メテオは暴動の始まり
ノアが行使したメテオコーヒーは・・・いわば隕石落し!
広範囲に被害をもたらす戦略級大量破壊魔法だったのだ。
そう、かの偉大なる邪神様はかつて・・とある某異世界を、このメテオコーヒーによって滅ぼしたという。
(某異世界VR-MMO" 戦血バラ "におけるゲームイベントにて、敵ごと味方、いや! 惑星をまるごと吹き飛ばした実績があったのである)
だが・・・この世界でのメテオコーヒーの威力はそこまで強くない。
そう、ノアは邪神様ほどの波動力をもってはおらずレベルも低い・・・しかも初めて行使した魔法であるゆえに不慣れでもあった。
( ノアの能力が低いというわけではなく・・邪神様が無茶すぎ、桁違い過ぎるというだけのこと )
「メテオが失敗!? うちの魔法が・・!? 邪神様の最強魔法が・・!? どうして!? どうして!?」
ノアには何が起きたのか分からなかった。
メテオコーヒー・・・巨大隕石の落下
邪神様の|必殺攻撃魔法なのに〜!なのに〜!失敗するなんて〜
始めは上手くいっていた! 人々を恐怖させ空を赤く染めながら落下中だったのに、なぜだか空中で爆散! 花火の様に吹き飛んだ。
しかもかなりの上空、成層圏で爆発したためなのか、地上にまで衝撃波が届かなかったのである。
シルンちゃんは小さい手で腕組みをしながら・・メテオ失敗の見解を話す。
『 メテオコーヒー・・・焙煎しすぎて脆く粉砕したっす。鉄をも溶かす温度はむちゃっす 』
そう、メテオコーヒー、つまりメテオとは巨大コーヒー豆だったのだ。
普通の隕石は・・・鉄でできているが、メテオコーヒーの隕石は・・・コーヒー豆なのであるw
・・とはいっても普通の豆ではない!
このコーヒー豆は・・・小惑星と呼ばれるほどの大きさをした・・ビックでジャイアントな豆だったのだ(直径1kmぐらい!?)
そんなメテオコーヒーは大気圏突入によって温度があがり焙煎され・・燃え上がり そして粉々になった。
結論・・・大気圏突入での焙煎はやりすぎ、やはり鉄をもとかす温度での焙煎は・・・無茶すぎたw
「そ・・・そうなの! メテオを燃やし過ぎ、熱し過ぎが原因なのね」
なんて言ったものの・・ノアには理解不能の自然科学!
中世の人間に大気圏突入とか言っても・・・分かるわけがない。
とにかく・・失敗は失敗、上手くいかなかったのだ!
はるか遠く・・青空を分ける地平線かなたを見て、ノアは一筋の涙をながす。
( うちらの戦いはこれからだ~w )
そんな感慨・・打ち切り最終回的な彼女に呆れつつ、シルンちゃんは、とあることを指摘をした。
『 ノア様、この映像を見てみるっす。どうやら・・あのメテオ攻撃は無駄ではなかったようすっよ 』
そう、その映像・・サテライト魔法で映し出される王国軍の現状は、混乱に満ちていたのである。
「んっん!? 一体なにが起きたというの!?」
驚きの目となるノア、そしてコサミちゃん・・・その映像に釘付けとなった。
◇◆*◇◆◇◆◇◆◇*◆◇
カイラシャ王国軍、総勢6万人・10個師団は壮絶な同士討ちをしていたのだ。
多数の矢、魔弾が飛び交い・・剣の火花が舞い散る。
そして、あの凶悪なゴーレムたち! 千手観音のような腕を振り回し振り回し・・ブンブン♪
兵士たちを舞いあげ・・吹き飛ばしホームランさせていく。
喧嘩!? 暴動!? 騒動!?
どうやら・・王国軍は二つの勢力に分かれてしまったようだ。
詳しく言えば、下級兵士VS上級兵士、庶民VS貴族
身分階級によって二つに分かれ・・・どつき合い対決してしまったようである。
なぜそのようなことが起きてしまったのか!?
