ヒラガ式・・謎の新兵器
ローランの地での戦い・・・対ヴルティリア帝国との戦役は集結を迎えた。
敵の総大将・皇帝ユゼンを捕えることによって・・勝利の女神はキヨウラ公国に微笑んだのである。
しかも多大な賠償金を得ることにも成功したのだ。
・・・とはいえども、外交的配慮により、
これら賠償金は帝国ではなく、皇帝ユゼンの個人資産から支払ったことになっている。
(対外的には 両国との戦闘はなかったことになっているからだ)
様々な事情はあるとはいえ、キヨウラ公国は多額の賠償金を手に入れたのだ!
そう、この賠償金は、きたるべきカイラシャ王国軍との戦いに活用できる。
なにかと不足気味だった資金問題は・・・とりあえず改善されたのであった。
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キヨウラ公国の南方に位置するカイラシャ王国領内の町・レルンド
そのレルンドの町の城門が大きく開かれ、そこから出撃していく数多くの兵士たち。
重厚な鎧をまとい、剣や槍を手にしている一団や・・魔導師隊の面々、そして、その後方には荷馬車隊が続く。
そう、彼らはカイラシャ王国軍主力部隊、総勢6万人・10個師団から成り、司令官は新任のクーラス
目的は・・王国から一方的に独立したキヨウラ公国の討伐、並びに、その公国に味方する凶悪な魔王こと" フィレノアーナ元王女 "の抹殺であった。
この軍には・・・神聖魔法の使い手でもある十数人の勇者たちも含まれており・・・
その中にはゴーレム24体を率いるレシプロンの姿もあった。
( 30体ほど連れてきていたゴーレムたちだったが・・・すでに6体ほど減らしてしまっている )
そう、これらカイラシャ王国軍の動きは、たえず監視されているのだ。
キヨウラ公国情報部・影忍部隊、人にあらずにしてモンキースパイ!
木々の上から・・建物の屋根から・・さらには王国軍の伝書猿として・・またはペットとして・・・
人間では出来ないような情報活動を行うエキスパート猿軍団!
彼ら・・影忍の活躍により キヨウラ公国は・・カイラシャ王国軍の動向を常に把握していたのである。
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「カイラシャ王国軍6万・・・セェルンに向けて北上中」
影忍の長、モンキーハンゾウ からの報告を受けたイジャル公王は即座に" 出撃だ "と発しようとしたが・・・断念した。
ヴルティリア帝国との戦いを終えたばかりなので、兵士たちは疲労困憊しているに違いない。
十分な休息を与える必要があるのだ。
(あと、武器、食料の補充やらも、しなければならない事情もあった。内務総長のアランス卿は大忙し)
そう、ブラックな環境で勝利を得ることなんて、できやしない!
兵士たちに万全な体調を与えねばならないのだ。
そういうわけで・・キヨウラ公国軍は、しばしの休憩タイムにはいる。
・・・・となるとその休息の間、迫りくるカイラシャ王国軍に対して、何らかの対処が必要となるであろう。
「足止めですね! 新兵器の試し撃ちもかねて、うちがやりましょう」
口角をあげ、満面の笑みで答えてくるノア。
そんなノアを見て・・・なんとなく不安をおぼえる公王イジャル
それに・・その新兵器というのも なんとなく気になる!
「それで・・ノア様、その新兵器とは・・・なんなんですか!?」
「あ~それはね・・ヒラガさんが提供してくれる兵器ですよ」
「ヒラガ!? あ~あの御仁か! たしか・・魔導エレキテルの第一人者!」
そう、その御仁・ヒラガさんとは、シドン村に住む106歳の男の若返り少女、ヒラガ・ケールナイ準男爵
魔導協会、元技術部技長にてエレキテルの専門家
そして、恐るべき兵器を趣味でつくる人物
ノアから依頼されているゴーレムの解析、弱点の調査をしているうちに・・一つのアイデアが思いついたのだ。
そして、そのアイデアに基づき、対ゴーレム兵器を作り上げたのである。
そして、もちろんのごとく、ヒラガ制作の新兵器はすでに受領済み、ノアの時空ストレージに収納されていた。
ありがとう♡ ヒラガさん! おもい切り使わせていただきます
「さぁ! 準備は完了した。いつでも作戦可能だ」
ノアは、うきうきランランのヤル気満点・・・今にも飛び立ちかねないような勢い。
そんな様子を見て・・苦笑いするコサミちゃん。
それはまるで、おもちゃを与えられ・・はしゃぎ回る子供の姿。
「ノア様、そんなにも・・あの新兵器が使いたいのですね」
「もちよ! この兵器で、あのゴーレムたちに目に物見せてやる!」
おもっきり悪い顔になるノア。まさに悪役、敵役!
