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停戦交渉


帝国皇帝ユゼンを人質にし・・足蹴りまでする凶悪犯罪者ノア・・・実に楽しそうである。

そして、そんなノアの背後を守り、呆れながらも周囲を警戒する公王イジャルとコサミちゃん、

あと、おまけとしてシルンちゃんは皇帝ユゼンの頭部に着地し、小さい手で動けない皇帝をパシパシと叩くのであった。




なんという屈辱! なんと哀れな・・お姿!

このような光景を見せられ・・帝国兵士たちの怒りは、もはや爆発寸前であった!


だが、帝国軍は動けなかった。

皇帝を人質にされているという理由もあったのだが、それだけではない。

奴ら(ノア)の背後では、続々と集結してくる公国軍の姿があったからだ。


そう・・・人質犯のノアと足蹴りにされる皇帝、そして公王イジャルたちを挟んで、帝国軍と公国軍が、ずらりと並び対峙していたのである。


ちなみに・・両軍の戦闘は小競り合いなどはあるものの ほぼ停止していた。

・・・停戦状態といってもよいだろう。


霧が晴れていくにつれて・・・数に勝る帝国軍が徐々に有利となり始めていたのだ。

しかし、ノアたちが皇帝を捕らえ人質にしたことにより、帝国軍は戦闘を中止するしかなかったのである。


-*- - - - - - *-



この事態!

キヨウラ公国軍は兵力的に不利ではあるが、皇帝を人質にしており・・有利な立場となっていた!

しかもノアが・・・ノリノリの悪役を演じており!? おもっきりのヘイトを稼いでいる。


「武装解除しろ! 金を出せ! いや・・領土もわたせ! 可愛い男の子もよこせ! うちを皇帝にしろ! ふぉほっほほっほほ」


言ってることが・・もう無茶苦茶なノア。


一方、公王イジャルはノアの背後を守りつつ困惑した表情となっていた。

"" この人は一体何を言っているんだ? ""


そして・・コサミちゃんの目が点! 

口をあんぐりと開け・・信じられないという目で・・・師匠、主君でもあるノアをみていた。




「ほらほら、何をしてる。出すものは出してもらわないとね! 皇帝様の命が大事なのではないのか!」


ノアは高圧的に、言いたい放題なのだが・・もちろん、そんな要求を受け入れるはずはない。


そんな中、帝国軍の代表として幕僚の一人、ティムルと名乗る者が前に進み出た。

白髪が目立つその人物、一見すると老人ではないかと勘違いしてしまいそうだが、中身はかなり若いらしい。


「お嬢さんの言い分は理解した! だがその前に、我らの皇帝陛下を、その美しい素足で踏みつけるのは・・ぜひともやめてほしい」


幕僚のティムルは出来るだけ・・・刺激を与えないように、ゆっくりとした口調でノアに話しかけた。


ちなみに・・・現在、地面に転がされている皇帝の口は・・・・ノアの足裏によって塞がれており、喋れない状態であった。

そう、皇帝ユゼンは少女に踏みつけられ・・もがいていた。  その姿、あまりにも哀れ、屈辱!


気の短い帝国兵士の何人かが、今にも飛びかからんばかりの状況でもあった。


幕僚のティムルにとって・・そういう兵士たちの動きを止めるのも一苦労なのだ。

このままでは、いつ暴発するかわからない。せめて皇帝としての扱いをしてもらいたいのである。


「ふふ~ん、やめてほしいというのか!?」


「あっ~ そうだね、たぶん、その格好だとお嬢さんのパンツが丸見えじゃないかと思うんだよね」

ティムルは微笑を浮かべながら、優しく指摘した。



「ぐえっ!?」


その発言によって・・・ノアは一瞬固まる。そして、自分の服装を再認識した。

ダークグリーン色をした魔導師ドレス・・・ただし下から覗くと見えてしまうのである!


ノアの視線は地面に転がる皇帝に移り、二人の目が合った。

なんとなく気まずい雰囲気・・・目をそらす皇帝!


「見たわね!」


「余は・・見ておらん! だが、黒はやめておけ! 似合わん」


ノアは・・しばし考え、沈黙・・そして、わずかに赤くなった。


「うぎやぁぁぁぁ・・・見てる! 見てる! 見てる!」



ノアは、皇帝の視線から外れるように・・即座に後ろへと下がる。

そして・・あわてたように時空ストレージを発動し・・中身をまさぐった。

何か・・ズボンのような衣服はないかと・・・



ビキニ・・・それは問題外

ふんどし・・・男の下着だろ!