-*- - - - - - *-
そう、あの落ちてくる災厄、メテオを迎撃、粉砕することによって、多くの兵士たちの心をつかんだレシプロン。
もはや王国兵士たちにとって、神に等しい存在になってしまっていた。
そして‥彼ら兵士たちの大合唱
「「レシプロン! レシプロン! レシプロン万歳!」」
そんな大声援に心穏やかになれないものがいた・・・それが司令官クーラス!
彼はなにも命じなかった。何もしなかった。
ただ怯え・・動揺していただけだったのだ。
そんな司令官とは対照的に、レシプロンは兵士たちの前で立ちあがり名演説、そして迎撃に成功した。
兵士たちの命を救ったのである。
まさに英雄! 救世主!
兵士たちにとって・・レシプロンは理想の上官、頼りになる男、神のような人物なのだ。
それに対して・・司令官クーラスという存在は、いるだけ邪魔の給料泥棒、 身分だけ立派な司令官。
そんな囁きが、クーラスの耳に入ってくる。
なんという屈辱! 弟を殺された恨みと合わさり・・・レシプロンへの殺意が最高潮に達した。
奴は、俺の悪い噂を流し・・兵士たちを扇動しようとしている! 暴動を起こそうとしている!
間違いない・・これは反乱が目的なのだ!
弟を殺したように・・俺を狙っている。俺の命を狙っている。
やられる前に奴を殺せ。先手必勝だ
司令官クーラスは腰かけている床几を蹴り上げるように立ちあがり、
陣幕内にいる幕僚たちを見渡した。
彼ら幕僚たちは、クーラスの実家、フロスネン侯爵家にゆかりのある者たちなのだ。
皆、侯爵家に忠誠を誓っている。裏切る可能性は極めて低い。
クーラスにとって信頼できる者たちなのだ!
そんな彼ら・・幕僚たちに向かって、クーラスは叫ぶように言い放つ。
「なにが英雄だ! なにが救世主だ! 奴は俺の弟を殺した殺人鬼! 俺の命をも狙う快楽殺人者!
あのような者が存在することこそが危険! 排除せねばならない。殺せ!」
突然の殺害命令! 怒りにまかせての命令!
王太子の最側近であるデルテ二ア邦伯の信任を受けている勇者レシプロンを殺せというのか!?
幕僚たちは困惑し、互いに視線が飛び交う
レシプロンの殺害は・・おそらく邦伯の怒りを買うだろう
それはすなわち、エルドラート王太子への叛意というわけだ。
そんなことをすれば、司令官クーラスは破滅し、そしてフロスネン侯爵家にも害が及ぶであろう。
本来ならば・・諫めるべきなのだが、司令官の弟であるルイーブル書長が、あのレシプロンによって殺害されているのだ。
復讐は当然の権利、いや! 貴族の義務といってもいいだろう。だが相手が悪すぎる
ならばならば・・
幕僚の一人、参謀のバリドが静かに声を出した。
「戦死、もしくは事故死に見せかけるしかないでしょう!
毒殺または流れ弾による射殺もよろしいかと・・他にいくつかの案もあります」
そう、以前失敗したレシプロン暗殺計画(フクロウ三人衆)と同様、疑念をもたれず、秘密裏に行う必要がある。
しかも、あのデルテ二ア邦伯だけには絶対にバレてはならないのだ。
それに無論のこと・・次こそは成功させる。確実に仕留めるのだ!
ならば、意見を出したバリド! 軍学校を主席で卒業し・・秀才で名高い彼なら きっとやってくれるに違いない・・・確実に!
司令官クーラスの鋭い目線がバリドに注がれる。
「よし! バリド・・お前に任せる。あの殺人鬼を殺せ! 始末せよ!」
「はっ! 自然な形で殺害いたします」
一度あることは二度ある!?
レシプロン、再び狙われることになるのか!?