そして・・・
シルンちゃんも悪い顔をしながら囁くのであった。
『 見せてもらうっす! ヒラガ兵器の実力とやらを・・・ 』
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今回も・・ノアたち一行による単独作戦
イジャル公王率いるキヨウラ公国軍に、しばしのお休みを与えるため、
進撃してくるカイラシャ王国軍に対して、嫌がらせの妨害・・つまり足止めをしようというのだ。
ノアたちは現在、峰々が連なる険しい山岳地帯の・・とある山腹に身を隠していた。
空は青空、遠くに雲海、そして・・眼下には、王国軍・野営陣地が広がっていたのである。
敵は・・・どうやら、ここで昼食でもするつもりなのであろう。
あちらこちらで湯気が立ちのぼり、簡易のテーブルが出されていた。
椅子に座りテーブルで食事をしている者たちは、みな小綺麗な姿・・・おそらく上級身分の人達なのだろう。
それに対して、一般兵士たちのほとんどは、地べたに座り、お粥のような物を食べていた。
ちなみに・・この様子はノアのサテライト魔法によって 映像化し観察しています。
距離にして 2ロキル彼方なので 肉眼では見えないのです。
そんな感じで観察していると・・彼ら王国軍兵士たちの中で、ひときわ目立つ集団がいた!
それは・・・この王国軍にとっての最大戦力と目されているゴーレムたち24体・・・
彼らは、創造主たる勇者レシプロンを守るべく円陣形、その周囲に睨みをきかしていた・・・(絶対防御態勢!)
レシプロンはある種の警戒をしていたのである。
それは王国軍の敵たる・・キヨウラ公国軍の動向などではなく・・・味方であるはずの王国軍司令官・クーラス!
レシプロンにとって、もっとも警戒すべき人物であり、個人的にいえば敵なのだ!
そして、その司令官クーラスの目線からすれば・・・勇者レシプロンは味方でありながら憎むべき敵! 呪うべき敵!
そう、レシプロンは、クーラスの弟を殺した仇なのだ!
ならば、復讐だ! 奴を殺す!
司令官クーラスはレシプロンの命を狙い、暗殺者を差し向けたはずなのだが・・なんと! 返り討ちにされてしまったのである。
一方・・そのレシプロンの方としても、司令官クーラスの動向にたえず目を光らせていた。
そう、あわよくば、排除しようと目論む。
殺意を向けられている以上、手加減無用、敵は排除すべし!
ここは中世・・・やるかやられるかの世界なのだ。
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ノアは早速・・・準備をした!
眼下には、ノアにとっての最大級ライバルw ゴーレム集団がいるのだ!
「ふっふふ 目にものみせてやる!」
ノアは時空ストレージから・・とある兵器を取り出した。
もちろん ヒラガさんから提供された" あれ "であった
その兵器は・・・兵器というには小さすぎた。
手のひらサイズで、コンパクト・・そして重量も軽い。
異世界的に言えば、まるで・・・・
『 タブレットっすね! 』
謎の異世界言語を口ずさむシルンちゃんは ノアが手にするタブレットもどきを見て頷くのであった。
ただし・・このタブレットには液晶ディスプレイなどはなく・・あくまでも歯車式の魔導機械、
電子機器ではないのです!
一方、コサミちゃんは・・・頭に?だらけ・・理解しきれていないのであろう。
・・・ならば説明しようw
この兵器は手のひらサイズ・・直接攻撃するタイプの兵器などではない。
これは・・ハッキングをおこなうための秘密兵器なのだ。
そう、あのゴーレムたちの意思疎通は、魔導通信・ネットワークによって互いに結びつけられている。
そこで、このタブレット型兵器を使って、通信網に入り込み、ゴーレムAIそのものを乗っ取ってしまおうというわけなのだ。
某異世界のネット犯罪・・・いや! サイバー戦争を仕掛けようというわけである。
「よし! 状況開始」
手のひらサイズのタブレットから発せられる魔導通信によって・・・手近のゴーレムにターゲットが合わされた。
あのゴーレムAIを乗っ取ってしまおうというわけなのだ!
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)