの!?」
『 えっと・・・体当たり攻撃とかできるっす! あと口で火を拭いてライターがわり・・・っす』
「・・・ありゃ、体当たりはやめて! シルンちゃんには無理よ」
そんなやりとりをしながらも、結局二人はダンジョンに行くことになりましたとさ・・・
さぁ、冒険の始まりだ!
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地下から放出される魔力は龍脈にそって流れ・・蛇行し、下流へと流れていく。
だが・・この流れには時おり、異変が起きる。不思議なよどみが発生するのだ。
そのよどみを人々は"ダンジョン"と呼ぶ。
そこは不思議なエリア、時空がゆがみ、人の感覚を狂わす、
そして、魔力を帯びた危険な魔獣が跋扈する世界。
デンジャラスゾーンなのだ!!
だが・・そんなダンジョンにあえて挑戦しようとする者たちがいた。
それは、ハンターと呼ばれる者たち、または探索者。
ダンジョンとは言わば 魔力溜まり、多くの魔力に満ち満ちている。
それゆえに・・魔力を帯びた様々な鉱石、または貴重なアイテムが採取できるのだ。
まさに一攫千金の宝庫、ただし、死の危険がまとわりつく。
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ノアとシルンは、湖のそばにある岩場の影で、魔力を放出する洞窟を見つけた。
どうやら・・・この洞窟がダンジョンらしい。
シルンの言うところでは・・このダンジョンは、つい最近にできたらしく・・・出来立てホヤホヤ!
そういうわけもあり・・・内部に潜伏している魔獣も弱いという。
いわゆる初心者向け・・・しかも、このダンジョンは、まだ他の人に知られていない。
ノアは恐る恐る洞窟の内部を見た。
「暗い! 真っ暗よ、何も見えない」
『 ダンジョンとはそういうものっすよ! 明かりはないっすか!? 』
シルンは、当たり前のように言った。
ダンジョンは洞窟、明り取りがないので暗くて当たり前。
ノアは少しイラっとしたが・・とりあえずシルンの言うとおりにした。
「ライトコーヒー!」
ノアの得意とするコーヒー魔法の一つ!?
コーヒーの香りがする光の球体を空中に召喚した。
ついでにリラックス効果もあり!?
そんなコーヒー球体によって・・・ダンジョン内部がほんのりと照らされる。
洞窟のような岩肌が見えるが、それ以外に特徴はない。
「なにも・・なさそうね」
『 はいっす! ダンジョンの出入り口付近っすので・・魔獣はいないかと・・・ 』
・・・と言いかけてシルンの言葉が止まった。
異変を感じたのだ!
そして・・聞こえてくる! ダンジョン(洞窟内部)から音が聞こえてくるのだ!
ドタドタドタ!
地響きに似た音・・・・
「も・・・もしや!?」
『 ノア様! 気おつけてくださいっす! 来まっす! 敵が来まっす! 』
シルンは警戒した! 羽をバタつかせながら、小さい拳でファイティングポーズ!?
何という事だ!
ダンジョンに入る前に・・・その出入口で、さっそく魔獣との接触か!?
コーヒー球体によって照らされた洞窟の奥から・・・なにやら黒い物体が現れ、こちらへ突進してくる。
狭い洞窟なのに・・・その巨体を揺らし・・・洞窟の壁面を削りながら地上へと駆け上がってくるその物体!
ビックイノブタン! 再び登場! 別の個体だけど・・・ね!
「出た! また出た! うちは・・・このイノシシにとりつかれてるの!?」
『 魔法攻撃をするっす! ノア様! はやく!』
シルンは叫び・・・ノアも我に返る。
「あ・・うん! えっと・・・呪文は・・・固まれ! チョココーティング」
この魔法はチョコ魔法の一つ・・・・敵をチョコレートで覆って動けなくする魔法なのだ。
ちょっと甘い匂いがするのはご愛敬!
現在・・・ダンジョンから ちょうど飛び出したところで・・・その黒い巨体、ビックイノブタンは動きを止めて固まってしまっている。
かなりギリギリの距離だった。
あとちょっと遅れてたら・・・ノアは このビックイノブタンによって踏み潰されていたかもしれない。
ノア・・・ちょっと涙目! 足が震えていたりする。
あとちょっと・・・もらし・・・いや・・してないよ!
乙女にそんなことはありません!