ちなみに・・この様子は、ゴキブリ型ゴーレムによって覗かれていたのである。
つまり、レシプロンに筒抜けだったのだ!
・・・・というか、それ以前に この幕僚たちの会話内容、特に司令官クーラスの声が大きすぎて、陣幕の外にまでダダ漏れ・・・。
もちろんその内容は、陣幕を警備していた兵士たち、または通りすがりの兵士たちの耳に入り、軍全体に話が伝わる。
司令官クーラスは、事もあろうに・・ 我らの英雄にして勇者" レシプロン "の命を狙っているのだと・・・
ただし、命を狙う正当な理由・・司令官の弟を、レシプロンによって殺害されたという情報だけは、都合よく抜け落ちていた。
( 弟・ルイーブル書長が殺されたのは自業自得なのだが・・ )
「「 許せねぇ! その話が本当なら、絶対に許さん! 」」
「「 今度は 俺たちがレシプロン様を守るのだ! 」」
「「 相手がお貴族様だろうが俺は戦う 」」
自然とした流れのように・・下級兵士たちを中心としたレシプロン擁護派が誕生していくことになる。
そして・・・勃発してしまったのであった。
-*- - - - - - *-
王国軍参謀・バリドの命によって特殊部隊・暗部に所属する一人の男、ラームが呼び出された。
ターゲットは・・勇者レシプロン
目的は暗殺、武器は毒針。
「司令官クーラス殿からの緊急命令だ! 失敗は許されない。すみやかに実行せよ!」
「はっ!」
ラームの見た目は小柄で非力そうな印象だが・・実は暗殺のプロ!
百発百中で狙った相手を確実に仕留め続けて来たのだ。
そして・・・ラームは静かに一礼した後、躊躇なく実行したのである。
目前に座る人物、彼に暗殺を命じた人物、参謀のバリドに向けて毒針を放ち、一瞬にして崩れおちた。
冷酷に・・・冷静に・・・
参謀のバリドは何をされたかすら・・感じることなく意識を失い、そして永遠の眠りにつく。
司令官クーラスに期待された秀才はあっけなく失敗したのであった。
しかも・・暗殺を命じた相手に暗殺されたという皮肉つきで・・・
このラームは・・レシプロンと同様、貧民街出身であり、貴族たちの横暴に悩まされ続けて来た。
ある種、レプシロンと同じ境遇ゆえに・・彼に親近感を持ち、期待と希望をいだく。
そう、英雄でもあり勇者でもあるレシプロンは、ラームにとって憧れの存在だったのだ!
そんな" レシプロンを暗殺せよ! "の命令に・・・従うわけにはいかない。
やるしかない! 貴族たちの横暴に鉄槌を・・・
英雄勇者によって、この国に真の正義を取り戻すのだ。
ラームは素早く走り・・・・陣地内の片隅、下級兵士たちがたむろしている前にて、声高に叫んだ。
「さぁ、皆さん聞いてください! あの貴族たち・・憎き貴族たちは・・我らのレシプロン様を殺そうとした!
大変危険です! 皆さんの協力が必要です! 守りましょう! レシプロン様をお守りしましょう!」
・・の演説と同時に、奪ってきたバリドの重要書類を、付近にばらまいたのである。
そして、その書類に書かれていたのは・・・司令官たちによるレシプロン暗殺の計画書だったのだ。
これが決定的証拠となり・・レシプロン擁護派の兵士たちは激昂する。
「「うぉー! うぉー! なんだと! 我らのレプシロン様を暗殺だと」」
「ぜっ・・絶対に許せねぇえぇぇ そうだ! 殺せ! 貴族どもを殺せ!」
もはや誰も止められない。
暴走が始まった! 暴動が始まったのだ。
彼らは・・・各々の武器を持って走る。「殺せ! 殺せ!」の雄叫びとともに・・・
各々、誰に命じられたわけでもなく・・・当然のように王国軍本営へと殺到する。
恐るべき形相となりながら・・・
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)