ショートパンツ・・・これはちょっと恥ずかしい。

ブルマ・・・これは下着だろ!?


するとちょうどよいものを発見・・・ハーフパンツ! しかもちょっとオシャレ!

これなら恥ずかしくないだろうと・・穿くことにした。

これで下からみられても大丈夫。ちなみにこのハーフパンツは黒でしたw



そんなわけで・・・今まで踏みつけていた凶悪犯ノアは、後ろへと退場したのである。

だからといって皇帝の身が自由になったわけではない。

皇帝の身体は・・チョココーティングによって からめとられており・・以前と変わらず動けない状態だったからだ。


さてさて・・次の皇帝人質犯は・・ノアに替わり、公王イジャルが代行することになる。



これはある意味・・幕僚ティムルの策略!?が成功したといってもいいだろう。

皇帝への侮辱をやめさせることに成功したのである。

しかも、まともな、交渉役が出てきたのだ。



「・・・どうやら僕の妹が失礼をしたようだが、一応、停戦交渉をしようではないか!」


ちなみに・・ノアは公王イジャルの妹ではないです。従妹にあたるのだが・・世間的には妹ということになっていた。



ヴルティリア帝国にとっての敵対国、交戦国・・皇帝陛下を捕えたキヨウラ公国の中心人物が前面に出てきて、帝国兵たちにどよめきが走る

キヨウラ公国公王・ノン・イジャル!


風にたなびく淡いクリーム色をした・・・女性!? いや、少女!? しかも可愛い!

男だという情報だったはすが、なぜに・・少女!?



現在・・兜をぬいでおり・・イジャルは素顔をさらしていたのであった。


さきほどの凶悪少女といい、なぜに公国は少女だらけ!?

幕僚のティムルも、兵士たちも困惑ぎみとなり・・しばしの沈黙に入る。



「僕の容姿は・・・気になるだろうが・・気にしなくても良いぞ! ちなみに僕は男である!」


この発言を聞いて・・・再び騒然となる帝国の兵たち。

ついでに地面に転がされている皇帝ユゼンも、驚きの顔になっていた。


まさか! 嘘だろ! ・・・・という感想とともに、別の目で、性的に見る者も・・ちらほら

たぶん、なにかの妄想でもしているのだろうか!?



驚きと騒めきの帝国兵たちを目撃し・・・公国の兵士たちは勝ち誇った顔をしていた。

"" 我らの公王は・・可愛いらしい顔立ちをしながらも、誰よりも強き戦士! 素晴らしき主君なのだ ""


公国の兵たちにとって、誰にでも誇れる名君・・・それが公王イジャル




背後にかくれ・・ハーフパンツを、こそこそと着替えるノアは、イジャルと同じ血が流れているとは思えないほどの人間性というべきか・・信頼性の違いがあった。

( ノアはイジャルの従妹・・・ただしノアはカイラシャ王国の元王女でもある。)


「いいもん! いいもん! どうせうちは・・・悪い子よ、凶悪犯よ! 」


そんないじけるノアに・・・『 可哀そうっす! 』と言って 優しく頭をなでなでするシルンちゃん。


「ノア様! 頑張りましょう!」・・とコサミちゃんも励ましの言葉をかける。



停戦交渉をおこなっている公王イジャルと・・皇帝ユゼン(地面に転がされているままだけど)

の背後で、なにやら励まし合う3人組が・・いたのであった。




-*- - - - - - *-



時間が静かに流れる中、公王イジャルと横たわる皇帝ユゼンの間で、重要な話し合いが行われていた


その様子を、少し離れた場所から帝国幕僚のティムルが静かに見守っている。


その間、公国軍と帝国軍は互いに睨み合いをつづけていた。

ただし戦闘はなく、停戦状態。



両軍の兵士たちは、無言のまま・・時間だけが過ぎていく。

風の音、小鳥のさえずりだけが、静かに響いていた。




-*- - - - - - *-



しばらく時間が流れた後、後方で待機していた凶悪少女ノアが再び、前面に姿を現した。

そして、そのノアは・・・なんと! 皇帝ユゼンの手を優しく握り・・ニッコリ♡ 微笑んだのである。


すると、その少女ノアの手から伝わる温もりが、皇帝の全身へと伝わると、

身体に絡みついたチョココーティングが、瞬く間に溶けていき、体の自由を取り戻したのであった。



そう、これは正式な停戦、講和がなされたのだ。

もはやこれ以上、拘束する必要がないことを意味していた。



ノアは・・・先ほどまでの凶悪犯とは思えないほどの180度転回・・気持ちいいほどの満面の笑みで応じたのである。

先ほどのことは忘れてくれと・・・いわんばかりに!