『 ノア様! まだ、油断してはだめっす・・動きを止めただけっすよ 』
「そうだった!」
ビックイノブタンは突進しようとしている姿勢で 地面に横たわっていた。
しかも・・体の表面はチョコレート色で覆われており・・・身動きがつかないようである。
おそらく・・・チョコのネバネバというか・・・粘着力で動きを封じているのであろう。
(ゴキブリホイホイならぬ・・・イノシシホイホイ状態)
ビックイノブタンには意識があるようで・・・なんとかして手足を動かそうと・・ジタバタ! しているようだが・・・
まったく動けないようである。
叫びたくても口が動けず叫べない。
これって・・・拷問かな!?
ちょっと・・・罪悪感がつのるのだが・・・このままビックイノブタンを放置するわけにはいかない。
「や・・・やるしかないのよね」
ノアはあえて目をつぶり・・・時空ストレージから とある魔法の杖を取り出した。
赤い獣の頭部がくくりつけられている・・禍々しい紋章が刻まれた不気味な杖。
その名も"ブラッディ・マリー"
邪神様から頂いた・・・丈夫なだけの撲殺用魔法杖。
硬い・・とても硬い・・ものすごく硬い! アダマンタイト製!
敵を殴り倒すために作られたという・・・・
(ちなみに・・この魔法の杖は、シルンの元の姿であるドラゴンワンドとは別の杖である)
ノアは・・この禍々しい魔法の杖"ブラッディ・マリー"を強く両手で握り・・・決心した。
手が少し震えるが、やるしかない! 叩きつけるしかないのだ!
ノアは・・・叫び声をあげながら ビックイノブタンの頭部に向けておもっきり振り下ろした。
「うわぁぁああぁぁぁ」
何度も・・・何度も・・・振り下ろす
当初、ノアは目をつむり・・・半分ヤケクソとなって振り下ろしていたが・・
そのうち慣れてしまい、まるで餅でもつくがごとく・・平気な顔で杖を叩きつけるようになってしまっていた。
(慣れとは・・・怖いものであるw)
カン! カン! カン!
生物を叩いているはずなのに なぜか金属音。
硬くて硬くて・・・なかなか致命傷を与えられない。
まるで、鉄をたたいているようだ。
だが・・・ノアはめげずに杖を振り下ろした・・・何度も何度も・・・
そして・・・3時間後、やっとビックイノブタンは息絶えた。
さすが魔獣だ。ものすごくしぶとかったせいもあり・・・けっこう残酷な状態になってしまっていた。
ちょっとやり過ぎたかと・・・ノアは反省!
血や肉が散乱し・・モザイクが必要なほど陰惨な事件現場になっていた!?
いや! 食肉加工工場とおもえば・・・たいしたことはないはずである。
いずれ このビックイノブタンは・・・人の胃袋に入って行くのだから・・・
・・・そう! すでにノアの時空ストレージに納めてしまいました。
一方、その様子を見ていたシルンは ちょっと呆れ気味であった。
『 あうっす・・・これは酷すぎっすよ! バラバラ事件っす! 』
「いやっ! うん・・・少しやり過ぎたかなと思ったけど・・・・」
ノアは・・すこし言いよどみ 顔を夕日に向けた。
「うち・・・なんだか、撲殺に快感を覚えちゃった!」
『 うえっ!? 』
そう! ノアは少し楽しかった! 叩きつけるという行為に・・・ある種のストレス発散をしていたのかもしれない!?
または、狩の本能に目覚め・・野性に戻ったのかも・・・!
・・・サイコパスの世界に片足を突っ込んでしまった可能性もあり・・・!?
でも!・・・この世界で生きていくのなら これぐらいが普通かもしれない!
「普通よね! これって普通よね」
『 そうすっね! うん! 楽しいぐらいでないと・・っすね!』
シルンも苦笑いしながら納得したのである。
そんな会話をしている中、ノアの脳内にピコーンの音が鳴った。
おそらく経験値を得て・・レベルアップをしたのだろう。
前のビックイノブタンは自爆で倒せたが・・・今回は間違いなく自力で倒したのである。
身動きできないようにしたあげくに 3時間はかかったのだが・・・
これでノアはちょっとだけ強くなりましたとさ・・w
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)
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【名前】ヴァルト・ノン・コハヤシ・フィレノアーナ
【種族】ヒューマン
【身分】逃亡中の王女
【職業】邪神の使徒、見習い魔導師 Lv3
【年齢】14歳
【体力】14/18【魔力】20/30 【幸運】110
【魔法スキル】
ステータス魔法 Lv2 時空ストレージ Lv2 サテライト Lv1 コーヒー魔法 Lv3 チョコ魔法 Lv2
【耐性スキル】
恐怖耐性 Lv2
【特殊スキル】
ラッキーカード Lv1 撲殺 Lv1
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ノアはまだ知らない。撲殺と言う名のスキルが増えていたことを・・・