たしかに、その表情によって・・皇帝ユゼンは、思わず心を惹かれてしまった。

だが、決して忘れはしない! あの屈辱! あの侮辱! そして・・・あの少女の黒いパンツ!?


少女の微笑み程度で恨みの帳消しなどありえない・・・と思いつつ、

黒いパンツを思い浮かべると、少しにやつく皇帝だった。

(だからといって・・許しはしない!)



だが、そんな皇帝の心情とは反し・・・帝国兵士たちにとって、ノアの所業は許しがたし!

兵士たちの殺意のこもった視線によって・・その場の雰囲気が悪くなりだしたので、ノアはそそくさと後ろへと退くのであった。



また一つ・・・ノアの悪評が1ぺージ!?

後世の歴史家が記述したという・・・帝国皇帝を足蹴りした唯一の人物だったと!



「うっ・・・ちょっと調子に乗っただけだったのに!」



そんなノアとは対照的な人物は・・公王イジャル。

皇帝ユゼンとの一騎打ちは・・・なぜか心がかよいあう男の友情となった。

男に言葉はいらない。拳で語り合うものなのか!?


(公王イジャルの容姿・・少女のような顔立ちも、一つの原因だったかもしれない)




そして、快く停戦となったのだが・・・

その停戦条件というべきか!? その内容がトンデモなさすぎた。



それは・・・なにもなかった!

そう、両国との間で・・・戦闘など、なかったことにした! 

建前上、または公式見解において・・戦闘は発生しなかったことにしたのである。


事実の消去、隠蔽なのだ!


正規兵同士による大規模戦闘など発生していない!

そんなものは存在していない!


あれだけの死闘、多くの戦死者、皇帝を守るがために殿(しんがり)部隊として激戦、そして死んでいった部隊長ラシバーンたちを、なかったかのように扱ったのである。

( ほとぼりが冷めた後、皇帝の命によって彼らラシバーンたちは高く評価されるのだが、それは別の話 )



国と国との外交には・・・それなりの建前が必要なのだ。

そう、外交とは、建前に始まり建前で終わる。


・・・・というわけで、これだけの戦闘をしておきながら、両国の戦闘などなかったことにしたのであった。

もちろん、勝ちも負けも・・・ついでに引き分けもない!

そして、皇帝ユゼンが捕らわれ、足蹴りされたなどということなど・・ありはしないのだ。



・・・・とはいうもののキヨウラ公国としては、勝者の権利を捨てるつもりはない!

戦場ではたしかに勝利し、帝国皇帝を捕らえたのだ!


そう、キヨウラ公国は勝利者として・・・帝国から、なんらかの賠償が必要となる!

戦費もそれなりに消費しているのだ。

家臣や兵士たちにも・・十分な恩賞を渡さなければならない!


領土もしくは、賠償金をもらわなくては・・収まりがつかないのである。



というわけで・・・

帝国は公国に賠償金( 年間の国家予算に匹敵 )を支払うことに合意した。


ただし! 世間的というか、外交的には賠償金とはされてはいない。



謝礼ということになったのである!

そう・・・事実と反し、とある事実が作られた。


それは・・・公国と帝国の協同作戦によって

凶悪な魔獣たちの大暴走・いわゆる" スタンピート "を防いだということにしたのであった。

そして、その謝礼として、帝国が公国に金額を払った!

そういう架空の事実を・・公の真実として創り上げたのである。


戦死者は全て、魔獣によるもの! そういうわけなのだ。


全ては建て前! 外交とは、そういうものである。





その後、公王イジャルと皇帝ユゼンが固く握手をし・・講和会議!?は無事に終了した。

そして、その公王の背後で、その様子を見守るノア。

皇帝ユゼン、及び帝国兵たちからの視線が、ノアにささり、居心地が悪い。


たしかにあの所業(足蹴り)では・・・仕方がないのだろう。

そんな意気消沈しているノアに皇帝ユゼンが何気なく近づいてきて・・・囁いた。


「パンツは白がいいぞ!」


「うっ!」


ノアは足を滑らせながら後ずさり・・皇帝との距離をあけた。

なんて、セクハラ!


皇帝ユゼンにとっては・・ささやかな仕返しだったのだろう。






--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



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